NGCパートナーズ事業内容

(1)経営・財務コンサルティング事業
起業相談、事業承継相談、経営企画、社外取締役就任、株式上場支援業務M&Aアドバイザリー業務、事業計画・資本政策策定及び資金調達など。「教える」、「代わりにやる」ではなくクライアント企業の役職員と「協働する」スタンスで活動しています。
(2)投資事業
未上場企業等への投資

活動エリアは主に東京と福岡です。その他詳細はこちらからご覧ください。
仕事の相談・依頼、その他のご連絡はこちらからお願い申し上げます。

NGCパートナーズ代表者プロフィール

自分の写真
新宿区・豊島区, 東京都, Japan
1979年3月福岡県出身。西南学院中学高校・早稲田大学社会科学部卒業。新卒入社した独立系ベンチャーキャピタルを退職後、プライベートエクイティ業界を経て経営コンサルティング事務所を開業。 その後、急成長中の専門商社の経営に参画(経営企画担当取締役)。経営企画、上場準備や新規事業の立ち上げを担当。さらに、上場ベンチャーキャピタルのマネジメントメンバー(執行役員)としてに活動後、 経営コンサルティング事務所の活動を再開。未上場企業数社の社外取締役・非常勤取締役として経営に参画中。日本M&Aアドバイザー協会認定M&Aアドバイザー。プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会会員(会員番号:000178)

注目の記事

NGCパートナーズの「M&Aセカンドオピニオンサービス」について

2020年3月に発表された「 中小M&Aガイドライン 」でその重要性が強調されたからか、M&Aのセカンドオピニオンのニーズが高まっています。NGCパートナーズでも対応していますので、以下ご案内します。 1.セカンドオピニオンとは?  もともとは医療の用語として普及...

人気の記事

広告

2020年9月23日水曜日

事業計画の作り方16 後継者の方向け(4) ローカルベンチマークの活用(現状分析の補足)

事業計画の作り方14」にて現状理解と現状分析について触れ、「事業計画の作り方15」にて補足として財務分析について触れました。今回はさらなる補足として経済産業省が作成したツールである「ローカルベンチマーク」の活用について解説します。

さて、ローカルベンチマークとは経済産業省によると以下のように説明されています。読んでいただくとお分かりのとおり、事業計画作成のための現状分析と位置づけがほぼ同じです。
ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)として、企業の経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用されることが期待されるものです。
具体的には、「参考ツール」を活用して、「財務情報」(6つの指標※1)と「非財務情報」(4つの視点※2)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで経営状態の変化に早めに気付き、早期の対話や支援につなげていくものです。

(※1)6つの指標;①売上高増加率(売上持続性)、②営業利益率(収益性)、③労働生産性(生産性)、④EBITDA有利子負債倍率(健全性)、⑤営業運転資本回転期間(効率性)、⑥自己資本比率(安全性)
(※2)4つの視点;①経営者への着目、②関係者への着目、③事業への着目、④内部管理体制への着目

今回の記事でローカルベンチマークを説明するのは、それが
  • 網羅性に優れている
  • 支援機関との対話の中で活用できるようになっている、もしくは支援機関との対話のきっかけとして活用できる
という特徴があるからです。

ローマルベンチマークは大項目として、
  1. 財務分析
  2. 商流・業務フロー
  3. 4つの視点
の3つの部分で構成されています。ひとつずつ内容について説明していきます。

1.財務分析

 予め用意されているExcelシートに数値を入力すると、
 (1)売上高増加率(売上持続性)
 (2)営業利益率(収益性)
 (3)労働生産性(生産性)
 (4)EBITDA有利子負債倍率(健全性)
 (5)営業運転資本回転期間(効率性)
 (6)自己資本比率(安全性)
について診断結果が表示され、業種の中での位置が指標化されます。同じ規模・業種の中で上位7%に入っていれば5点、その次の24%に入っていれば4点といった具合です。ぴったりと当てはまる業種分類がない可能性もありますが、参考になる情報が得られます。

ここでの財務分析では各指標は以下の計算式で算出されます。
売上高増加率(%)=(最新期売上高/前期売上高)-1
営業利益率(%)=最新期営業利益/最新期売上高
労働生産性(円)=営業利益/正社員数
EBITDA有利子負債倍率(倍)=(借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費)
営業運転資本回転期間(ヶ月)=(売上債権+棚卸資産-買入債務)/(売上高/12)
自己資本比率(%)=純資産/負債・純資産合計
比較対象は帝国データバンク社が保有する企業の内、約10万社の財務指標とのことです。

2.非財務「商流・業務フロー」

 まず「業務フローでは、業務プロセスを分解し、価値を生み出すために行っている工夫・他社との差別化ポイントを記載します。」(引用元:ローカルベンチマークマニュアル)
企画に始まり、製造や仕入れ、営業、納品・サービス提供までを5程度のステップに分けて、それぞれに差別化ポイントを記載していくシートです。

次に「商流は取引先と取引理由を整理し、どのような流れで顧客提供価値が生み出されているかを把握します。」(引用元:ローカルベンチマークマニュアル)
商流を仕入先、協力先、得意先、エンドユーザーの4つに分類し、それぞれに選定理由を記載していくシートです。

3.非財務「4つの視点」

 項目が充実しています。まず、以下の(1)~(4)について対話を通じて確認していきます。

(1)経営者

・経営理念・ビジョン、経営哲学・考え・方針等
・経営意欲 ※成長志向・現状維持など
・後継者の有無、後継者の育成状況、承継のタイミング・関係

(2)事業

・企業及び事業沿革 ※ターニングポイントの把握
・強み・弱み 技術力・販売力等
・ITに関する投資・活用の状況、1時間当たり付加価値(生産性)向上に向けた取り組み

(3)企業を取り巻く環境・関係者

・市場動向・規模・シェアの把握、競合他社との比較
・顧客リピート率・新規開拓率、主な取引先企業の推移、顧客からのフィードバックの有無
・従業員定着率、勤続年数・平均給与
・取引金融機関数・推移、メインバンクとの関係

(4)内部管理体制

・組織体制、品質管理・情報管理体制
・事業計画・経営計画の有無、従業員との共有状況、社内会議の実施状況
・研究開発・商品開発の体制、知的財産権の保有・活用状況
・人材育成の取り組み状況、人材育成の仕組み

次に対話内容の総括として、

(5)現状認識
(6)将来目標

をまとめ、現状と目標のギャップを明らかにして、

(7)課題
(8)対応策

までまとめる、という流れです。

詳しくは、Youtubeでの動画解説と、引用元でもあるローカルベンチマークマニュアルなどをご確認ください。

事業計画づくりの前提となる現状理解や現状分析は様々な方法があります。ローカルベンチマークのその中のひとつとしてご活用ください。

NGCパートナーズではローカルベンチマーク活用の際の対話相手として協力させていただくことができます。ご関心がある方は当ブログ上部の「Contact」からお問い合わせください。

以下、Youtubeでの解説動画です(音が出ますのでご注意ください)。1本当たり2~5分程度の短い動画です。









2020年9月22日火曜日

事業計画の作り方・番外編 後継者の方向け 会社・業務のデジタル化

今回は後継者、特に他の一般企業での勤務経験がある後継者の多くの方が感じていらっしゃるであろう、受け継ぐ会社のデジタル化の遅れにどう対応するか、ひとつの例をご紹介したいと思います。中小企業庁・中小企業基盤整備機構(中小機構)の制度を利用なのですが、単年度事業であるため「番外編」として先にご紹介するものです。

今回ご紹介するのは、「中小企業デジタル化応援隊事業」という事業です。以下、必要に応じて同事業のWebサイトや資料から引用もしくは一部改変してご紹介します。
(引用元:中小企業デジタル化応援隊事業Webサイト、中小企業向け手引書、IT専門家向け手引書、FAQ等)

まず、この事業は「全国の中小企業・小規模事業者のさまざまな経営課題を解決する一助として、デジタル化・IT活用の専門的なサポートを充実させるため、フリーランスや兼業・副業人材等を含めたIT専門家を『中小企業デジタル化応援隊』として選定し、その活動を支援する取り組みです。」

会社のデジタル化の遅れは、後継者が危機感を持つことが多い問題のひとつです。例えば、
  • 報告書や伝票類が手書き、紙ベースのままであり、集計や分析ができない
  • 社内での情報共有手段が会議と掲示板での周知しか方法がない
  • メールアドレスが会社や部署にひとつしかなく、メールを毎回プリントアウトしている
  • パソコンのセキュリティ対策がなされていない
  • データへのアクセス制限がなされておらず、悪い意味で情報がオープンになっている
  • 情報の一元管理や検索可能性向上がなされていない
  • 役職員がお互いのスケジュールは把握する方法が「直接聞く」しかない
等々、挙げだしたらキリがありません。

後継者が他社を経験していたり、デジタル化に詳しかったりする場合でも、デジタルツールの導入を作業レベルまで後継者自身が行うのが現実的ではないですし、詳しくない場合は問題意識はあってもさらにデジタル化を進めることが難しいでしょう。

そこで、「中小企業デジタル化応援隊事業」を通じてIT専門家と協力してデジタル化を進めてはどうでしょうか。

同事業の主な特徴を以下、箇条書きで記載します。詳しくは、中小企業デジタル化応援隊事業Webサイト、中小企業向け手引書、IT専門家向け手引書、FAQ等を必ずご確認ください。
  • デジタル化の対象として想定されているのは、「テレワーク、EC構築、ホームページ、RPA導⼊、グループウェア導⼊、セキュリティ強化、AI、インターネットバンキング、ERP導⼊、HR領域デジタル化、社内向け研修デジタル化、オンライン会議導⼊、オンラインイベント、各SaaS導⼊検討、IoTツール導⼊、ペーパーレス推進、DBサーバー、通信環境・サーバー、デジタルマーケティング、IP電話など」であり、デジタル化がこれからの中小企業に必要な事項が網羅されています。
  • IT専門家による支援領域は「デジタルツールの導⼊・推進にあたって必要な⽀援であり、準委任規約に基づく⽀援に関しては対象となり」、個別具体的に決めていくことになります。コンテンツ制作やデザイン作成等は対象になりません。
  • 対象となる中小企業等は、日本国内で登記・納税している等の条件を満たし、且つ業種ごとに資本金や従業員数で定められた範囲に該当する企業で、同事業事務局に登録した企業です。
  • IT専門家は主に「個人として本事業への参加を希望するフリーランス・副業・兼業の方」で、同事業事務局にIT専門家として登録した方です。登録にあたっては事務局が一定の審査を行っているとのことです。
  • IT専門家に対して、事業から謝金が支払われますので、中小企業側は直接依頼よりも事業を通じた依頼の方が出費が少なくてすみます(事業からの謝金は最大で3,500円/時間、中小企業の最低負担額は500円/時間です。例えばIT専門家の時間単価が5,000円であった場合、事業からの謝金3,500円を差し引いた1,500円が中小企業の負担額です)。
  • 期間は次のとおりです。受付期間:2020年9月1日(火)〜2021年1月31日(日)、支援事業実施期間:2020年9月1日(火)〜2021年2月28日(日)
  • 中小企業とIT専門家はお互いの間で契約を締結しますが、契約と合わせて両者間で合意する支援計画書に従い業務を進め、予め定められたタイミングで同事業事務局に進捗や状況を報告します。
NGCパートナーズでも最近、他の受託業務に付随するかたちでデジタルツール導入(グループウェア、SFA、CRM、Web会議システム、セキュリティ対応等)のお手伝いをさせていただきましたが、
  • 現状を理解した上で経営課題を認識し
  • その解決にデジタルツールが有効且つ必要か検証し
  • 現在・将来必要となる機能まで見越して情報収集・ツールの比較検討を行い(ツールの詳細はたまたま利用経験があるもの以外は毎回学ぶ必要があります)
  • ツールが使用できるよう、具体的な利用場面を想定しながら初期設定を行い(導入企業の業務詳細とシステムの仕組みを理解しながら、の作業です)
  • 社内での説明会開催、質問対応、場合によってはマニュアルを独自に用意するなどの定着化活動を行い(実際に導入企業の役職員に活用してもらわなければ意味はありませんし、デジタルツールに苦手意識がある役職員の方向けには実際に一緒に画面を見ながらの解説などを行う必要もあります)
  • 場合によっては同時に業務フローを見直す(デジタルツールを導入する際に合わせて業務フローを見直さないと効率化・適正化は不十分に終わります。例えば今まで紙ベースで行っていた業務をデジタル化しても業務フローを見直さなければ、良くてもせいぜい「原則紙ベース、必要に応じてデジタルツールの活用」と理解・認識されてしまい、結果としてデジタルツールが活用されず業務の効率化・適正化が達成できないということが起きます)
  • それらを一定の予算内で行う
のは思いの外時間がかかるものです。これをデジタル化に詳しい社内の人財に全て丸投げしたり、IT専門家に直接業務委託したりすると業務負担もコストもかかります。一方で、デジタル化を実現できると業務効率化・適正化に大きく貢献しますので、中小企業デジタル化応援隊事業をきっかけとして検討・推進することをおすすめします。

