NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2022年3月12日土曜日

事業計画の作り方28 後継者の方向け(16) 中期経営計画策定の手順と体制(上)

事業計画を作る際に、後継者・アトツギの方と起業前の方で大きく異なるのは社内にすでに部門責任者や事業責任者がいるか否か、ということです。

起業前の方であれば、まだそういった存在がいないことがほとんどでしょうし、起業後もそういう状況が続くかもしれません(起業家の最も重要な役割としてチームづくりがありますので、きっとそういった存在が増えていくことでしょう)。一方で、後継者・アトツギの方であれば、先代を支えた部門責任者や事業責任者がいることが多いでしょう。肩書がどうかではなく、実質的にそういう役割を担っているか否かで考える必要があります。キーパーソンという呼び方でも良いかもしれません。事業承継においては、先代を支えた幹部役職員をどう遇するか、ということが大きな論点になることも少なくありませんが、ここではそれについてあまり触れないことにします。

後継者・アトツギの方が自分の中でアイデアを練っているだけ、というのであれば別として、実際の経営や事業運営ではそれら各責任者の協力を得ていく必要があります。「事業計画の作り方1 枠組み、全体像、基本的な考え方」でも説明したとおり、事業計画には「特定の人に事業を説明して、何らかの協力を引き出すなどの目的を達成する」という機能もあります。「特定の人」の具体例としては金融機関や投資家などを想定しがちですが、当然ながら社内の役職員もそれに該当します。さらには、事業計画の検討・策定の段階から(もっと言えば現状分析の段階から)社内の責任者やキーパーソンに加わってもらうことで、「自分たちが作った事業計画」とすることにより、経営や事業がより一層自分事となって計画実現・達成の可能性が高まります。さらには、事業計画検討・策定の過程で責任者やキーパーソンの資質ややる気を深く知ることができ、今後、経営を共に担い得る存在なのかを考えることができます。

それらの理由で、後継者やアトツギは「巻き込み型の事業計画検討・策定」について知っておくべきと考えます。そこで参考になるのが、株式上場準備の中で作り上げていく中期経営計画検討の手順や体制です。それを基礎として自社なりの手順や体制を見出していくと良いと考えます。

次回は「株式上場準備の中で作り上げていく中期経営計画検討の手順や体制」について解説します。

石井優 / NGCパートナーズ|note
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2022年3月5日土曜日

事業計画の作り方27 後継者の方向け(15) 長期ロードマップの検討

さて今回から事業計画検討・策定の段階に入ります。ほぼゼロからのスタートとなる「起業前後の方」と違い、後継者やアトツギの方々はすでに一定の歴史がある会社の事業計画を考える立場ですので、現状分析について回を重ねて説明してきました。一方で事業計画の検討・策定の段階に入ると、あくまでも将来の話ですので基本的な考え方は同じです。ですので後継者の方にも「起業前の方向け」の回にぜひお目通しいただきたいと思います。そして、当シリーズでは特に後継者・アトツギの方に知っておいていただきたいテーマ(つまりは「起業前の方向け」ではカバーできていないテーマ)について取り上げていくことにします。

今回は「長期ロードマップの検討」について解説します。

1.長期ロードマップとは?

長期ロードマップとは、一般的な名称ではなく私が勝手に命名して活用しているものなのですが、下のイメージのように中期経営計画(中計。一般的には3年程度の計画)×数回についての大枠を考え、整理しておくための表です。
長期ロードマップのイメージ図
横に時間軸を、縦に各項目を並べます。上記イメージはあくまでもイメージですので、各項目は自社にふさわしいものを考える必要があります。横軸もケースバイケースですが、中期経営計画の2回分以上の期間にしておくと良いと思います。そして両軸が交わる各セルには、どういったことを行うか、どういった状況になっておきたいか、といったことを簡潔に記入していきます。A3縦一枚にしてタブレット端末や紙で持ち歩いておくと、ちょっとした空き時間に自社の長期の計画をまとめるのに活用しやすいでしょう。

2.長期ロードマップの活用

こういった長期のことを考える話をすると必ず反論として挙げられるのが「環境は変化するものであり、このようなロードマップは環境適応への妨げとなる」、「6年後とか9年後のことなんか誰にも分からない」などといった意見です。

しかし環境に適応するとは、環境に流されるという意味ではありません。自社なりに将来の環境予想をしておかないと事業の方向性すら考えることができなくなります。長期ロードマップは将来の環境や、環境変化の方向性を考えるきっかけとして活用してください。また、長期ロードマップは中計の元となるものではありますが、それ自体は計画ではありませんので、その内容は定期・不定期に見直していくつもりでいれば良いのです。

