NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2021年12月1日水曜日

事業計画の作り方18 後継者の方向け(6) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析1

前回の記事から1年以上空いてしまい申し訳ありません。「後継者向けの事業計画の作り方」について解説を再開します。

さて、前回まで番外編を除く4回にわたって「現状分析」について解説してきましたが、説明が財務分野に偏ってしまっていましたし、時間も空いたこともありますので、これから数回は視点を変えて、「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」について解説します。

なお、繰り返しになりますが、後継者にとって「現状分析」はとても重要です。本記事を読み進める前にぜひ「事業計画の作り方1」と「事業計画の作り方14」をご覧くと同時に、以下の図を思い出していただければと思います。

1.現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析とは?

さて、SWOT分析は最もよく使われるフレームワークのひとつと言えますが、多くの場合、「現状分析で真っ先に使うフレームワーク」との位置づけとなっているようです。その場合、研修の中でグループディスカッションの題材として利用した際などに「思い付きしか書けない」、「弱みや脅威は思いつくが、強みや機会が思いつかない」といった事態となり勝ちです。SWOT分析は理解しやすい構造ですが、その活用の仕方には注意が必要です。特に、以下の2点について知っていただきたいと思います。
  1. SWOT分析は、他の現状分析で得られた情報や認識を整理するという「現状分析の総仕上げ」として活用すべきフレームワークである。
  2. SWOT分析は、その応用であるクロスSWOT分析まで行うことで、現状分析を超えた、今後の方針や打ち手を考えるフレームワークとなる。
では、「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」とは、どういった意味なのでしょうか。

事業計画の作り方1」や過去数回の現状分析に関する記事で、代表的な現状分析のフレームワークをいくつかご紹介しました。それぞれのフレームワームは極めて有用なものなのですが、これから会社を経営していく、そのための事業計画を作る、という立ち位置にある後継者にとっては当然ながら「分析」だけでは不十分で、分析結果を今後の計画や行動に反映させていかなければなりません。そういった「現状分析の段階」から、「事業計画策定の段階」に進むために最も活用しやすいのがSWOT分析とその発展形であるクロスSWOT分析なのです。ですので私は、各種フレームワーク等による現状分析をSWOT分析で総仕上げし、それをクロスSWOTに発展させ、事業計画策定の第一歩とする、という流れをおすすめしています。「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」についても次回以降、その流れに沿って解説していきます。

ところで、念のためSWOT分析とクロスSWOT分析について、基本的事項をまとめておきますので、あまり馴染みがない方は以下の内容にもお目通しいただければと思います。

2.SWOT分析

SWOT分析は上記の表から分かるとおり、「機会、脅威、強み、弱み」の英語の頭文字をとったものです。自社の環境を外部環境と内部環境に分け、それをさらにプラス要因とマイナス要因に分けます。


(1)外部環境(機会・脅威)
 外部環境、つまりは自社でコントロールするのが難しい事項の内、自社の事業にとって追い風となる事項、チャンスとなる事項をSWOT分析では「機会」と呼びます。逆に自社の事業にとって向かい風となる事項、ピンチとなる事項を「脅威」と呼びます。

さらにはマクロ的視点の事項と、ミクロ的視点の事項に分類が可能です。

マクロ的視点の事項は、代表的フレームワークであるPEST分析の分析結果を活用することで洗い出すことが可能です。PEST分析とは、「事業計画の作り方1」でもご紹介したのですが、マクロ環境をPolitics(政治的要因)、Economics(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)という切り口で分析するフレームワークです。

ミクロ的視点の事項は、ファイブフォース分析や3C分析などの分析結果の一部を活用して洗い出すことが可能です。
ファイブフォース分析は、業界の収益性を決める以下の5つの競争要因を分析するフレームワークです。
 ・競合(業者間の競争関係)
 ・サプライヤー(供給業者)の交渉力
 ・バイヤー(直接顧客または最終顧客)の交渉力
 ・新規参入業者の驚異
 ・代替製品またはサービスの驚異
3C分析は、自社環境を3つの「C」、つまりはCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)に分けて分析するツールです。この内、Customer(市場・顧客)とCompetitor(競合)に関する分析結果は外部環境分析に活用可能です。


(2)内部環境(強み、弱み)
 内部環境、つまりは自社である程度コントロール可能な事項の内、「自社が他社よりも優れた・勝てる・得意なところはなにか?」を明確にしたものを「強み」と呼びます。逆に「自社が、他社よりも劣った・負ける・苦手なところはなにか?」を明確にしたものを「弱み」と呼びます。「ヒト、モノ、カネ、情報・ノウハウ」といった切り口で分析することが一般的ですが、このシリーズでは、内部環境を以下のようないくつかの切り口に分けて解説します。
・切り口1:経営面、業務面、人事面
・切り口2:事業、財務、税務、法務、人事、労務、システム、不動産、環境


(3)外部+内部環境
 外部環境と内部環境を総合的に分析できるフレームワークとして「5C分析」というものもあります。「顧客/市場のニーズ、自社のスキル、競争度合い、協力者、背景」を分析するものです。そのうち、「競争度合い」はファイブフォース分析で、「背景」はPEST分析で代用します。

3.クロスSWOT分析


図をご覧いただけるとわかるとおり、SWOT分析の結果を活用して次の戦略を考えるのがクロスSWOT分析です。

(1)機会✕強み
 積極化戦略と呼ばれ、事業機会に対し、自社の強みを最大限に生かすにはどうしたらいいか?を考えます。

(2)脅威✕強み
 差別化戦略と呼ばれ、脅威に対しても、自社の強みでチャンスに出来ないか?を考えます。

(3)機会✕弱み
 改善戦略段階的施策と呼ばれ、事業機会に対し、自社の弱みで取り逃がしてしまったことを改善・回復するにはどうしたらいいか?を考えます。

(4)脅威✕弱み
 防衛・撤退と呼ばれ、脅威と弱みが最悪の事態を招かないようにするにはどうするか?を考えます。

次回は、外部環境分析について詳しく見ていきたいと思います。
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