なお、私もIT専門家として「中小企業デジタル化応援隊」に登録されています。


2020年9月21日月曜日

事業計画の作り方15 後継者の方向け(3) 事業計画作成のための財務分析(現状分析の補足)

前回の記事で事業計画を作るための「現状理解と現状分析」についていろいろな例示をしましたが、今回は前回の補足で「事業計画を作るための財務分析」について説明します。

財務分析は業種業態ごとに何をするかがある程度異なってくるのですが、今回ご紹介するのは事業計画を作るに当たってほとんどの業種で最低限、事前に財務分析をしておくべき事項です。財務分析はこれだけ行えば他の数値は分析しなくて良いという意味ではなく、来期以降の予想貸借対照表・損益計画・キャッシュフロー予想を行うに当たって、まずは最低限押さえておくべき事項のみ説明するものです。

1.貸借対照表と損益計算書に関する分析

 売上債権、棚卸資産や仕入債務については過去の決算書から回転期間を計算しておきましょう。事業計画を作る上では、今後の売上や仕入といった損益計画上の数値がどう予想貸借対照表に影響してくるか、さらにはどう予想キャッシュフローに影響してくるのかを計算するために使用します。

それぞれの用語の意味と計算式は以下のとおりです。なお、財務や会計に自信がない方は先にこちらの記事に目を通していただくと理解が進むと思います。

(1)売上債権回転期間の計算

 売上債権を回収するのに要する期間を表す指標です。

売上債権とは主に売掛金のことで、売上には計上しているものの、まだ資金回収・現金化が終わっていないものの残高を表しています。

売上債権回転期間が長いということは現金化まで時間を要しているということですし、逆に売上債権回転期間が短いということは現金化までの時間が短いということです。ですので、ほとんどの場合、売上債権回転期間が短い方が望ましいとされています。但し、下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)で中小企業に対する支払い時期については規制がありますのでご注意ください。

財務分析にあたっては、過去3期分の売上債権回転期間を「○ヶ月」というかたちで計算しておきましょう。

計算式は以下のとおりです。
売上債権回転期間 = 売上債権 / ( 年間売上 ÷ 12 )
     = 売上債権 / 単月売上平均

(2)棚卸資産回転期間の計算

 何ヶ月分の棚卸し資産を保有しているかを表す指標です。

棚卸資産とは、将来販売する予定で保有している製品、商品、仕掛品、原材料のことです。

棚卸資産回転期間が長いということは過剰な在庫を抱えている可能性があるということですし、逆に棚卸資産回転期間が短いということは限られた在庫で事業を行っているということです。資金繰り上は棚卸資産回転期間は短い方が望ましいですが、在庫切れによる販売機会を逸失するという見方もあり、適正な在庫量を見極めていく必要があります。

財務分析にあたっては、過去の3期分の棚卸資産回転期間を「○ヶ月」というかたちで計算しておきましょう。

計算式は以下のとおりです。
棚卸資産回転期間 = 棚卸資産 / ( 売上原価※ ÷ 12 )
     = 棚卸資産 / 単月売上原価平均※

※)売上原価ではなく、売上高で棚卸資産回転期間を計算している解説書もありますが、計算する際にどちらかに統一しておけば特に大きな問題はありません。棚卸資産の額は売上そのものではなく売上原価に影響してくるものですので、売上原価で計算する方が筋は通っていると考えられます。

(3)仕入債務回転期間の計算

 仕入債務を支払うのに要した期間を表す指標です。

仕入債務とは主に買掛金のことで、将来販売するためにすでに仕入れているがまだ代金の支払いをしていないものの残高を表します。
 
仕入債務回転期間が長いということは支払いまでの期間が長い取引が多いということですし、逆に仕入債務回転期間が短いということは支払いまでの期間が短い取引が多いというこです。ですので一見、仕入債務回転期間は長い方が望ましいと思われますが、意図的に仕入債務回転期間を長くすることは慎重に検討する必要があります。仕入債務回転期間を長くするためには、取引先(仕入元)に対し、仕入れから支払いまでの期間を延ばして欲しいと相談・依頼することになりますが、そのことが貴方の会社がの資金繰りが厳しいのではないかという憶測を呼んでしまうなどのリスクもあるからです。

財務分析にあたっては、過去3期分の売上債権回転期間を「○ヶ月」というかたちで計算しておきましょう。

計算式は以下のとおりです。
仕入債務回転期間 = 仕入債務 / ( 売上原価※ ÷ 12 )
     = 仕入債務 / 単月売上原価平均※

※)売上原価ではなく、売上高で仕入債務回転期間を計算している解説書もありますが、計算する際にどちらかに統一しておけば特に大きな問題はありません。仕入債務の額は売上そのものではなく売上原価に影響してくるものですので、売上原価で計算する方が筋は通っていると考えられます。

2.貸借対照表に関する分析

(1)設備の確認

 正確には財務分析とは言えないですが、事業計画作成にあたっては現状の設備を点検しておきましょう。合わせて今後必要となる設備投資額の分析を行っておきましょう。新規に設備を購入する必要があるものだけでなく、既存設備の修繕も合わせて確認しておきます。将来、突然の出費に困ることがないよう、専門の事業者に見積もりをしてもらっておくべきです。なお、「必要な」設備投資と「できれば行いたい」設備投資はできるだけ分けておくことをおすすめします。

(2)有利子負債の返済予定一覧表の作成

 有利子負債とは、読んで時の如く利子を支払う必要がある負債のことで、多くの場合金融機関からの借入や社債のことを表します。取引先や自社の経営陣からの借入があり、且つ金銭消費貸借契約などでその借入に金利が付される場合は、その借入も有利子負債に含みます。

金融機関から借入を行ったら、その金融機関から返済予定表が送られてくると思います。しかし、同じ金融機関からでも借入が何本かあったり、複数の金融機関からの借入がある場合は、返済予定一覧表を作成しておくべきです。事業計画を作る上では将来のキャッシュフローを計算する際に使用します。

返済予定一覧表は以下の情報をとりまとめます。

まずは、以下の基本情報を記載しましょう。同じ金融機関からの借入でも別々の借入であれば以下の情報も別々に記載します。
  • 金融機関名(○○銀行)
  • 借入をした金額(○円)
  • 借入をした日付(○年○月○日)
  • 借入期間(○年○月○日~○年○月○日)
  • 返済月数(○ヶ月)
  • 利子率(○%)
  • 返済方法(元利均等返済 or 元金均等返済)
  • 返済猶予期間、据置期間(○ヶ月)
  • 借換の場合はどの借入の借換か
次に以下の情報を借入ごと・月ごとに記載しましょう。
  • 返済額(元本)
  • 利払額(利息)
  • 返済額合計(元本+利息)
  • 借入金残高(○円)
複数の借入がある場合は、この4つの項目はそれぞれの合計値も計算して記載しておきます。 

また利子率について、全ての借入の利子率を加重平均した利子率を合わせて計算しておきます。

(3)売却可能な資産の特定等

 もし売却可能な資産があればその特定とその売却予想額も調べておきましょう。

ここでの「売却可能」とは「事業で使用していない資産」という意味です。昔から保有しているものの事業には使用していない不動産や、取引などの付き合いとは関係ない運用目的の有価証券などが該当します。

事業に使用しているものの売却できる資産というものもありえますが、ほとんどの場合に売却した後、その資産を賃借する必要があります(セールス・アンド・リースバック取引)。よって売却した方が効率がいいか、保有し続けた方が効率がいいかの判断を慎重にする必要がありますので、事業で使用していない資産とは分けて数字を記録しておきます。

3.損益計算書

(1)売上の分解

 本シリーズの売上に関する説明の回で、「分析は割り算(分解)、計画は掛け算」というフレーズをご紹介しました。売上計画を作るにあたっては、その根拠を示すためにも単価×個数といったように掛け算を行う必要があります。そしてそれを適切に行うには過去どうであったかも参考のひとつとしますので、過去の売上について分解作業をしておく必要があります。

粗利益率の計算も含めて、以下の計算は実施しておきましょう。
  • 販売数量と販売単価と粗利益率
  • 販路別の売上と粗利益率
  • 顧客別の売上と粗利益率
  • 製品商品・サービス別の売上と粗利益率

(2)原価・販管費の固変分解

 原価や販管費のような費用は、固定費と変動費に分けることができます。ただ、一般的な販管費一覧や製造原価報告書を見ただけでは、どの科目が固定費で、どの科目が変動費かはおおよそしか分かりません。そのため、それぞれの費用の内容や性質を見極めて固定費か変動費かを判定する必要があり、その作業のことを固変分解と呼びます。

事業計画をつくる上では、売上額を変動させた場合の利益額の変動度合い(弾力性)を見たり、損益分岐点売上高を計算したりするために使用します。

固定費とは売上の数字とは直接は連動しない費用のことを指します。多くの中小企業では主に以下のような費用が該当します。
代表的な固定費:
人件費、労務費、法定福利費、地代家賃、水道光熱費、減価償却費、リース料など
但し、本当にそれらが固定費かどうかは内容や性質を個別に確認した上で決定しましょう。例えば地代家賃は固定費の代表格ではありますが、飲食店の地代家賃が固定部分と売上連動部分に分かれている例もあるようです。他にも製造原価内の労務費を変動費と見る場合や、人件費の内残業代だけを変動費と見る場合もあります。
変動費とは売上の数字と連動する費用のことを指します。多くの中小企業では主に以下のような費用が該当します。
代表的な変動費:
原材料、販売手数料、リベート、外注費など

(3)人件費等の詳細確認

ほとんどの中小企業にとって、人件費が最も大きい費用項目のひとつです。事業計画をつくる上でも大切な項目ですので、財務分析と合わせて以下の計算をしておきましょう。
  • 退職率
  • 労務費・給与等の分解(従業員数と平均年収)
  • 一人あたりの給与増加率
  • 法定福利費の人件費に対する比率
  • 賞与支給の方針や計算式
事業計画をつくる上では、上記数値をそのまま採用するとは限りませんが、大きく乖離させるわけにはいかないことも多いため、しっかりと確認しておきます。

(4)減価償却費の詳細確認

 将来の数値を計算する上で地味にやっかいなのが減価償却費です。資産ごとに償却期間、償却方法が違いますし、教科書どおりに表計算ソフトに計算式を入れてもなかなかうまく計算できないこともあります。また、将来の設備投資に対する減価償却額を正確に計算することは、その設備投資の内容が決定していない限りは不可能です。そのため、事業計画を作る上では、既存設備に関する将来の減価償却費は顧問税理士に算出をお願いするか、固定資産額に対する比率として計算してしまうかの方法をとります。税理士事務所によっては将来の減価償却費を計算するソフトウェアが未導入である場合もありますので、その場合は固定資産額に対する割合として計算してしまう方法をとることになります。

財務分析の段階では以下の事項を確認しておきましょう。
  • 既存設備の今後の減価償却費の計算
  • 減価償却費の固定資産に対する率の計算
  • 過去に償却不足があればその額の確認

(5)同業種の財務指標の入手

 顧問税理士や金融機関に相談して、同業種の財務指標一覧をできるだけ入手しておきましょう。実際には業種分類がうまく自社に当てはまらなかったり、企業規模がうまく当てはまらなかったりして使用しにくい面もあるのですが、やはり他社の数値というのは参考になります。

以上、長くなりましたが、事業計画を作る前にやっておくべき最低限の財務分析についての説明でした。

2020年9月20日日曜日

事業計画の作り方14 後継者の方向け(2) 現状理解と現状分析

後継者の方向けに事業計画の作り方を解説していくシリーズですが、前回説明したとおり、一定の前提を設けています。読者層として想定しているのは、先代経営者の親族かもともと会社の役職員であった後継者の方です。詳しくはシリーズの前回の記事をご確認ください。

さて、本シリーズの「事業計画の作り方1 枠組み、全体像、基本的な考え方」にて、事業計画の作り方の全体像を説明した際、「現状分析」について触れました。後継者の方もこれから何をするか、すべきかを考えたいと思います。しかし、その前に一端立ち止まって以下のようなことを考えてみてください。
  • 個々の役職員の仕事ぶり、得意な仕事、キャリアプランや性格についてどのくらい理解していますか?
  • 自社の製品商品やサービスについて詳細に説明できますか?なぜお客様に選ばれているか説明できますか?
  • ひとつの製品商品やサービス当たりの本当の利益額を把握していますか?粗利ではなく本当の利益です。
  • 自社のお客様について詳細に説明できますか?BtoBであれば個別のお客様の情報について理解できていますか?BtoCであれば顧客層の詳細について説明できますか?
  • 自社の決算書や月次試算表を見て、内容の詳細を説明できますか?例えば販管費の中にある雑費について説明できますか?
  • 会社全体の売上や利益だけでなく、お金の流れ=キャッシュフローを詳細に説明できますか?
  • 金融機関からの借り入れについて、毎月の返済額を把握していますか?支店長や担当者の名前を覚えていますか?
等々。