また、「6年後とか9年後のことなんか誰にも分からない」という考えは、多くの場合、「将来こうなっているだろう」ということを考える、やや受け身の発想が背景にあるように見受けられます。長期ロードマップを考える際には「将来、こうなっていたい」を発想のベースにするようにしましょう。

3.長期ロードマップを考えるポイント

(1)単年度ごとに考える必要はない

 上記イメージ図ではセルを単年度ごとに区切っていたり、3年ごとに区切っていたりしています。そのように必ずしも単年度ごとに考える必要はありません。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)などは毎年変わることの方が少ないでしょうし、数値計画のようなものでも3年後には売上いくら、6年後には売上いくら、といったように3年区切りで決めることでも問題ありません(但し、直近の中計を検討する段階では単年度に落とし込むことになるはずです)。

(2)全てのセルを記入する必要はない

 ある項目もともと取組の時間軸が長く、6年後や9年後についてはまで考えることができる一方、別のある項目についてはせいぜい2年後までしか考えることができない、といったことがあると思います。それは当然のことですので、全てのセルを最初から記入しなくてはならない、とは考える必要はありません。考えがまとまったタイミングで随時記入していきましょう。

(3)株式上場計画や事業承継計画を起点にすると考えやすい

 株式上場の計画や、事業承継計画がある企業の場合、それも長期ロードマップに組み込んでしまいましょう。そうすることにより、上場スケジュールを実現するためには、事業面でこういう状態になっておく必要がある、など、長期ロードマップの他の項目を考えやすくなります。事業承継計画も同様に活用可能です。上場スケジュールに事業が振り回されるのは少し違うのではないか、との考えもありますが、実際には上場スケジュールを決めて、それを実現できるよう事業を推進する、ということで取り組みをしている会社も少なくはありません。

(4)新規事業についても大枠を考えておく

 長期ロードマップも中計と同様、全社→事業ごと、と考えるのが基本ですが、新規事業についても大枠を考えておきましょう。すでに具体的アイデアがあるものはもちろんですが、そうでない場合でも、既存事業が一定の時期で縮小傾向になる可能性が高いので、それまでに新規事業を軌道に乗せておく必要がある、などを書いておくのです。そのことにより、バックキャスティングで、いつまでにどういう取組が必要となる、といったことを考えることができるようになります。

(5)将来の組織図も考えておく

 数年ごとのあるべき組織図についても予め考えておくことで、どのポジションで人財が不足するとか、こういった強みのある人財が新たに必要になるということを予め見通すきっかけとなります。近年では人財不足は多くの業界で起きていますし、ポジションによっては数年単位での採用活動が必要なることもあります。


単年度の事業計画(≒予算)はどうしても数字面で達成するかしないか、だけに関心が向きがちです。しかし、経営者がそれだけを考えていては将来の事業の土台を作っていくことはできません。長期ロードマップを活用して、長期的な会社・事業の方針や施策を考えてみることをおすすめします。

次回は「中計の組織的な検討の仕方」について解説予定です。
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2022年2月26日土曜日

事業計画の作り方26 後継者の方向け(14) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析9 クロスSWOT分析のポイントや注意点

今回は「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」の解説の最後としてクロスSWOT分析について解説します。クロスSWOT分析自体は事業計画策定の段階のフレームワークであり、本来であれば現状分析の一環として解説するのではなく、次の計画検討の一環として解説するのが良いのかもしれませんが、SWOT分析と一体で活用する事例が多いことや、現状分析と計画策定とを有機的に接続するためのツールとも言えることなどから、ここで解説することにしました。


図をご覧いただけるとわかるとおり、SWOT分析の結果を活用して次の戦略を考えるのがクロスSWOT分析です。

(1)機会✕強み

 積極戦略と呼ばれ、事業機会に対し、自社の強みを最大限に生かすにはどうしたらいいか?を考えます
 中小企業の場合、真っ先に検討すべき象限であり且つ最も重要な象限です。最優先で取り組むべき戦略が挙げられるでしょうし、すぐに実行できる具体的な戦略を考える必要があります。また、投資を行ったり、費用をかけてでも取り組むべき戦略が求められます。

