NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2021年12月25日土曜日

事業計画の作り方23 後継者の方向け(11) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析6 内部環境分析(4) 代表的フレームワーク(後)

今回は前回に引き続き、内部環境分析の代表的フレームワークについての解説です。

今回は複数の事業を行っている場合や、複数の製品を取り扱っている場合に知っておくべき「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」について解説します。

1.前提知識

PPMの解説の前に前提知識として知っておくべき事項があります。以下の3つです。簡単に説明します。

(1)プロダクトライフサイクル(PLC)

製品を市場に投入してから撤退するまでを導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに分け、その製品の売上と利益・キャッシュフロー(CF)の状況を元に、どの時期に位置づけられるかを表すものです。導入期は当然ながらまだ売上は少ない上に、製品製造の効率がまだ低かったり広告宣伝費が必要であったりすることで、利益もCFはマイナスの段階です。成長期売上は増加傾向にあり、製造原価率は低下する方向にありますが、営業関連費用などがまだまだ多く必要で、利益・CFもマイナスかゼロ付近である段階です。成熟期は一般に市場自体の成長率が低くなったり、製品に対する認知が広がったりすることで売上は他の期よりも多く安定的です。そのため営業関連費用は減少傾向にあり、売上原価率も引き続き低下している状態です。そのため、利益・CFはプラス且つ安定的である段階です。衰退期は売上は減少傾向になり、費用も減少傾向ですが売上の低下を補うほどではなく、利益・CFも減少傾向となる段階です。

(2)経験曲線効果

過去から現在までのある製品の生産量(累積生産量)が多くなると、製造原価が逓減(単位当たりの生産コストが低下)することを意味します。熟練化、専門化、改善などのキーワードで説明されます。

(3)戦略事業単位(SBU)

定義がやや難しく、一般的には「企業が全社的な戦略実行のために設ける、独立した事業の単位」などと言われますが、PPMを理解する上では「単なる事業の単位」、つまりは、事業部などのことを意味すると考えていただいて差し支えありません。


2.プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

有名なボストン・コンサルティング・グループが開発した、戦略策定のための考え方で、複数の事業を行っている場合の経営資源の配分をどうするかを考え、決定する際に使用する枠組みのひとつです。当然ながら現状分析にも活用でき、現在の自社のそれぞれの事業や製品がどの象限に該当し、どう会社に貢献しているか、今後はどうか、という視点で利用します。

なお、PPMでは「相対的市場占有率(相対的市場シェア)」という言葉が出てきます。単なる「市場占有率(市場シェア)」ではありません。相対的市場占有率とは、市場占有率首位の企業の市場占有率に対し、自社の市場占有率がどの程度かを比較し計算した指標です。首位企業の市場占有率が50%であるのに対し、自社のそれが20%であれば、相対的市場占有率は40%と計算できます。相対的市場占有率と単なる市場占有率の違いを理解していない解説が散見されますのでご注意ください。ではなぜPPMでは「相対的市場占有率」を使用するかと言えば、端的に言えばそれを経験曲線効果の根拠として利用するからです。経験曲線効果が見られるか否かは、競合企業との比較による相対的なものです。企業数が多くて競争が激しく首位企業でも市場占有率が5%、二位企業は1%しかない状態が続いている業界を事例で考えて見ると、単純計算で首位企業は二位企業の5倍の累積生産量を持っており、それだけの経験曲線効果が生じていると考えることができます。これを相対的市場占有率ではなく、単なる市場占有率で捉えてしまうと、首位企業でも累積生産量が少なく経験曲線効果はない、などと誤った捉え方をしてしまう可能性があります。

(1)花形

花形というのは図で分かるとおり、市場成長率が高く、相対的市場占有率も高い事業や製品のことで、その事業や製品は言葉どおり「花形」と言えます。プロダクトライフサイクル上は成長期に該当し、資金流入は増加傾向にありますが、まだまだ投資や費用が必要で、利益やCFの面では大きなプラスにはなっていません。しかし、相対的市場占有率を維持・向上しるつ成熟期を迎えることができれば、投資や費用を減少させることができ、利益やCFを生み出す「金のなる木」になることができる可能性があります。

(2)金のなる木

市場成長率が低く、相対的市場占有率が高い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の成熟期に該当するため、他の期と比べ大きな利益・CFを生み出すことができます。いわゆる収穫期です。ここで収穫したキャッシュを花形に投じて金のなる木を目指したり、問題児に投じて花形に育てることを目指したりすることができます。

(3)問題児

市場成長率は高いものの、相対的市場占有率は低い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の導入期もしくは成長期初期に該当します。投資や費用が必要で資金流出が大きい一方、売上はまだ小さいので利益・CFはマイナスの段階です。ただし、市場成長率が高いので投資を継続し、問題児→花形→金のなる木となるよう目指します。

(4)負け犬

市場成長率は低く、相対的市場占有率も低い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の衰退期に該当します。また、問題児から花形に育つことができなかった事業やそもそも参入に失敗した事業なども該当するでしょう。資金の流出も少なく、利益・CFだけ見ると大きな赤字ではないこともあるため現状維持とされることも少なくありませんが、将来性もありませんし、資本コストの面で見ると必要な利益率などを満たしていないなどの可能性もありますので撤退を検討すべき状態です。


このように複数事業を行う企業の事業単位・製品単位の分析に活用できる枠組みですが、以下のような問題点も指摘されています。
  • 事業や製品化の相乗効果(シナジー)などが反映されない。
  • 市場成長率の予測が難しい。
  • 経験曲線効果が発生しない業界には適用できない。

今回は以上です。次回は「M&Aのデューデリジェンスの手法を活用した分析」について解説予定です。

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