これらの情報のほとんどは自然に集まってくるものではなく、情報を集計する仕組みや、情報が報告される仕組みを構築しておかなければなりませんし、これらのことを人に説明できるくらい理解しておかなければ事業計画を適切に作ることはできません。会社の仲間達も現状や自分たちのことを理解しようとしない後継者にはついて行きたいとは思えないでしょう。また、現状分析などをすっ飛ばして新しい施策を行ってしまうと、必要以上に既存の役職員の反発を招く結果となってしまいます(もちろん、既存役職員の反発を覚悟で実施しなければならない施策というものはあります)。

では、現状分析はどのように行ったらよいでしょうか。

(1)まずは、現状を理解しましょう。

 一番良い現状理解の方法は「自分で実際にやってみる」、「自分の目で確かめる」ことです。時間がないと言い訳しても始まりません。

ファーストリテイリング社はどのような職種での入社でも、まずは実際の店舗での勤務から開始するそうです。製造業では昔から、現場・現物・現実と言われています。後継者の現状理解も同様かと思います。
  • 先代経営者の話を改めて丁寧に聞き、どのような想いで経営してきたか、どのような苦労を乗り越えてきたか、まだ乗り越えられていない問題点は何かを理解しましょう。いつも同じ話を聞かされていると考えてしまい、大切なことを聞き逃したりしていることもあります。
  • 役職員と一緒に働き、コミュニケーションをとりましょう。面談だけでは理解が不十分に終わります。
  • ものづくりを自分もやってみて、作り手の働きぶりを見てみましょう。
  • 原価や費用を決算書や月次試算表上の数字としてだけ理解するのではなく、総勘定元帳などに目を通し、さらには現場に行き原価や費用の発生の現場を実際に見て確認しましょう。
  • 外注先や業務委託先の現場にも行き、業務がどのように行われているのか理解しましょう。
  • 棚卸しを一緒に行い、どのような在庫がどのように保管・管理されているか理解しましょう。
  • 営業に行ったり、既存のお客様に会いに行ったりして、お客様はどういったことで困っておりどのような事情を抱えているか、自社の製品商品やサービスがなぜ選ばれているか、なぜ選ばれていないか、生の声を聞きましょう。また、自社の営業担当者がどのような状況で営業活動を行っているか確認しましょう。
  • 保守・メンテナンスに同行し、どういった活動が顧客満足度の維持向上につながっているのかを確認しましょう。
  • 役職員と同じ場所で働き、役職員から見た職場環境について理解しましょう。
  • 金融機関への説明に同行し、金融機関側がどう考えているか、何を知りたがっているかを理解しましょう。
  • 同業他社の経営者や後継者の話を聞き、その環境や言動を理解しましょう。
以上はあくまでも例示です。他にもたくさん理解すべき現状があるはずですので自分で考え、先代経営者にも教えを請い、現状理解のためのなすべきことをリストアップし、実行していってください。

自分は現状を理解できている!というのは思い込みにすぎないことが少なくありません。謙虚な気持ちで取り組むことをおすすめします。

(2)次に現状を分析しましょう。

 「事業計画の作り方1 枠組み、全体像、基本的な考え方」では現状分析のフレームワークについて代表的なものを紹介しました。それ以外でも、現状理解で集めた情報についての分析、数字や営業に関する分析はご自身で分析をすることをおすすめします。

現状理解で例示したことだけでも、
  • 人に関することでは、適材適所が実現できているか、改善可能な理由にも関わらず退職をしてしまいそうな役職員はいないか、といったことが分析できます。
  • ものづくりの現場でも、生産効率向上の余地はないか、品質向上の余地はないか、外注先や業務委託先は適切かといったことを分析できます。
  • 営業と棚卸しを両方行えば、在庫量やその種類が適切か分析できるかもしれません。
  • お客様の声を元に、自社の製品商品やサービスがお客様の期待に応えられているか、改善の余地がないか分析できます。
  • 役職員と同じ場所で一緒に働けば、評価制度や職場環境の改善可能性について分析できるでしょう。
営業に関することでは、きっと営業担当者ごとに顧客の性質や営業担当者のキャラクターなどが理由で、様々な営業スタイルがあったかと思いますが、基本的な型としてはどのようなものか、営業担当者の行動のあるべき姿とかいったことが分析できるはずです。

数字に関しては、まずは月次試算表などを元に毎月の貸借対照表や損益計算書の数値を一覧表に自分で入力していきましょう。見ているだけでは気が付かなかったことが見つかるはずです。自分で入力した一覧表を常に手元に置いておいて時間があるときに見直してみるとまた気づきがあります。また、合わせて財務分析を行っていろいろな指標を計算してみるのも良いことです。財務分析の中で気がつくこともあれば、月次決算が適切に行われていないことが理由で、財務分析が行えない事項、つまりは月次決算の要改善点も判明するでしょう。

製品商品やサービスことの利益額も計算してみましょう。そもそも原価計算はどのレベルで行えているでしょうか。粗利の把握が適切にできていないことも珍しくありません。また、原価に含まれないコスト(主には販管費)も考慮した場合、製品商品やサービスをひとつ・一回提供する毎に本当の利益はどの程度出るのかも分析しましょう。一回の営業でどの程度売上を作る必要があるのか、営業担当者ひとりあたりどの程度の売上が必要か、自社の目標利益を達成するためにどの程度の売上をあげる必要があるのかが分かりやすくなります。

キャッシュフロー計算書を自分で作成してみることも良いかもしれません。その過程で貸借対照表、損益計算書とキャッシュフロー、それぞれの関係性やお金の流れを理解できるようにもなります。

主要メンバーの時間の使い方の分析も重要です。一生懸命に仕事に取り組んでいる役職員の中にも、重要度や緊急度に応じた時間の使い方になっていない例が多くあります。例えば、営業の基本である顧客接点回数の最大化のために営業に充てる時間が一番重要にも関わらず、実際には他の業務に時間を取られていたなどといったことです。

以上のこともあくまでも例示です。同業他社の現状分析の方法を模倣するところから始めても構いません。分析をすればするほど、また新たに分析すべきことが見つかると思います。

「べンチャー型事業承継」という言葉があるように今後の後継者には、起業家的なマインドが求められてくるのは間違いありません。

一方で既に一定の歴史がある企業を受け継ぐのですから、現状の良い面悪い面もしっかりと理解して必要に応じて打ち手を打つ必要があります。重ねてになりますが、後継者にとっての事業計画づくりはまずは現状理解と現状分析がとても重要です。

なお、経営コンサルタントに現状分析を依頼して、その報告を受けるという手段もありますが、後継者自身が目、耳や足を使って理解・分析したものと比べても後継者の血肉となりにくいので、できるだけ現状理解と現状分析は後継者自身で行うのが良いと考えます。

2020年9月11日金曜日

NGCパートナーズの「M&Aセカンドオピニオンサービス」について

2020年3月に発表された「中小M&Aガイドライン」でその重要性が強調されたからか、M&Aのセカンドオピニオンのニーズが高まっています。NGCパートナーズでも対応していますので、以下ご案内します。

1.セカンドオピニオンとは?

 もともとは医療の用語として普及したもので、以下のような意味の言葉です。
セカンドオピニオンを簡単に説明すると、日本語では「第二の意見」と呼ばれるように、患者がある病気で診断を下された際に診断結果やその後の治療方針や治療方法について、主治医以外の医師から意見を聞くことを言います。主治医以外の意見を聞くことで、現在の治療が適切なのか、他に良い治療がないのかなど、患者がより納得のいく治療を受けることが可能になります。
(出典:セカンドオピニオン.com Webサイト)

2.M&Aにおけるセカンドオピニオンとは?

 中小M&Aガイドラインでは以下のように定義されています。
セカンド・オピニオンとは、中小M&Aを行おうとしている者が支援機関と契約を締結する際や、支援機関から受けた助言の内容の妥当性を検証したい場合等に、他の支援機関から意見を求めることをいう。
同ガイドライン用に定義されている言葉が含まれますので、より一般的な用語で書き直すと以下のとおりです。

中小企業のM&Aにおけるセカンドオピニオンとは、
  • 事業を譲り渡す側(いわゆる売り手)や事業を譲り受ける側(いわゆる買い手)が、
  • M&A助言業務を行うM&Aアドバイザリー事業者やM&A仲介事業者などと
  • ファイナンシャルアドバイザリー契約や仲介契約を締結する際や、
  • それらの事業者から受けたM&Aのストラクチャーやバリュエーションなどを含む専門的な助言の内容の妥当性を検証したい場合等に、
  • 他のM&Aアドバイザリー事業者やM&A仲介事業者などに意見を求めること

3.M&Aにおけるセカンドオピニオンの必要性

 医療におけるセカンドオピニオンは、患者が自分の病気やその治療法について理解し選択するために必要な方法のひとつとして実施される例が増えていますが、M&Aにおけるセカンドオピニオンの必要性は医療におけるそれと同じかそれ以上と言えます。理由は以下のとおりです。
  • M&Aはほとんどの中小企業にとって極めて少ない回数しか経験しないものであるため、日々忙しい経営者や企業オーナーが理解を深めていくことは容易ではない。
  • 専門家の質がどうかを、その分野の専門ではない者が判断するのはM&Aに限らず簡単ではない。
  • 加えて、M&A助言業務は医療行為とは違い資格や免許が不要なため、専門家が保有する専門性が一定水準以上であることが保証されない(士業専門家としてM&Aに関わっている場合は資格は保有しているが、M&A助言業務そのものが士業としての本来の業務ではないことが多いため、士業の資格を保有していることが、M&Aの専門性が一定水準以上であることを保証しているわけではない)。
これらを解消するために、国も事業承継ガイドライン中小M&Aガイドラインを定め、中小企業経営者や企業オーナーの理解を促進したり、M&Aに関わる専門家にもガイドラインに沿った一定水準以上の活動を求めてたりしていますし、日本M&Aアドバイザー協会のように専門性向上活動や職業人としての倫理の啓発活動を行っている例もあります。セカンドオピニオンもそういった問題を解消するためのひとつの方法といえます。

4.どういった場合にセカンドオピニオンがあると良いか?

 では、M&Aにおけるセカンドオピニオンはどういった場合にどのようなことを確認するために活用すると良いのでしょうか?先述の中小M&Aガイドラインではいくつかの例が紹介されています。
  • M&A助言業務を行うM&Aアドバイザリー事業者やM&A仲介事業者とFA契約や仲介契約を締結する際に、業務の具体的内容や報酬の妥当性について意見を求める。
  • 最終契約(株式譲渡契約や事業譲渡契約など)を締結・調印する前に、その契約内容について意見を求める。
同ガイドライン記載以外の事項でも
  • バリュエーションの結果や、その前提条件、算出過程の妥当性について意見を求める。
  • デューデリジェンスの結果や、その調査過程・範囲について意見を求める。
といったことが考えられます。

いずれの事項も、事業を譲り渡す側、事業を譲り受ける側、どちらの場合でもセカンドオピニオンの活用が望まれます。

5.要確認事項

 M&Aアドバイザリー事業者やM&A仲介事業者とのFA契約や仲介契約の中には専任条項と呼ばれる条項で、実質的にセカンドオピニオンが禁止されている場合があります。ほとんどの場合は、M&Aで極めて重要な秘密保持の観点から設けられている条項ですが、そういった場合はFA契約や仲介契約を締結する前に当該専門家に必ず相談しましょう。「中小M&Aガイドラインに記載されていたセカンドオピニオンを活用する可能性も残しておきたい」と伝えれば、ほとんどの専門家が対応してくれるはずです。

6.NGCパートナーズの「M&Aセカンドオピニオンサービス」について

 NGCパートナーズでは以下の内容でセカンドオピニオンサービスを実施可能です。

(1)対応可能事項
 M&Aに関する全般的事項について相談対応可能です。すでに締結している(もしくは締結予定の)FA契約や仲介契約に基づき御社がM&A専門家に委託している事項に準じます。
但し、以下の事項については対応不可です。
・弁護士法や税理士法に違反する可能性のある事項
・知的財産、環境や技術分野の高度な専門性の必要な事項

(2)相談対応方法
 Web会議システム、メール、電話や面談いずれの方法でも可能です。特に理由がない限り、Web会議システム+メールでの対応が基本となります。

(3)期間及び費用
 1ヶ月50,000円(税抜)~で、ご希望の期間対応します。1ヶ月からでも承ります。資料の作成などを伴わないご相談であれば月内に何度でも承ります。資料の作成が必要になる場合は別途ご相談ください。交通費や調査費などの実費が発生した場合はご負担をお願いします。

(4)業務受託までの流れ
 ビザスクのこちらのページからお問い合わせください。秘密保持契約を締結するか、こちらから秘密保持誓約書を差し入れさせていただくまでは御社名を伏せていただいて問題ありません。