(2)脅威✕強み

 重要度としては積極戦略と撤退戦略の次に位置づけられます。教科書的には、脅威を強みで克服することを考える象限なのですが、大企業やベンチャー企業の場合は当てはまるかもしれませんが、中小企業の場合は本当にそれで良いか慎重な検討が必要です。「強み」と言えども中小企業の場合は限られた経営資源の上にあるものだからです(大企業は経営資源は比較的豊富ですし、ベンチャー企業は外部からの積極調達が前提です)。であれば、あえて脅威に挑まずに機会に強みを集中的に投入する、つまりはこの象限でも撤退戦略を考えた方が良い場面もあるはずです。

(3)機会✕弱み

 事業機会に対し、自社の弱みで取り逃がしてしまったことを改善・回復するにはどうしたらいいか?を考える、改善戦略や段階的施策と呼ばれる象限です。教科書的には中期的な時間軸で改善を目指したり、段階的施策を実施したりすることを考える象限なのですが、これも本当にそれで良いかは慎重な検討が必要です。時間をかけているうちに機会が機会でなくなってしまう可能性が高いからです。M&Aや提携などで弱みを克服する目途が立たない場合、撤退も選択肢となります。

(4)脅威✕弱み

 脅威と弱みが最悪の事態を招かないようにするにはどうするか?を考えます。専守防衛と呼ばれる象限ですが、おそらく専守防衛の本来の定義と異なる意味合いになっており分かりにくいですので撤退戦略と呼ぶべき象限です。経営資源が限られた中小企業の場合、撤退・縮小をいかに追加の損失なく迅速に行うか、を考えるべき象限です。

多くの解説などでは大企業やベンチャー企業を前提として各種フレームワークの解説がなされていることが多く、今回は「経営資源が限られており、且つ積極的な調達を必ずしも前提としていない中小企業」の視点でクロスSWOT分析を考えてみました。フレームワークとしてはとても有用ですので、柔軟に活用いただければと思います。

長らく続いた「現状分析」に関する解説は今回で終了です。
次回以降、いよいよ計画策定の段階の解説を開始する予定です。


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2022年2月19日土曜日

事業計画の作り方25 後継者の方向け(13) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析8 SWOT分析のポイントや注意点

「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」として7回にわたって解説してきました。今回と次回でSWOT分析とクロスSWOT分析の解説を行い「現状分析」に関する解説は一旦終了予定です。

今回はSWOT分析についてですが、SWOT分析の概略はすでに解説済ですので、今回はSWOT分析を実際に行う際のポイントや注意点についてご紹介します。

まず、大前提ですが、記事のタイトルにもしているように「SWOT分析は様々な現状分析の総仕上げ」という位置づけで行うものです。前回までにご紹介してきたような他のフレームワークを活用するなどして各種現状分析をやっていないと、ただ思いついた事項を並べたり、抽象的な事項しか挙がらなかったりしてほとんど意味のない分析で終わってしまいます。またSWOT分析だけで終わってしまっても意味はありません。クロスSWOT分析まで実施するようにしましょう。現状分析はあくまでも将来の計画を考える際の準備のひとつにすぎません。SWOT分析までで終わってしまうと将来の計画を立てることにつながっていきません。

さて、SWOT分析の基本的な考えは「様々な機会に対し、自社の強みをぶつける」というものです。機会が先に来て、そこに投じることができる強みが次に来るということを忘れないでください。「自社の強み」が物事を考えるスタートになり勝ちですが、そもそも機会がないと強みを十分に活かすことはできないのです。

その「機会」ですが、「機会だという勘違い」に気を付けましょう。よくある例が「先行者がいない(ので自社にとって機会だ)」、「競合がいない(ので自社にとって機会だ)」というものです。こういった場合は「それは何故だろうか?」と考え直してみる必要があります。

先行者がいないと思う場合は焦って結論を出さずに以下の問いを考えてみましょう。
  • 先行者がいないのはなぜでしょう?
  • 自社以外の誰もそこに市場がある(であろう)ことに気が付かなかったから?
  • 気が付いていたが参入しなかった?
  • 参入したもののすでに撤退しているから?
  • 参入しなかったり撤退した理由は?

競合がいないと思う場合も同様に以下の問いを考えてみましょう。
  • 競合がいないのはなぜでしょう?
  • そもそも競合をちゃんと探した?
  • 競合か否かの判断は「顧客の視点」で行った?

こういったかたちで深掘りしておかないと、実際には市場がない、他社はそれを知っている、自社はそれを知らず先行者も競合もいない状態つまりは機会だと捉えてしまった、ということになりかねません。

また「強み」ですが社内メンバーだけで考えると考え付かないことも少なくありません。そういったときは「顧客が自社を選んでくれた理由」からスタートすると良いです。実際にヒアリングしてみましょう。

今回は短めですが、以上です。次回はクロスSWOT分析について解説予定です。


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2022年1月1日土曜日

新年のご挨拶(2022年)

新年あけましておめでとうございます。

当ブログ「NGC Partners Weblog」の2021年1月から12月末までの記事別のアクセス数順位は以下のとおりとなりました。ご覧くださった皆様、ありがとうございました。

第1位
 事業計画の作り方17 後継者の方向け(5) ROICツリー(現状分析の補足)
 (2020年9月27日投稿)

第3位
 M&Aの基礎知識:FA形式と仲介形式
 (2021年10月25日投稿)

ありがたいことに前年に引き続き「事業計画の作り方シリーズ」へ多くのアクセスをいただきました。第1位の記事については、「ROIC」や「バリュードライバー」などの用語で検索して当ブログまでお越しくださった方の割合が多かったのが特徴です。ROICは経営管理指標の枠組みとして採用する企業も増えていますので、Web上で検索されることが多いのかもしれません。

ところで、事業計画の作り方シリーズは、後継者の方向けのものの連載を再開しています。また、起業前の方向けの記事についても単発ものを掲載していく予定ですので、ぜひご覧ください。

事業計画の作り方シリーズまとめ
起業前の方向け
後継者の方向け 

第3位の記事については、M&A関連のテーマとしては定番のひとつで、M&A専門事業者の方々などが解説記事を多く書かれていらっしゃいますが、多面的に知りたい・調べたいとお考えの方が当ブログにお越しくださったのかもしません。もちろん、M&Aを新たに検討される事業者が増えているという理由もあるでしょう。

M&A関連の記事まとめ

それでは本年もよろしくお願い申し上げます。
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2021年12月30日木曜日

事業計画の作り方・番外編 起業前の方向け 資金調達で知っておくべきこと

本記事は過去の記事の内容を「事業計画の作り方」シリーズ向けに加筆・修正したものです。

今回は、資金調達で知っておくべきことについて解説します。本編の資金調達に関する記事も併せてご覧ください。

1.資金調達を行う理由と、資金調達の種類

まず、会社はなぜ資金調達を行うのでしょうか?資金調達をしなければ事業を推進できない、パーパスを実現できない、成長できない、などの理由が挙げられます。増資に限って言えば、著名人や有名企業に株主になってもらい会社の信用性を高める狙いなどもありえます。

さらには応用編として、経営に規律を設けるという意味もあります。金融機関から借入をすると、契約に従って毎月返済や利払を行う必要があります。そのため、毎月しっかりと資金を用意できるよう、経営に規律を持たせようという動機が強まるのです。社内体制の整備のきっかけとするといった側面もあります。株主や債権者に対して経営の状況を説明するためには、会社の体制を整備して、社内の情報をしっかりと管理できるようになる必要があるからです。

ところで、「資金調達」とはそもそもどういったものがあるのでしょうか?主に以下のように分けられます。
  1. デットファイナンス : 金融機関からの借入が典型例です。
  2. エクイティファイナンス : エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルやCVCからの資金調達が例に挙げられます。
  3. アセットファイナンス : 会社が保有する土地や建物などの資産=アセットを活用して資金を得る方法を指します。ファクタリングもここに該当します。
  4. 事業で得られる儲けを蓄積する
本記事での「資金調達」とは、直接的に他者に対する責任が発生する「デットファイナンス」と「エクイティファイナンス」を前提として進めたいと思います。ファイナンス=資金調達、デット=負債、エクイティ=株式と適宜読み替えてください。


2.資金調達を行うために必要なこと

それでは次に資金調達を行うために必要なことをいくつかご紹介していきます。


(1)起業を考え始めたら預金を始めましょう

あくまでも預金であって、株式などでの運用は含みません。そもそも、株式などのリスクのある金融商品は「余裕資金」、言い換えると、なくなっても困ることはない資金で行うものです。起業のために使う、という目的がある以上、株式などではなく預金が正解です。起業の際によく言われるのが、起業の後、2年間全く売上が立たなくても暮らしていけるだけの資金を用意するか、起業前にまとまった量の仕事を受注しておく、ということです。これはとても大切で、起業した後から営業活動を開始すると、毎日のように減り続ける通帳残高を見て焦りながら営業活動をする羽目になるため、良い結果を生むことができないことが多いと言われます。だからこそ、本来は起業前にいくつか受注確実な仕事を見つけておくことがベストではありますが、なかなかそうもいかないので、次善の策として貯金をしておくのです。