2020年8月30日日曜日

ハンズオンとコンサルティング

一般に、ベンチャーキャピタル(以下、VC)のような投資家が投資先企業に行う経営支援は「ハンズオン」と呼ばれています。一方で、経営支援を業として行っている存在の代表格と言えば経営コンサルタントである、とのイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。今回の記事では、ハンズオンとコンサルティングを比較することで、両者への理解を深めていきたいと思います。

内容に入る前に、以下4点を先に述べておきたいと思います。
  1. まず、今回の記事はあくまでも「私が考えるハンズオンとコンサルティング」だとお考えください。言ってしまえば独断と偏見に基づいています。両方の言葉とも、通説と言われるような定義が定まってはいません。全く違うお考えをお持ちVC関係者や経営コンサルタントの方もいらっしゃると思います。
  2. 私個人としては、「和魂洋才」のように、ハンズオンのスタンスとコンサルティングのノウハウをうまく融合したいと考えていますので、今回の記事もそういったバイアスがあるかもしれません。なお、NGCパートナーズの事業内容については「経営・財務コンサルティング」と記載していますが、これは投資ありきではないこと、言葉の分かりやすさを優先させたことが理由です。
  3. プライベート・エクイティファンド(以下、PEファンド)も同様の活動を行っており、その活動のこともハンズオンと呼ぶ場合もありますが、VCや経営コンサルタントと異なりPEファンドが経営の最終意思決定権限を持つことも多いので、あくまでも経営支援であるハンズオンやコンサルティングとは同列に論じることができないと私は考えます。よって、今回の記事のハンズオンはPEファンドのそれではなくVCが行う経営支援のことを意味するものとします。
  4. 本文中で「支援先企業」という言葉を使用していますが、これはVCにとっては投資先企業、経営コンサルにとってはコンサル先企業を意味します。経営コンサルがコンサル先企業に資金を投じる(出資する)事例が多いのかは勉強不足で知りませんが、そういった事例や、VCが投資先企業ではない企業に対しコンサルを行うこともありますが、そういった事例などは説明の都合上、今回の記事の対象外です。
さて、それではハンズオンとコンサルティングを比較していきましょう。

(1)立ち位置

・ハンズオン
 VCと支援先企業とは株主と発行体と関係であり、運命共同体(On the same boat)です。そのため、VCの投資担当者は支援先企業の内部関係者として、支援先企業もしくは経営者とできるだけ近い立ち位置に自分たちを位置づけようとします。但し、運命共同体であっても目指すべき方向が一致しているとは限りませんし、投資と出口(EXIT)の場面では利害が一致しない可能性があります。

・経営コンサル
 経営コンサルタントはあくまでも支援先企業からの業務委託を受けた立場であり、形式上は支援先企業の外部関係者です。支援先企業もしくは経営者とは対面で接することが大半です。

(2)経営支援の実施方法

・ハンズオン
 VCは支援先企業もしくはその経営者と共に考え行動します。一部の分野については「教える」というかたちも取ります。正解がないスタートアップの世界で求められるスタンスとも言える一方、別に述べるとおりVCは経営支援の専門性が高くないことが多いためにそういった方法を取らざるを得ないという側面もあります。

・経営コンサル
 支援先の担当者に「教える」というのが基本的方法です。また、あくまでも経営の一部分(戦略、財務、会計、営業、業務、システム等々)のみがその対象です。高い専門性を持っているが故に教えるという方法になりがちであり、また高い専門性を維持するためには分野も限定せざるを得ないということでもあります。

(3)経営支援の範囲

・ハンズオン
 経営全般が対象です。資金を投じている株主であるため、経営のあらゆる面について関心があるからです。別に説明するとおり、VCは支援先企業の株主価値向上が儲けの源泉であり、支援先企業のあらゆる事象が株主価値に影響を与える以上、経営支援の範囲も経営全般とならざるを得ません。ハンズオンを標榜するVCの投資担当者がしばしば支援先企業の社外取締役などに就任することを考えると分かりやすいかもしれません。但しこのことは、全ての支援先企業の経営全般に常に関わることを意味するわけではありません。

・経営コンサル
 あくまでも経営の一部分(戦略、会計、業務、システム等々)のみがその対象です。高い専門性を維持するためには分野も限定せざるを得ないということでもあります。但し経営コンサルタントが支援先企業の取締役などに就任することが稀にありますが、その際は経営全般に対する助言を行うこともあるでしょう。

(4)視点

この点に関しては、他の項目と比べてもかなりバイアスがかかった見方になってしまっているかもしれません。

・ハンズオン
 「ありたい姿」「あるべき姿」にいかに近づけていくかを軸とし、個別の戦略や戦術については仮説検証を繰り返すことが一般的です。確立されたノウハウがあるわけではないものの将来性のある産業や事業に投資し経営支援を行うのがVCの役割ですから、そうならざるをえないとも言えます。

・経営コンサル
 「システム」や「フレームワーク」ありきなことが少なくありません。経営コンサル会社自身が開発したシステムやフレームワークを持っていることもあり、支援のための手段にすぎないはずのそれらがいつの間にか目的化してしまっているのを見ることもあります。また最近は変わりつつあるようですが「論理的に正しいかどうか」がまだまだ他のことよりも優先されます。

(5)専門性

・ハンズオン
 高くはありません。ハンズオンの能力を高めるために組織的研修や訓練を行っているVCは日本ではほぼ皆無ですし、ハンズオンの内容の妥当性を組織的に検証する仕組みがあるVCも日本ではほぼ皆無ですので、良い意味でも悪い意味でもハンズオンの専門性は投資担当者次第になってしまっています。

・経営コンサル
 少なくともVCよりは圧倒的に高いことが多いです。組織的研修や訓練も充実していますし、経営支援に関する勉強量全体で見ても圧倒的です。

(6)結果責任

・ハンズオン
 経営支援の結果が、支援先企業の企業価値や株主価値を通じて、VCの損益に影響します。そういった意味で経営支援の結果責任を支援先企業と共有していると言えます。

・経営コンサル
 あくまでも業務委託契約の関係であり経営支援の結果責任を経営コンサルは負いません。もちろん、経営支援の結果が出ないと業務委託契約を更新してもらえない、評判悪化により新規契約が獲得できないなどの影響はありえます。

(7)位置づけと儲けの源泉

・ハンズオン
 VCは「経営支援を行う投資家」ですので、株式などに投資を行い、それが投資時より高い株価で売却することによる差額つまりはキャピタルゲインが儲けの源泉です。経営支援はキャピタルゲインを大きくしたり、確度を高めたりするための手段のひとつです。

・経営コンサル
 経営コンサルは支援先企業からの業務委託料などが儲けの源泉ですので、経営コンサルは目的そのものと言えます。

(8)ノウハウの開示

・ハンズオン
 支援先企業に対してという意味合いでは、VCは経営支援のノウハウを隠す必要がありませんので、必要に応じて全て開示することが一般的です。但し、開示できるほどの専門性がない、体系化がなされていないといったことはありえます。

・経営コンサル
 経営支援のノウハウそのものが経営コンサルの強みですので、全てを開示するのは難しいことも多いようです。

(9)ネットワーク・人脈

・ハンズオン
 VCのネットワークや人脈は広いことが多いです。VCの日常の活動の中で最も重視されるのは「将来有望な未上場企業を探し出してくる」ことであり、そのためにネットワークや人脈を構築することに多くの時間を割いています。

・経営コンサルティング
 VCほどネットワークや人脈を構築することに時間を割けませんので、VCよりは狭いことが一般的です。

(10)担当者の質、経営に関わった経験、実務経験など

 これはいずれも担当者次第と言えますが、組織的な研修や訓練の仕組みが脆弱なVCの方が当たり外れが多いと考えられます。実務経験に関して言うとVCの投資担当者はないことが大半です。最近は出身業界が多様になりつつありますが、業界全体で見ると新卒採用や金融機関出身者が多く、実務経験は期待できません。両業界とも、若手はやる気にあふれており、優秀で勉強熱心な人物が多いです。

以上を総括すると、VCは経営コンサルのノウハウを学ぶべきと考えますし、経営コンサルは支援先企業に対する出資機能を持つとより理想的な環境で経営支援が行えるのではないかと考えます。

また別の機会にVCの投資担当者とPEファンドの投資担当者の比較も行ってみたいと思います。

2020年8月23日日曜日

事業計画の作り方13 後継者の方向け(1) 解説の前提

今回からは、後継者の方向けに事業計画の作り方を説明していきます。初回となる今回は次回以降の解説の前提に触れておきたいと思います。

事業承継は、まず
  • 経営の承継
  • 財産・資産の承継
に分けられます。中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、経営の承継をさらに「人の承継」と「知的資産の承継」に分けていますが、理解しやすい方の分類を使っていただいて問題ありません。本シリーズは「事業計画の作り方」ですので取り扱うのは「経営(人+知的資産)の承継」の範囲です。

さて、事業承継は他に、
  • 親族内承継
  • 親族外承継
という分け方もでき、親族外承継はさらに
  • 役職員への承継(MBO、EBOなど)
  • 社外の第三者への承継(M&A、プロ経営者招聘など)
に分けることもできます。本シリーズでは「親族内承継」もしくは「役職員への承継」で会社を引き継いだ(もしくは引き継ぐ)後継者を想定読者層と考えています。

ところで後継者の方は、ある方は別の会社でビジネスパーソンとしての経験を積んだり、会社経営について学んだりしてきたかもしれません。ある方は早い段階で事業承継する会社に入社し現場経験を積んだり、後継者候補として経営の一端を担ったりしてきたかもしれません。どんな経験を積んできたとしても、いざ実際に後継者と決定してときには、やらなければならないことの多さにいい意味でも悪い意味でも驚かれているのではないでしょうか。
  • 事業は順調だが今ままでのやり方では少しずつ厳しくなってくるのは分かっており改革したいが、事業が順調なため改革の必要性の理解が得にくい。
  • 事業が厳しい状況となっており、改革の必要性ではコンセンサスがとれているが、まずは目の前の赤字や資金不足を解消させなければならない。
  • 既存事業が順調なうちに新規事業に取り組みたい。
  • これからも大切にしていきたい理念や事業もある一方、新たに取り入れたい考え方や新たに開始したい事業もあり、日々の業務もある中頭の整理も追いつかず、手も回らない。
などなど。

何から開始していけばいいか、残念ながらすべての場合に当てはまる方程式のようなものはなく、個別具体的に考えていく必要があるかと思います。このシリーズでは、以下のようなパターンを想定して解説を行っていきます。

<解説の前提としての想定>
  • 後継者は先代経営者の親族かもともと会社の役職員(つまりはM&Aやプロ経営者招聘ではない)
  • 後継者がようやく経営の意思決定を任せられ始めたタイミング
  • 既存事業は昔は大きな利益を上げていたが、現在は決して順風満帆ではない(市場は縮小傾向、売上は営業努力で何とか水平飛行、損益は若干の黒字か赤字)
  • 資金の余力はない(従業員や取引先への支払いが遅れることはないが、運転資金と返済資金でギリギリであり余裕資金は少ない)
  • 事業を推進するために必要なデータは先代経営者やベテラン役職員の頭の中にあり、可視化に取り組み始めたところ
  • 後継者はやる気も体力もあり、既存事業のテコ入れと新規事業の開始により、企業を再び成長軌道に戻したいと考えている
私が今までの何らかのかたちでコンサルをさせていただいた事業承継事例も、このようなパターンが大きな割合を占めていました。上記のような前提だけで後継者の取り組み方やコンサルの仕方が一義的に決まるわけではありません。次回以降の解説を読んでいただける後継者の方は、自分の場合はどうすべきだろうと考えながら目を通していただければ幸いです。


2020年8月10日月曜日

事業計画の作り方12 起業前の方向け(11) まとめ

「事業計画の作り方シリーズ 起業前の方向け」の具体的内容は前回で終了しました。今回はまとめとして、起業をお考えの方にお伝えしたいことを記載します。

今回のシリーズの内容は、ある地域で開催された起業セミナーで私が講師を担当させていただいた際の講義内容を、大幅に加筆修正したものです。その起業セミナーは、「講義+実践(事業計画作り)+個別相談」で構成されており、今回のシリーズはあくまでもその「講義」の部分だけです。インプットはアウトプットを伴ってこそのものですし、実際にアウトプットしてみないと個別具体的な疑問も湧いてきません。一方である程度のインプットがないと意味があるアウトプットができないという面もあります。ですので、今回のシリーズの内容は、事業計画つくりのために十分とは言えないが必要なものと言えると思います。

そういう意味もあり、スモールビジネスの起業をお考えの方にはぜひ地元で開催されている起業セミナーに参加してみることをおすすめします。また違った視点での知識や考え方のインプットもできますし、アウトプット(事業計画作成)の実践もできます。そして何よりも、起業家仲間(同期の起業家や、先輩起業家など)ができることが良いところです。起業家には同じ起業家仲間にしか分からない悩みがあります。そういうことを相談しあえる起業家仲間は本当に得難い存在です。

また、起業に向けていろいろ勉強していくうちに、起業のリスクについても理解が深まり、その結果起業することに及び腰になってしまうこともあるかもしれません。しかし、リスクをとらずして事業の成功はありえません。また、起業をすることはみなさんの夢を叶えるため手段かと思います。夢ばかり見ていてはリスクに足をすくわれかねませんし、リスクばかり見ていては夢を叶えることができません。夢とリスク、どちらか一方だけに気を取られることなく意思決定していただければと思います。

2020年8月7日金曜日

事業計画の作り方11 起業前の方向け(10) 資金調達

今回は資金調達についての説明です。資金調達を行うにあたっては、コーポレートファイナンス(企業財務)の勉強をしておくことを奨められることも多いですが、スモールビジネスの起業を考えている今の段階では難しいことには深入りしすぎず、まずは今回説明することを理解しておきましょう。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。

(5)資金調達


(A)資金調達を行うことで生じる責任について理解する
 当ブログの記事である「起業の覚悟、資金調達の責任(上)」、「起業の覚悟、資金調達の責任(下)」をぜひご一読ください。

大切なことばかりをまとめた記事なのですが、特に以下の引用箇所はとても大切です。

起業家は事業計画を示し、それを達成するために努力をすることを説明して、資金を調達します。資金提供者は、事業計画を見て、それが達成されることを期待して資金を出します。事業計画を示して資金調達する以上、大きな責任が発生することは忘れないで欲しいと思います。

この引用箇所の文章は、主に投資家や金融機関から資金調達を行うことを想定して書いたものですが、投資家や金融機関ではなく、それが家族であったり友人であったり補助金であったりしても資金調達を行う際には責任が生じることに変わりはありません。いずれの場合も、起業家に何かの期待をしているからこそ資金を出してくれたのだと思います。その期待とは金銭的なものばかりとは限りません。資金提供者の期待は何かということと、その期待に応えるための最大限の努力をする責任が生じたことを正しく理解しましょう。


(B)資金調達の選択肢について理解する
 起業前後での資金調達の方法としては、
  • 自己資金
  • 配偶者や親族からの出資金や借入金
  • 友人や知人からの出資金や借入金
が大半で、3F(Founder, Family, Friends)と呼ばれています。

「起業を考えたら貯金を始める!」というのが大原則です。あくまでも預貯金であって、株式などでの運用は含みません(株式投資などは余裕資金で行うのが原則です。将来使う予定がある資金で株式投資などを行うことはおすすめできません)。起業の後、1年以上全く売上が立たなくても暮らしていけるだけの資金を用意するか、起業前にまとまった量の仕事を受注しておく、ということも起業の心得としてよく言われます。

3Fに続くのが、
  • 公的機関からの助成金
  • 政府系金融機関からの借入金
  • クラウドファンディング
  • 創業支援ファンド(地域金融機関)からの投資資金
  • ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの投資資金
といったものです。

公的機関(国、地方自治体やその外郭団体など)からの助成金は充実している一方、種類が多く分かりくい面もありますので、窓口に行って相談してみましょう。窓口は「創業支援センター」や「中小企業振興公社」などといった名称であることが多いようです。

政府系金融機関については、日本政策金融公庫の創業支援のWebページや資料を一読しておきましょう。創業を具体的に考えたらまずは相談に行くところ、と言っても過言ではありません。

クラウドファンディングは多くの個人から資金を募る方法です。Makuakeなどが有名です。単なる資金調達というだけでなく、ファンづくりやマーケティングの一環としても活用できます。

創業支援ファンドというのは、一部の地域金融機関が運営している創業支援に特化したファンドです。そういったファンドを運営している金融機関は創業支援に熱心な金融機関とも言えます。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の活用はスモールビジネスではあまり見かけません。ベンチャーキャピタルは業として未上場企業への投資育成を行っている会社ですが、主に株式上場やM&Aでの会社売却を考えている企業が支援対象で、幅広く資金供給を行う存在ではありません。エンジェル投資家は過去に同じ起業家として成功し、その経験を活かして後輩起業家を応援する存在ですが、日本ではまだまだ数も少なく、質も玉石混交という状態です。


次回は「起業前の方向け事業計画の作り方」の最終回として、簡単なまとめを行います。

2020年8月3日月曜日

事業計画の作り方10 起業前の方向け(9) 設備資金

今回は設備資金についての説明です。そもそも事業に必要な設備とは何か、そこで必要となる資金についてどう考えておく必要があるかをみていきます。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。

(4)設備資金


(A)設備
 ソフトウェア・Web系の事業やコンサルティング事業であれば、パソコンとスマートフォンがあればひとまずは事業を行うことが可能ですが、多くの事業では「設備」が欠かせません。みなさんの事業にはどういった設備が必要になるでしょうか?以下、代表的な設備と、資金面での手当について列挙します。

・店舗
 モノを販売したり、サービスを提供したりする場所として必要です。いわゆる居抜き物件(同業他社が撤退した後の店舗をそのままに近い状態で賃借できる物件)であれば初期投資は抑えることができますが、反対にスケルトン物件に一から内装外装を行うのであれば大きな額の資金が必要です。

・備品
 業務を行う際の道具などとして使用するもの全般です。飲食店であれば厨房機器、調理道具やホール備品などが考えられます。サービス業でもお客様を迎えるためのスペースに置く必要がある椅子やデスクなどが考えられます。備品も居抜き物件であれば安価に入手できるかもしれませんが、一から購入となると大きな額の資金が必要なこともあります。中古品の活用も検討しましょう。

・事務所
 役職員(特に内勤者)が働く場所です。物件を賃借すると毎月固定費としての地代家賃が発生します。入居前にはまとまった額の敷金も必要でしょう。コロナ禍の前ですとコワーキングスペースやシェアオフィスを借りるという手段をとる企業も増えていました。初期費用も毎月の家賃(会費という名目の場合もあります)も通常の物件を賃借するよりも低額ですませることができます。今後、在宅勤務が根付いていくのであればそもそも事務所は必要かということも考えておくべきです。

・工場
 モノを製造する場所です。当シリーズで想定しているスモールビジネスでは製造業は極めて少ないと考えられますが、もしモノの製造販売をお考えの場合、製造を外注する方法も検討しましょう。

・車両
 製品を運んだり、顧客を訪問したりする際に使用します。事業を推進する場面を想像して、車両の稼働率がどのくらいになるかは事前に計算しておきましょう。また、たとえば営業活動に使用する場合でも、本当に訪問営業が必要か、インサイドセールスの活用が可能ではないかといったことを考えるなど、車両の必要性はしっかりと考えておいた方が良いです。営業活動中の交通事故というリスクも無視はできません。

どの設備であれ、イニシャルコスト(導入時に発生する費用)だけでなく、ランニングコスト(定期・不定期に発生する費用)が必要となります。一部の設備ではランニングコストの考慮をを忘れてしまうことも少なくはありません。見落としがないようにしましょう。

近年は、「持たざる経営」というキーワードで、「設備を持たない」選択肢も増えています。上記のいずれの設備も購入する場合は高額となりますので、レンタル・リースやシェアリングサービスを利用することも合わせて検討しましょう。

(B)固定費と変動費
 設備資金の解説の中で、レンタル、リースやシェアリングサービスについて触れましたが、レンタルやリースを活用すると、イニシャルコストが必要がなくなるというメリットがある一方、ランニングコストであるレンタル料やリース代を支払う必要がでます。こういった料金は、売上や利益の金額に関係なく支払う必要があるため「固定費」と呼ばれます。地代家賃を考えると分かりやすいですが、店舗を借りて家賃を支払う約束をしている場合、一般的には売上がなくても家賃は支払わなければいけません。

反対に、営業活動や売上に比例する費用を「変動費」と呼びます。店舗売上に対する比率として家賃を支払う場合、必要なときだけ自動車を借りるカー・シェアリングなどが典型例です。

会社の経営にとって、固定費と変動費、どちらの費用がいいかというのはシチュエーションによって異なるため正解はありません。しかしスモールビジネスの場合はできるだけ固定費を抑えることが大切です。スモールビジネスは外部環境・内部環境の影響を受けやすく、何かの拍子に売上が大きく減少することを覚悟しておく必要があります。そのときに、売上に関係なく発生する固定費が多いと途端に資金不足に陥ってしまう可能性があります。

設備が必要となった際には、
  • 購入する方がいいか、借りる方がいいか。
  • 固定費を抑えたり、変動費化したりする方法はないか。
を必ず検討しましょう。

次回は「資金調達」について説明を行います。

2020年8月2日日曜日

事業計画の作り方9 起業前の方向け(8) 運転資金

今回は運転資金についての説明です。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。

(3)運転資金


運転資金とは日々の事業を継続していくために必要となるお金のことです。今回説明するように事業を行う場面では、個人の日常生活とはお金の動きが「タイミング」という面で大きく異なります。そのため運転資金と呼ばれる手元に日頃から用意しておく資金が必要となります。この運転資金についてよく理解した上で、日々の事業の中で適切に対応しておかないと、資金繰りに追われて事業に集中できない状態に陥ってしまう可能性があります。資金繰りは経営者の仕事だと言われることがあります。しかしそれは資金繰りに追われる状態を是としたものではなく、そもそも資金繰り対応に追われなくて良い状態を維持しておくことこそが経営者の仕事であるという意味合いです。

本シリーズでは、
運転資金=日々の事業を継続していくために必要となる(使う予定のある)お金
手元資金=社内の金庫及び金融機関口座に預けてある資金の内、いざとなったらすぐに使える資金
という定義で進めていきます。

(A)支払いと受け取り
 前述のとおり、事業上のお金の流れと個人の日常生活ではお金の動くタイミングが大きく異なります。まず最初に理解しておく必要があるのが「支払いと受け取りのタイミング」です。事業では自社がお金を受け取るよりも、お金を支払うタイミングが先行することが一般的です。このことは、販売よりも仕入が先に来ることを考えれば理解できます。

例)10/1 果物100個を単価90円で仕入れた。 
    仕入代金の支払いは、仕入の30日後という約束となっている。
  10/5 その果物100個を単価100円で、地元のパフェ店に販売した。 
    販売した代金は、翌月末に支払を受けることとなっている。
  10/31 仕入代金9,000円を支払った。
  11/30 販売代金10,000円を受け取った。

この例の場合、9,000円で仕入れたものを10,000円で売っているのですから利益は1,000円あがっています。しかし、仕入代金9,000円の支払いが、販売代金の受け取りより先に来ていることに注目してください。手元に予め資金を用意しておかないと仕入代金9,000円の支払いができませんし、11月は月末まで手元に資金がない状態となってしまいます。

一方でこれが掛取引(後日まとめてお金の受け渡しを行うかたちの取引)ではなく、現金取引だったとしたらどうでしょう?その場合でも、やはり仕入代金の支払いが、販売代金の受け取りより先に来ることが分かります。やはり予め手元に資金が必要です。

上記の例のように利益があがっているにも関わらず、手元資金が足りなくなってしまい事業が継続できなくなることを「黒字倒産」と呼びます。

(B)先行する経費
 さらには、販売した代金を受け取る前にも、事業としては経費が発生しています。先ほどの例でいうと、11/30に販売代金を受け取る前にも、

 10/25 従業員への給料の支払い
 10/27 店舗家賃の支払い

といった支払いが必要だと考えてみてください。また、他にも、取引先が倒産して支払を受けられなくなる、取引先が単純ミスで代金の振込を忘れる、などのトラブルがあるかもしれません。 


上記(A)(B)で出てきた、
  • 支払いと受け取りのタイムラグを埋めるための手元資金
  • 先行する経費の支払いに当てるための手元資金
  • トラブルに備えるための手元資金
を合わせて「運転資金」と呼びます。

事業内容によっても異なりますが、事業が軌道に乗ってきた後でも、少なくとも3か月程度の間売上がなくとも資金に困らないくらいの手元資金が必要と言われています(創業時にはさらに多くの資金があることが望まれます。「資金調達」の回で説明します)。一般的に、飲食店のようないわゆる日銭商売(ひぜにしょうばい)と呼ばれる業種では、掛取引主体の業種よりも少ない運転資金で事業運営が可能と言われていますが、2020年のコロナ禍の中での飲食店の苦境を見ると、どんな業種でも手元には通常必要となる運転資金以上の資金を、少しでも多く用意しておくことが必要な時期があることも分かります(Cash is King.)。

本シリーズを読んでくださっている皆さんは、「事業計画の作り方3 起業前の方向け(2) 営業循環図」で営業循環図、つまりは取引の流れを図で示す方法をすでに学んでいますので、そこにさらにお金の流れるタイミングを記入してみましょう。さらには「事業計画の作り方8 起業前の方向け(7) 売上高・原価、経費」で考えた発生する経費の支払いタイミングを調べてみましょう。その際、売上に関係なく発生する固定費についても忘れずにお願いします。

運転資金や資金繰りについてより具体的に考えたり、予測したりしたい方は、次のステップとして「資金繰り表」を活用されることをおすすめします。

 資金繰り表の例:日本政策金融公庫Webページ(ZIPファイル)