また、自分で資金を用意するかどうかは、その後の資金調達にも大きく影響します。考えてみてください。みなさんの知人が起業したとします。でもその知人自身はお金を出さず、周りの人にお金を出してくれと言っているのを見たらどう思いますか?「まずは自分で出そうよ」と思う方が多いのではないでしょうか。起業家自身が資金を用意することは、その起業家の覚悟の現れや、事前の準備の度合いとも見られるのです。


(2)会社のお金の流れ、事業でのお金の流れを理解し、予測・計算できるようにしておきましょう

ここでは詳しくは説明しませんが、利益が出たからといって、手元にお金が残るわけではありません。利益が出ているのにお金が減ることもあります。逆に、利益が出ていなくてもお金が手元にある限りは、会社は存続できます。

「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあるかと思います。読んで字のごとく、利益は出ているのに、会社が倒産してしまうことを意味します。これは経営者が自分の事業のお金の流れを理解していない、もしくは予測に失敗したことが理由で起きます。そんなことになりそうな会社には、金融機関や投資家も怖くて資金を出せないはずです。また、お金の流れを予測できていないと、お金が足りなくなって慌てて資金調達を行うことになります。しかし、資金調達には一定の時間がかかるのです。また、自分が焦っていると、自分にとって不利な条件での資金調達という結果にもなりかねません。こういった話のときによくあるのが、会計や経理のことは全て顧問税理士に任せているので、自分は詳しくは分からない、という事例です。しかし、任せていることと経営者自身が理解することは全く別の話といえます。それに、会社を大きくしていきたいとお考えの場合は、会計や経理はできるだけ社内で行うべきです。その方がリアルタイムに資金や利益の状況を把握できるし、経営に活かすこともできます。最近ではアウトソーシングも一般的になっていますが、自社で理解した後、アウトソーシングという順番が良いと考えます。


(3)自分の事業や会社どういう段階にあるか理解しておきましょう

会社には、成長のステージ=段階があります。一般的には、シード、スタートアップ、ミドルステージやレイターステージなどに分けられます。日本語でも、創業期、揺籃(ようらん)期、成長期、安定期などの言葉があります。

なぜそれを理解する必要があるかと言えば、ステージごとに適した資金調達の方法があるからだ。業種によっても様々なので一概には言えませんが、たとえば起業したばかりの頃の資金調達に関する「3F」という有名な言葉があります。Founder(起業家自身)、Family(起業家の家族)、Friend(起業家の友人)からの資金調達が良い、というものです。しかし、たまたまそれらの人が大金持ちでもない限り、事業を拡大するときに必要となる資金は準備できないでしょう。だから、次のステージでは、金融機関や投資家などから資金を集め、さらにステージが進むと株式上場をして株式市場から広く資金を集めるようになるのです。


(4)事業に再現性を持たせる仕組みを作りましょう

再現性とは、わかりやすく言えば、成功の要因が分かっていて、それを別の機会にも一定以上の確率で実現できることを意味します。球技で例えてみると、自分のシュートの成功率を高めるには、ゴールの左側から、このくらいの距離でシュートを打つ必要があると理解していること。そして、それを実行できることを意味します。「なぜホームランを打てるか分からない」と言っている野球選手と、「自分はこういう場面ではホームランを狙えるから、その場面では積極的に狙っていく」と言っている野球選手、どちらをスカウトしたいと思うでしょうか?再現性を持たせるということはスポーツでも決して簡単なことではないですが、事業においても実は難しいことです。なぜお客様が自社の製品を選んで買ってくれるのかを正確に理解していない会社は少なくありません。みなさんはそうならないよう、再現性を持たせる仕組みづくりを考えて欲しいと思います。


(5)集中すべきことを決めましょう

集中すべきことを決める。言い換えると、「何をしないかを決める」ということです。起業家の特徴にも色々ありますが、多くの起業家に共通しているのは「アイデアが豊富」という点。それ自体は素晴らしいことですが、一方ではマイナスに働き、「特定の事業に集中できない」とか、「すぐに諦めて他の事業に興味を持ってしまう」となりやすいのも事実です。しかも、起業したての頃は、社内のあらゆる資源が不足しています。人もお金も時間も足りません。そういったときにあれもこれもやりたい、というわけにはいきません。資金提供者も「経営が散漫になり、どの事業も結果がでない」という事態は望んではいません。常に選択と集中が必要であることを覚えておいてください。