次回は「設備資金」から説明を行います。

2020年7月26日日曜日

事業計画の作り方8 起業前の方向け(7) 売上高・原価、経費

今回から数値計画の説明に入ります。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。

2.数値計画


「数値計画」では、できるだけ簿記や会計の知識がない方でも分かるように一定程度単純化して説明します。そのため会計の決まりごととは若干異なる箇所もありますが、スモールビジネスの事業計画を作る段階では特に問題ありません(現実的には「運転資金・資金繰り」ということを深く理解する必要がありますが、その点に関しては次回以降説明します)。

会計や簿記についてこの機会に少し触れておきますと、それらは経営の共通言語ですので、経営者が早い段階で一定の知識を身に付けておくことに越したことはありません。簿記の勉強をしたり、良い税理士の先生を見つけて「経営者に必要な簿記・会計の知識」という視点で教わったりしていくことを強くおすすめします。その際、「経営者に必要な」という言葉を絶対に忘れないようにもしてください。ここで経営者に求められるのは簿記や会計の必要以上に詳細な知識ではなく、管理会計資料や財務会計資料などから情報を読み取り、事業の意思決定をする力です。自社の数字に対する理解を深めるために経理の業務を一時的に経営者が行うことはありえますが、それでもできるだけ早く経理担当者などに任せることが望まれます。

(1)売上高・原価


(A)単価×個数=売上・原価
 このシリーズでは何度か、数字を分析する際は数字を分解しようというお話をしてきました。たとえば「売上は販売単価×個数に分解できる」といった具合です。売上計画を考える際はその逆で「単価と個数を掛け合わせたものが売上である」と考えます。「販売単価×個数=売上」ということですね。原価計画も同様で「仕入単価×個数=原価」ということになります。「分析は割り算(分解)、計画は掛け算」と覚えておくと良いです。

ところで、売上は商品を販売するビジネスでも、サービスを提供するビジネスでも分かりやすいですが、原価はどうでしょう。原価は「売上をあげるためにかかった直接的なコスト」を意味します。商品を販売するビジネスの場合、その販売する商品を仕入れる価格が原価と言えます。一方でサービスを提供するビジネスの場合、数値計画作成上は原価は外注費だけと考えましょう。会計の決まりごととしては、本当であれば原価と考えなければならないコストもあるのですが、そこを厳密にやってしまうととても複雑になってしまうので、今の段階では将来の宿題としておきましょう。原価と考えるべきコストを原価としておかなくとも、後で説明する「経費」にその分計上されますので、実務上の問題も特にはありません。

(B)販路ごと
 売上計画については「販路ごと」にも考えておく必要があります。

具体的な場面を考えると分かりやすいのですが、全く同じ商品が店頭とWeb通販では異なる値段で販売されていることは珍しくありません。店頭とWeb通販では必要となる地代家賃などの水準が異なります。店舗はお客様に来店していただけるよう良い立地=高い地代家賃が必要となりますが、Web通販で必要となる倉庫やコールセンターは店舗ほど良い立地である必要はなく、地代家賃を低く抑えることができます。そういった理由で店頭価格よりもWeb通販の方が安い値段であったりします。

また、メーカー直販サイトと小売店の店頭価格も異なる値段であることもあります。小売店での店頭価格は製造にかかった費用に加え、メーカーの利益、卸売業者の利益、小売店の利益などが上乗せされている一方、メーカー直販サイトでは卸売業者や小売店も必要ないため、その利益を価格に上乗せする必要がないからです。

数値計画を考える際にも同様に販路ごとに違う価格設定をする可能性を考えておきましょう。例えば、原価70円で、消費者価格は100円の商品の場合、

・直接販売(例えば店頭販売)
 単価100円 × 10個 = 1,000円

代理店販売(代理店が店頭販売するような場合)
 単価80円 × 20個 = 1,600円
 代理店側は単価100円では買ってくれないでしょう。消費者価格100円の商品なので、代理店は単価100円で仕入れて消費者価格100円で販売しても利益は出ませんし、100円より高い値段では今度は消費者が買ってくれません。

Web販売(自社サイトで販売する場合)
 単価90円 × 30個 = 2,700円
 Web販売も直接販売と言えますが、自社店舗の店頭価格と同じ価格にする必要はありません。販売にかかるコストが少ない、価格の比較がしやすいので他社よりも安くしないと売れないといった理由で店頭価格と異なる価格設定をすることもありえます。
 
一方で、原価は「仕入価格」ですので、上記販路の違いの影響は受けないことが一般的です。

(2)経費


ここで言う経費は、会計上は「販売費及び一般管理費(販管費)」と呼ばれるものと、本来であれば原価と考えなければならないものの内、簡便さ優先のため原価に計上しなかった項目を合わせたものです。
実際のところ、「これから事業を開始する」前にすべてを漏れなく予想・計画することは簡単ではありません。一方で、予想していなかった経費が発生した場合、売上が計画どおりでも、結果として赤字となったり、資金不足となったりする恐れがありますので、予想・計画をしっかりと行うことはとても重要です。

予想・計画をより適切に行う方法の例は以下のとおりです。

(A)主な経費一覧から自社にもかかりそうなものを探す
 主な経費一覧は以下のとおりです。
役員報酬、給与手当・労務費、法定福利費(社会保険料など)、福利厚生費、通勤交通費、営業交通費、通信費、地代家賃、業務委託費、水道光熱費、保険料、交際費、広告宣伝費、販売促進費、販売手数料、荷造運送費、減価償却費など
それぞれの経費の詳細をWebなどで調べてみると良いです。

(B)変動費と固定費に分けて考える
 経費の分類の仕方にはいろいろありますが、覚えておいた方が良い分類の仕方として、変動費と固定費という考え方があります。売上に比例にして発生する費用が変動費、売上と関係なく発生する費用が固定費です。この分類に沿って、自社にどういった経費がかかるのか考えてみましょう。

(C)他社・他事業を参考にする
 自分の事業と類似の事業を行っている事例を探し、どういう経費がかかっているかを知り、参考にしましょう。全ての経費を網羅するような情報は少ないかもしれませんが、同業他社の事例の情報収集の中で、どういった経費が発生しているのかにも目を光らせておくことをおすすめします。多くの会社を見ている税理士の先生や金融機関の担当者に相談してみるのもいいかもしれません。

(D)想像力を高める
 事業上の行動や商品・サービスの流れや提供場面などの具体的場面を想像しましょう。想像が具体的であればあるほど、そこで発生するであろう経費も具体的に気がつくことができます。


次回は「運転資金」についての説明から開始します。

2020年7月23日木曜日

事業計画の作り方7 起業前の方向け(6) 事業の重要指数

今回は「事業の重要指数」について説明していきます。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。

(8)事業の重要指数


このブログでは重要指数は一般的に「KPI」と呼ばれるものとかなり近い意味で使用しています。一般にKPIは「企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標」と定義されますが、日本語化した「重要指数」はより分かりやすく単純に「売上利益の先行指数」とお考えください。このシリーズが想定しているスモールビジネスの場面では、経営=営業と言っていいほど、日々の営業現場で何を行うかが大切です(急成長を目指す企業や大企業でも当然大切ですが、経営に占める営業の重要性はスモールビジネスの方が高いことが多いです)。そして売上利益は何もせずにあがるものではなく、何かしらの事前の行動が必要です。その事前の行動の中で日々追いかける数字として設定するのが重要指数です。そのため「売上利益の先行指数」という表現をしています。定義の議論だけではイメージが湧きにくいので重要指数の例を見ていきましょう。


(A)売上を分解した数字

 最も基本となるものです。以前の記事「事業計画の作り方1 枠組み、全体像、基本的な考え方」のギャップ分析の説明の中で、分析には数字の分解が重要である旨の説明をしました。重要指数でも同様で、売上は「個数×単価」のように掛け算で計算されるものであり、その裏を返せば売上を分解した数字こそが売上をつくるための重要な数字、つまりは重要指数ということになります。
典型的なものとしては「販売個数、サービス提供回数、会員数、単価」などが挙げられます。


(B)売上を作り出す前提となる数字

 営業活動は当然ながら、toCであろうとtoBであろうと、直販であろうと代理店販売であろうとWeb販売であろうと、いきなりお客さんに買ってくださいというのではなく、いくつかの営業のステップを踏んでいきます。toCであれば、消費者に気づいてもらい、覚えてもらって、好きになってもらい、より深く知ってもらって、そして選んでもらう=買ってもらうといったステップを踏みます。toBであれば先方担当者に説明し、上席にプレゼンする機会をもらったり、稟議を社内であげてもらったり、決済者に最終プレゼンをしたりするステップを踏んで、購買の意思決定をしてもらうというステップを踏みます。Webでの販売であれば、広告を目にしてもらったり、自社サイトにアクセスしてもらったり、自社サイトのコンテンツを見て購買意欲を高めてもらったりするステップを踏むことになります。営業活動がそういったステップに分解できるということは、それぞれの回数などを目標値にしたり測定したりすることで、売上利益につながる活動を行っているかを知ることができるため、そういった数字も重要指数と言えます。お客様に最初に接するところから、購買・入金に至るまでの流れをステップとして可視化して、どのステップが重要かを考え、重要指数として設定しましょう。


(C)確率を示す数字

 上記(B)とも密接に関係するのですが、営業ステップごとの回数だけでなく、ある営業ステップから次の営業ステップに進む確率を重要指数として捉えることも大切です。たとえば、「接点を持った顧客の内、次回訪問や販売につながる率」が挙げられます。ある営業担当者はその率が高く、他の営業担当者はその率が低いということが生じている場合、そこには改善の余地があるかもしれませんし、そもそもリソースが限られているスモールビジネスの場合、ただ闇雲なだけの営業活動は実態にそぐいません。他には「上席プレゼンへ至る率」といったことも挙げられます。ただ先方の窓口担当者に頼るだけの場合と、先方担当者がその上席を説得する材料をこちら側で用意する場合とではその率も変わってくるでしょう。Web販売であれば「Webサイトへのアクセス数の内、購入につながる率」といったかたちで率を見ていくことが可能です。アクセス数が多いのに購入に至らないというのであれば、Webサイトの内容に何か要改善点があるのかもしれません。

また、営業ステップとは別の観点でも確率が重要となることがあります。分かりやすい例では会員ビジネスの場合の「会員の内、稼働している会員の率」が挙げられます。会員となってもらってもさらにそこから購入してもらわないことには売上があがらないモデルの場合は、如何に購入してもらう率=稼働率を高めるかが重要です。サブスクリプションモデルのように毎月一定の会費などが発生する場合でも、休会=会費が発生しない会員が増えてしまうといったことが生じるかもしれません。そこでも如何に休会から復帰してもらい休会率(稼働率の裏返し)を下げるかが重要となります。他には継続率や退会率なども重要指数と考えることができますね。


これらの重要指数は先行する同業他社が公開している場合などを除き、自分で事業をやりながら測定していくことが先に必要となることも多いですが、どういった指数を測定しておき、次年度から目標値として設定するかなどを予め考えておかないと長い時間を無駄にしてしまうこととなります。事業計画を策定する際に、大切な項目のひとつとしてぜひ重要指数も考えてみてください。

次回からは数値計画策定の方法に入っていきます。

2020年7月19日日曜日

M&Aの補助金「経営資源引継ぎ補助金」

すでにかなり注目されていますが、中小企業庁が新たに中小企業等のM&Aを支援する補助金の制度を設けました。「経営資源引継ぎ補助金」という名称です。

ここ数年は「法人版事業承継税制」の強化、「個人版事業承継税制」の創設など、主に親族内承継を促進する制度の整備が進んでいましたが、2020年に入ってからは経済産業省による「中小M&Aガイドライン」の策定、中小企業基盤整備機構による「経営力強化支援ファンド出資制度」など親族外承継を促進する制度の整備も進んできました。今回の補助金も親族外承継促進の一環で、M&Aに伴って発生する費用を補助する内容となっています。

制度の詳細についてはすでに特設サイトも開設されており、とても細かく説明してありますので、そちらをご覧いただくのが良いかと思いますが、まずは制度の概要を知りたいという方向けに以下、重要ポイントのみ箇条書きでご紹介します。端的にご紹介するために端折ったり簡略化したりしていますので、詳細は必ず特設サイトやそこにアップされている公募要領(PDF)をご覧いただくか、補助金事務局や専門家にご相談ください。

以下、本補助金の主なポイントです。

  1. 本補助金は、中小企業等の経営資源の引継ぎに際して必要となる経費の一部を補助するもの。つまりは中小企業等のM&Aに要する費用の一部が補助されるというもの。
  2. 本補助金の目的は、中小企業等に対してM&Aに着手することを促す支援と、M&Aを成約させることを促す支援とを行うことを通じて、新陳代謝を加速し経済活性化を実現すること。
  3. 本補助金には、その目的を達成するために買い手支援型と売り手支援型とが用意されている。
  4. 買い手支援型は、M&Aの後にシナジーを活かした経営革新等を行うこと、地域経済全体を牽引する事業を行うことが要件とされている。
  5. 売り手支援型は、地域経済全体を牽引する事業が第三者(つまりは買い手)により継続されることが見込まれることを要件としている。
  6. 補助対象者は中小企業と個人事業主。開業医、会社法上の会社である農業法人、個人農家は対象となるが、医療法人や社会福祉法人などは対象とならない。また、みなし大企業や単なるグループ内再編も対象とはならない。
  7. 補助期間は、原則として補助金の交付決定日から最長で2021年1月15日まで。
  8. 補助率は2/3で、補助上限額はM&Aに着手することを促す支援においては100万円、M&Aを成約させることを促す支援においては650万円(但し、廃業を伴わない場合は200万円)。
  9. 事業の性質上、補助金に採択された場合でも社名などの情報が公開されることはない。
  10. M&Aを成約させることを促す支援については、申請時に相手方が具体化している方が採択率が高い。
  11. 補助される主な経費は、士業等専門家への謝金、トップ面談などで発生する交通費、企業概要書作成などの外注費、M&A専門会社や専門家への委託費(着手金、成功報酬、株価算定費用や不動産鑑定費用など)やシステム利用料(M&Aのマッチングプラットフォーム利用料)。廃業を伴う場合は廃業費。
  12. 最終的にM&Aが成立しない場合でも補助の対象となる(例えばDDの結果、M&Aを断念した場合、そのDD費用は補助の対象となる)。

もともとM&Aを選択肢として考えていた中小企業等にとっては検討を前進・具体化させるきっかけとして良い制度かと考えます。一方で、そもそもM&Aを検討していなかった中小企業等が、補助金があるからと拙速にM&Aに向けて動き出すのはおすすめできません。

M&A、事業承継や本補助金についてご相談されたい方は、本ブログ上部のContactからお問い合わせください。

2020年7月12日日曜日

事業計画の作り方6 起業前の方向け(5) 組織・チーム、社外パートナー

今回は「組織・チーム、社外パートナー」について説明します。組織・チームは主に社内の仲間の話、社外パートナーは文字どおり社外の仲間の話です。

事業は、様々な機能が一体となって運営されています。どんなに優秀な起業家でも、その全てを自分だけで行うことはできません。また、もしできたとしても、時間の制約がある以上、どれもいまいちな結果となってしまいます。起業家は優秀であっても万能ではありません。ぜひチームとしてみんなの力を結集できるようになりましょう。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。


(7)組織・チーム、パートナー



(A)事業に必要な機能

最初に、事業を運営するために必要な様々な機能とは何かを知っておきましょう。一般的には以下のような機能が必要と考えられます。簡単ではありますが、それぞれの言葉が何を意味するかも合わせて記載します。

・マネジメント
 直訳すると「管理」ですが、ここでは「経営そのもの」とお考えください。会社の目標などを設定し、目標達成に向けた仕組みを作り運営していくこと全体を意味します。

・経営企画
 企業によって経営者の参謀的位置付けであったり、秘書的な位置付けであったり、部門調整機関であったり、特定プロジェクト対応組織であったりと様々ですが、いずれにせよ経営者や経営陣を直接サポートする位置付けの機能です。スモールビジネスでは設けられないことも多いです。

・経理財務
 経理は財務会計資料や管理会計資料を適切に作成し、会社の状況を数字で明らかにする役割を担っています。財務は資金の調達・運用などを行う機能です。スモールビジネスの場合ですと資金繰り、入出金、金融機関対応などが実際の主な活動です。

・総務(庶務、法務、広報)
 総務という機能の範囲はとても広く、他の機能に含まれないものは全て総務が担当する、という企業も多くあります。ここでは法務と広報も含めていますが、これらも本来は専門性が高く重要であるため、企業規模が大きくなると総務とは別の独立した機能と考える必要が出てきます。

・人事労務(採用、給与計算、人事評価)
 企業は人なり、というように事業運営にあたって人に関することはとても重要です。「人事」は人の採用、教育、評価などが主な役割です。「労務」は勤怠管理や給与計算などが主な役割です。スモールビジネスですと「人事」は経営者自身の仕事であることも少なくありません。

・企画、マーケティング、営業、顧客管理、店舗運営
 企画は製品やサービスの企画などを意味します。マーケティングは本来は 「顧客やクライアント、パートナー、さらには広く社会一般にとって価値のあるオファリングスを創造・伝達・提供・交換するための活動とそれに関わる組織・機関、および一連のプロセスのことを指す」(アメリカマーケティング協会)といったようにかなり幅広い意味合いなのですが、実際には営業企画や市場調査、販売方法の検討などかなり狭い意味合いで使われています。

ここまでに挙げた機能はどの業種でも必要となります。

他には例えば製造業であれば「製造、購買・仕入、品質管理、研究開発」なども必要と考えられますが、本シリーズで想定している読者の方々の中に今から製造業を立ち上げようと考えていらっしゃる方は少ないと考えられますのでここでは割愛します。


(B)事業に必要なプレイヤー

次に、事業を運営するために必要なプレイヤー=登場人物を考えてみましょう。

・経営者、経営陣
・自社雇用の従業員(フルタイム、パートタイムいずれも含む)
・外部人財(専門家、顧問、フリーランスなど)
・デジタルツール

ここでは外部人財やデジタルツールの活用がここ数年で大きく注目されているテーマです。

外部人財の活用では、従来の専門家(たとえば士業専門家)だけではなく、大手企業での経験豊富な人財を顧問として招聘したり、専門的スキルを保有しているフリーランスの方を一時的にチームに迎えたりとしたりすることが注目されています。「人財=自社雇用」が当たり前ではなくなったということですね。顧問活用についてはパーソルキャリア社のWebサイトが分かりやすいのでご参照ください。また、フリーランスの活用については経済産業省がレポートを出していますので、そちらもご参照ください。

デジタルツールでは例えば、RPA、MA、SFA、CRM、グループウェアといった言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。それらを活用すると、従来は手作業で行っていた作業がかなりの程度自動化できるようになっていたり、あたかも書くことが目的化していた営業日報がデジタル化や可視化することで営業力強化の貴重なツールになったり、従来は紙と口頭で行っていた情報共有がWebで完結したりします。費用面においてもSaaSモデルのものですと、専任の人財を雇用するよりも安く利用できることが多いようです。


(C)どの機能を誰が担うのが望ましいか

 そして、以下のことも整理します。
・経営者・起業家自身ができること、できないこと
・経営者・起業家自身がやるべきこと、人に任せるべき
・直接雇用している人財に任せるべきか、一時的に仲間を募って任せるべきか

 自社、自分の事業の強みに直結する業務は経営者自身か直接雇用している人財に任せるべきでしょう。そうではない業務はそこを内製化しても自社の強みにはつながらない可能性が高いので、専門家やフリーランスの方などに任せてしまった方がお互いの強みに集中できて効率的だと考えられます。


(D)どのようか価値観を持った仲間を、どのように募るか

 説明の順番としては最後になりましたが、これが一番重要です。ほとんどの場合、事業立ち上げ直後は少数精鋭で事業を運営する必要があります。スモールビジネスであれば、その後の事業運営も少数の仲間と行っていくことになるでしょう。そういった際に、どのような価値観を持った仲間を募るかはとても重要です。たとえば社会貢献重視の事業運営をしたいと経営者が考えていても、儲けしか考えないメンバーがいた場合は経営者が望みとは異なる言動をとるかもしれません。仮説検証・試行錯誤型で事業の可能性を開こうと考えている従業員がいても、失敗を過度に恐れる経営者であれば、その従業員のことを適切に評価できないかもしれません。そうならないよう、自社でこの事業に関わる仲間は経営者も含め、何々の価値観を共有できる人物であること、といったこと考えておく必要があります。

また、そういった仲間をどうやって募るかも考えておきましょう。待ちの姿勢ではほぼ間違いなく良い出会いはありません。

次回は「事業の重要指数」について説明します。

2020年7月4日土曜日

ローマ人の物語5 ユリウス・カエサル ルビコン以後

塩野七生さんの「ローマ人の物語」について。
いよいよカエサルがルビコン川を越えて旧体制との内戦に突入します。有名な「犀は投げられた」とカエサルが言ったといわれている場面です。ちなみにルビコン川は当時、ローマ本国と属州の境と定められていて、属州総督であったカエサルが軍団を率いてルビコンを越えることは国法を犯すことになり、そのことは「古いローマ」への反逆、内乱、もっと言えば、共和政から帝政(実際に帝政の形式が整ったのはカエサル没後)への第一歩であったことから、「ルビコン川」が象徴的に取り扱われています。

ローマ人の物語5 ユリウス・カエサル ルビコン以後

  1. 人間は、気落ちしているときにお前の責任ではないと言われると、ついほっとして、そうなんだ、おれの責任ではなかったのだ、と思ってしまうものである。こう思ってしまうと、再起に必要なエネルギーを自己生産することが困難になる。
  2. 戦闘は激動なのだ。ゆえに戦場では、すべてが激動的に成されねばならない。(アレクサンドロス)
  3. 孤独は、創造を業とする者には、神が創造の才能を与えた代償とでも考えたのかと思うほどに、一生ついてまわる宿命である。
  4. 宗教は、それを信じない人々に対しては、「行動原則の正し手」とはなりえない。哲学は、それを理解できるだけの知力のない人々に対しては、影響力をふるえない。(中略)だが法律はちがう。法律とは、宗教を異にし哲学に無関心な人々でも、人間社会に生きていくのに必要なルールであるからだ。
  5. 自分にある種の才能が欠けていてもそれ自体では不利ではなく、欠けている才能を代行できる者との協力体制さえ確立すればよい(以下略)
  6. 戦士で富はつくれるが、富では戦士はつくれない。
引用元「ローマ人の物語5 ユリウス・カエサル ルビコン以後

(1)そう考えたカエサルは、ある戦いの敗戦の責任を指揮官である自分ではなく、兵士にあると明言したそうです。その結果兵士達は奮起し、次の戦いに勝利をもたらしました。一般的には会社の業績悪化の責任はその経営者にあると考えられています。たとえ問題がある従業員がいたとしても、そういう状態を放置していたことが経営者の責任であるからです。そういう考えが主流の中、過去には日本のある大手企業では経営者が「働かない社員が悪い」と発言し、無責任な経営者の代表格のような言われ方をしていました。その経営者にカエサルのような深い考えがあったかは分かりません。おそらく無かったでしょう。たとえ有ったとしても、兵士の奮起を呼び起こしたカエサルと、その経営者では組織の構成員(従業員や兵士など)からの信頼や尊敬の程度が大きく異なっていた結果、一方のカエサルは偉大な功績を残し、もう一方のその経営者は批判されることになったと考えられます(ただし、世間一般からの反発は新聞等で大きく取り上げられましたが、社内での反応が実際にどうだったかは私には分かりません)。歴史上の偉人の考え・行動・発言は大変勉強になりますが、上記の事例は、歴史上の教訓も使う場面や環境を間違うと全く違った結果をもたらす好事例といえます。

(2)スタートアップの経営は激動です。新規事業の立ち上げも激動でしょう。であれば、その全てが激動的に行わなければ結果につながらないのだと思います。

(3)経営者は孤独と言いますが、何かを創る人々に共通することなのでしょうか。

(4)この一文でローマで法律が発展し、その後の世界史に大きな影響を与えた理由のひとつが良く分かります。ローマという国家の特徴として、その構成員の多様性が挙げられます。そしてその多様性を支えたのが法律という制度と寛容さだと言われています。多様性という言葉は少し前から経営の重要キーワードのひとつでもありますがそれを実現して企業価値を向上させることに苦戦している企業も多いようです。ローマの歴史を学ぶことはその解決の糸口になるかもしれません。

(5)スタートアップの経営者は経営に必要な全ての能力を兼ね備えている必要はなく、営業が苦手なら営業が出来る人財を、技術が苦手なら技術が分かる人財を活かす能力、またそういった人財を魅了する能力があれば十分なのだ、と言われています。また、社内で一番業務経験が豊富な経営者の存在が後継者が育ちにくい主因となってしまい事業承継の妨げとなるという事例も少なくありません。そういったことから考えると、組織のトップは万能である必要はないというだけではなく、万能と見られてはならないということなのかもしれません。

(6)同様に、スタートアップの仲間はキャッシュを生み出せるが、キャッシュでは本当の仲間は得られない、ということですね。


2020年6月29日月曜日

事業計画の作り方5 起業前の方向け(4) 営業、競合・代替品

今回は「顧客」にどのように到達してどのようにモノやサービスを購入してもらうのかということを考える営業と、「顧客」から見た場合に他の選択肢となる競合・代替品について説明します。営業については本シリーズとは別に「スタートアップにとっての営業」という記事もアップしていますので、そちらも合わせてご覧ください。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。

前回説明した「顧客との関係」との違いがやや分かりにくいですが、「顧客との関係」がサービスの提供場面、「営業」は文字通り販売の場面、と考えると区別が分かりやすくなります。

(5)営業


本シリーズで想定しているスモールビジネスの場合、販売の場面で顧客に到達するための方法としては、

  • 個人営業 or 法人営業
  • 直接販売 or 代理店販売or Web販売
  • プッシュ(積極営業)型 or プル(店舗)型
  • 他力(提携先)活用、人脈活用

があり、提供するモノ・サービスに応じた選択と組み合わせが必要です。例えば、
「法人営業、直接販売型で、プッシュ型、人脈活用」という組み合わせであれば、リスト化した見込み顧客に他社・他者を介さずに自社側から積極的にアプローチする。見込み顧客リストは人脈を可視化したものを活用する。
といった具合です。最近では多くの広告宣伝費を投入し見込み顧客リストを作ったり、外回り営業ではなくインサイドセールスと呼ばれる営業のフローをWeb上で完結させようとする方法が一般的になってきたりなどのトレンドもありますが、多額の広告宣伝費を投じるビジネスモデルは本シリーズで想定しているスモールビジネスにはそぐいませんし、インサイドセールスは上記方法をより具体化したものであり、矛盾したりするものではありません。

自分の事業にとってどのような営業方法の組み合わせが適切かを考えた後、次には選択した方法ごとに、それを実現させるために必要な事項を考える必要があります。

・直接販売+プッシュ型
 この組み合わせの場合先程も触れたとおり、見込み顧客リストの作成方法を考える必要があります。法人営業であれば探せば自分がアプローチしたい属性の企業リストが見つかることもあります。個人の場合はきっと簡単ではありません。Webを活用したり、昔ながらのチラシ配布→無料体験→リスト化などの方法をとったりします。また、見込み顧客リストができても実際にアプローチを行う営業部隊の構築が必要です。目指す売上規模によっては最初は経営者のみで営業を行うこともありますが、いずれ営業専任者が必要となるでしょう。どういった経験を持った人物を採用するか、営業の成績をどう評価しどう報いるのか、営業担当者は日々どういった数字を追いかけ行動するのか、などを考える必要があります。

・代理店販売→代理店開拓方法、代理店稼働率向上方法
 代理店を活用する場合でも、そもそもどういった存在が代理店に相応しいか、そしてどうやって開拓するか、代理店契約締結後にどうやって代理店に動いてもらうかなどを考える必要があります。

・Web販売→広告の出し方 等
 Webでも同様です。販売サイトをただ開設しただけでは売上はあがりません。どのように販売サイトに来てもらうか、販売サイトを見るだけではなくいかに購入してもらうか、などを考える必要があります。Webの場合、他の販売方法よりも見込み顧客の動きを数字で捉えやすい面があるので、数字を見ながらの試行錯誤も重要です。

(6)競合・代替品


文字通り、自社の事業の競争相手になる存在や、自社の製品やサービスの代わりとなりうる他社の製品やサービスを意味します。

競合と代替品の区別は今はあまり深く考える必要はありません。後ほど説明するように自社の事業の位置付けをどう捉えるかによって変わってくる相対的な違いだからです。自社を鉄道事業と捉えている企業から見ると他の鉄道会社が競合で、航空会社や自動車は代替品に相当しますが、自社を鉄道会社ではなく顧客運送業と捉えると航空会社は代替品ではなく競合に相当するようになる、といった具合で相対的な違いしかありません。

競合・代替品について考えるとき、調べるときは以下の点が重要です。

  • 競合・代替品が存在しないという発想は捨てる。
  • 競合・代替品か否かは顧客の視点で考える(製品やサービスレベルではなく、提供価値のレベルで考える)。

記事「起業の覚悟、資金調達の責任(上)」の「情報収集は必死に行いましたか? その情報分析は適切ですか?」の項で競合分析の重要性について説明していますので、そこから以下引用します。
次の2点は絶対に忘れないで欲しいと思います。 
ひとつめは「競合企業は必ず存在する」ということ。ふたつめは「競合か否かは必ず顧客目線で考える」ということです。 
競合がいない、と言ってしまうのは傲慢であり、かつ情報の軽視といえます。冷静に考えれば、数十億人いる人類の中で、「自分と同じことを考えている人は他には存在しない」と考えることはおかしいと気がつくはずです。自分が唯一無二の天才である可能性と、自分と同等かそれ以上の頭の良さをもった人が世界の中に一人以上いる可能性、それを比べても分かるはずです。また、「自分と同じ技術を持つ人は他にはいない」というのも、事業として考えた場合は、誤った情報分析といえます。誤解を恐れず言えば、お客様から見た場合、自分のニーズが満たされるのであれば、それがどういった技術で実現されているかは、あまり関係がありません。だからこそ、競合分析をする際には、「同じ技術はないか?」ではなく「お客様のニーズを満たす他の方法はないか?」という視点で分析すると、より正解に近づけると言えます。
例えば、CDプレイヤーを販売する事業の場合、自社の事業や製品をCDを聴くためのデバイスと考えるか、音楽を楽しむための手段と考えるか、安らぎを得るための方法と考えるかで競合も代替品も変わってきます。

また、「営業」は顧客との関係の中だけではなく、競合企業の動きによっても変わってくる可能性がありますのでその観点でも競合や代替品の分析は重要です。

今回は以上です。
次回は「組織・チーム、社外パートナー」の説明から開始します。

2020年6月28日日曜日

ローマ人の物語4 ユリウス・カエサル ルビコン以前

塩野七生さんの「ローマ人の物語」について。
いよいよ西洋最高の英雄と言われるユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の登場です。ローマという国家が共和政の制度疲労で混迷している中、カエサルはその変革を行い帝政の基礎を築きます。その才能は超一流の軍人や超一流の政治家としてのものに留まらず、文筆家としても超一流でラテン文学を代表するうちの一人と言われています。また、才能だけではなく溢れるような人間的魅力があるのが特徴です。
塩野七生さんの力も相俟って、この本を読んでいると眼の前にカエサルが実際にいるようにも感じてしまいます。

ローマ人の物語4 ユリウス・カエサル ルビコン以前

  1. 指導者に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、この全てを持っていた。(イタリアの教科書)
  2. 人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない。(ユリウス・カエサル)
  3. 人は、仕事ができるだけでは、できる、と認めはしても、心酔まではしない。言動が常に明快であるところが、信頼心をよび起こすのである。
  4. 情報の重要性を知らない人間が相手を見くびるようになれば、普通でも入ってくる情報を集めることさえ怠るようになる。
  5. (文民は軍隊が隊列や規則にこだわることを馬鹿にすることがあるが)隊列が乱れていては、行軍でも布陣でも指令が行きとどかない恐れがある。(中略)(軍隊は)指揮命令系統が明解である必要がある。
  6. あせれば人は、ごく自然に以前の成功例にすがりつくようになるものである。
  7. 人間誰でも金で買えるとは、自分自身も金で買われる可能性を内包する人のみが考えることである。
引用元「ローマ人の物語4 ユリウス・カエサル ルビコン以前

(1)指導者・リーダーの資質については、多くの人物・書籍がその内容を論じています。ここで挙げられている五つもなるほどと思わせるものです(ただし、ここではその一つ一つが重要なのではなく、カエサルだけが、指導者に求められる資質を全て持っていた、ということそのものが重要なのではありますが)。「説得力」だけではなく「知性」が挙がっているのは注目すべきです。最近でこそビジネスパーソンにもリベラル・アーツといったことが重要視されるようになりつつありますが、知性を軽視する人がまだまだ多いとも感じます。

(2)これもその通りだと思います。ただ、見たくない現実を見るためにはどうすれば良いのか?という難問が残ります。経営者の場合は、忌憚なく意見を言ってくれるパートナーなどがこの問題を解決する手助けをしてくれるかもしれません。いずれにせよ「自分が見たいと思っている現実しか見えていないのではないか」と常に自分に問い続け、そうならないように、またはそうなってしまっても気づくことができるようにする仕組みを考えることが重要です。

(3)これは、ファンド、金融機関や経営コンサルティング会社に所属する人間が自戒を込めて認識しておくべき言葉です。これらの業界には頭が良い人間は多いのですが、残念ながら(きっと私もその例外ではなく)強い思いに裏づけされた思想的な背景がない人物が多く、そういった人物は言動に一貫性がなく、状況が変わると平気で矛盾した言動を行います。事業会社の方から「信頼」してもらえないことがあるのだとしたら、そういったところを見透かされているからかもしれません。

(4)よくいわれることですが、日本人は情報の重要性を軽視する人が多いようです。例えば、昭和の旧日本陸軍では情報将校よりも作戦将校が重視され、その結果、現地の実態を無視した「机上の作戦」が実行されるようなことが常だったといわれています(明治・大正の旧日本陸軍で必ずしもそうではなかったようですが)。また、日本語の「情報」という言葉も定義が曖昧で、「date」を意味するのか、「information」なのか、それとも「intelligence」なのかはっきりしません。ちなみに、断片的な情報である「date」を収集・整理すると「information」となり、それを分析・評価すると「intelligence」になると言われています。そういった違いを意識して「情報」を取り扱うだけでも効果があるかもしれません。

(5)スタートアップの経営者は、指揮命令系統をはっきりさせることやその前提となる組織づくりが苦手な人が多いように感じます(最近でこそ大手企業での就業経験がある経営者など、苦手ではない方も増えているようですが、少し前までは例外は大手企業からのスピンアウト企業くらいでした)。しかし、孫子も言うように指揮命令系統は兵法・経営の八大要素のひとつでありますし、経営学的にも重要です。それが行き過ぎた、所謂「官僚制の逆機能」が生じそうになったときに対策を講じればいいのであり、最初から「官僚的」「大企業的」と毛嫌いしていては、ほとんどの場合企業成長を達成できません。最近では組織づくりにあたって役職員の自主性や自発性を重視し、あえて指揮命令系統を設けないこともあるようですが、それは組織づくりをしなくて良いことを意味しているのではありませんし、経営者の手腕がより問われるということも忘れてはなりません。

(7)人を買収する話だけではなく、いろいろな場面で同様のことが言えます。たとえばある社内制度を新設する提案がなされたとき、その社内制度を役職員が悪用するリスクをあげつらうタイプの経営幹部をよく見かけますが、その人は指摘の仕方に気をつける必要があります。言い方ひとつで「より良い社内制度を作るために発言した人、問題点を指摘した人」ではなく、その経営幹部自身が「抜け道がある社内制度を悪用する可能性がある人」と見られてしまう可能性もあります。塩野七生さん風に言うと「社内制度をみんな悪用するとは、自分自身が社内制度を悪用する可能性を内包する人のみが考えることである。」といった感じでしょうか。

プライバシーポリシー

以下のとおり、当サイトのプライバシーポリシーをご案内します。
個人情報の利用目的
当サイトでは、
・電子メールでのお問い合わせ
・連絡フォームでのお問い合わせ
などの際にお名前、メールアドレス等の個人情報をご提供いただく場合がございます。
これらの個人情報は問い合わせに対する回答や必要な情報を電子メールなどをでご連絡する場合に利用させていただくものであり、それ以外の目的以外では利用いたしません。
個人情報の第三者への開示
当サイトでは、個人情報は適切に管理し、以下に該当する場合を除いて第三者に開示することはありません。
・ご本人の事前のご了解がある場合
・法令等への協力のため、開示が必要となる場合
個人情報の開示、訂正、追加、削除、利用停止
ご本人からの個人データの開示、訂正、追加、削除、利用停止のご希望の場合には、ご本人であることを確認させていただいた上、速やかに対応させていただきます。
クッキー(Cookie)
当サイトでは、一部のコンテンツについてCookie(クッキー)を利用しています。
Cookieとは、サイトにアクセスした際にブラウザに保存される情報ですが、お名前やメールアドレス等の個人情報は含まれません。
当サイトにアクセスいただいた方々に効果的な広告を配信するためやアクセス解析にCookieの情報を利用させていただく場合があります。
ブラウザの設定により、Cookieを使用しないようにすることも可能です。
当サイトで利用しているアクセス解析、広告サービスは以下のとおりです。
GoogleアナリティクスGoogle AdSense
第三者配信の広告サービスとCookie
当サイトでは、第三者配信の広告サービスである「Google AdSense」を利用し、第三者配信事業者や広告ネットワークの配信する広告が掲載されます。
この広告サービスでは、上述のCookieを利用することで、ユーザーが当サイトに訪れた情報や過去他のサイトに訪れた情報に基づき、適切な広告を表示します。
Cookieを利用した広告を無効にする方法についてはこちらの広告設定をご参照ください。または、www.aboutads.infoにアクセスすることで第三者配信事業者の Cookie を無効にできます。
プライバシーポリシーの変更について
当サイトは、個人情報に関して適用される日本の法令や社会的規範を遵守するとともに、本ポリシーの内容を適宜見直しその改善に努めます。
修正された最新のプライバシーポリシーは常に本サイトにて開示されます。
免責事項
当サイトのコンテンツ・情報につきまして、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、誤情報が入り込んだり、情報が古くなっていることもあります。
当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
運営者情報 NGCパートナーズこと石井優
お問い合わせは以下の連絡フォームよりお願いいたします。

連絡フォーム

名前

メール *

メッセージ *

広告