(6)経営チームをつくりましょう

会社は、様々な機能が一体となって運営されています。どんなに優秀な起業家でも、その全てを自分だけで行うことはできません。また、もしできたとしても、時間の制約がある以上、ひとりで全部やろうとすると、どれもいまいちな結果となってしまうでしょう。資金提供者も、起業家がスーパーマンであることを求めてはいません。むしろ、起業家自身の強みに集中し、それ以外のことはチームとして対応して欲しいと考えていますし、そういったことができる会社の方を高く評価するでしょう。みなさんは優秀であっても万能ではありません。ぜひチームとしてみんなの力を結集できるようになりましょう。


(7)最後にもう一度、必要な資金調達かを考えましょう 

 「お金は多ければ多いほどよい」という考えもありますが、それが当てはまる局面と、そうではない局面とがあります。リーマン・ショックやコロナ禍においては、「Cash is king」という言葉がよく使われました。これから先どうなるか分からないという不確実性が高まったので、「チャンスがあれば、可能な限り多額の資金を調達しておこう、そうでないと次の資金調達の機会はずっと先かもしれない」と考えざるをえなかったのです。

逆に、資金調達環境が良い時期もあります。景気は悪くないのに低金利のような時期が例として挙げられます。そのような時期には、ある程度の資金的余裕を持つということは良いとしても、必要額をはるかに上回る資金を調達すべきではありません。借入であれば利息がかさむという問題もありますし、もっと重大なこととしては、経営の規律が緩むという問題があります。資金調達をした直後、その資金を事業に使わず、高級車を購入してしまうような経営者も残念なことに珍しくはありません。資金調達の際には、常に、本当に必要な資金調達か考えるようにしましょう。

3.資金供給側の目線・考え方

さて、次は資金提供側の目線や考え方について整理します。

起業間もない段階での資金提供側の視点は主に、「融資候補先や投資候補先の起業家が信頼に足るかどうか」、「実現可能性や将来性のある事業計画であるかどうか」のふたつです。


(1)起業家が信頼に足るか

まずは、信頼に足る起業家かどうかですが、起業家や経営者としての資質、人柄、初対面時の印象などが重要です。事業がうまく行きだすと天狗になる起業家は、当然ながら信頼されません。逆に、うまく行っているときにこそ、次の手を考え実行していく起業家は高く評価されます。貧すれば鈍すると言いますが、事業が苦しくなってから「どうすればいいだろうか」などと考え始めるのでは遅すぎるのです。それに、そんなことを考える前に、今日を生き残ることで手一杯になってしまいます。経験豊富な資金提供者は、それぞれ独自の起業家評価ポイントを持っています。そういった方々との面談などの場で急に取り繕っても見抜かれてしまいます。ぜひ、起業家や経営者のあるべき姿について、多く学んで、自分なりに考え、実践していってください。そういったことを真面目に取り組んでいればきっと評価してくれる人に出会えるはずです。


(2)事業計画の実現可能性や将来性はあるか

次に、事業計画の実現可能性や将来性ですが、実はそれを判断する際にもっとも重要な要素は「起業家はどういった人物か」、「誰が経営者であるか」なのですが、もちろんそれだけで良いわけではありません。事業計画の作り方の勉強会に参加したり、自分なりに考えることによって、実現可能性や将来性を資金提供者に納得してもらえるよう努力を積み重ねましょう。あと、必ず覚えておいて欲しいのは、事業計画は、資金提供者と起業家との間の大切な約束だということです。起業家は事業計画を示し、それを達成するために努力をすることを説明して、資金を調達します。資金提供者は、事業計画を見て、それが達成されることを期待して資金を出します。事業計画を示して資金調達する以上、大きな責任が発生することは忘れないで欲しいと思います。

2021年12月29日水曜日

事業計画の作り方・番外編 起業前の方向け 起業に必要な覚悟とはどういったものか

本記事は過去の記事の内容を「事業計画の作り方」シリーズ向けに加筆・修正したものです。

今回は、起業に必要な覚悟とはどういったものか、を考えてみたいと思います。

さて最初に「起業」の意味について考えてみましょう。

「起業」と一言で言っても、
  • 最初から会社を設立して事業規模の拡大を目差すパターン
  • 個人事業主から開始して段階を踏んで事業規模拡大を目差すパターン
  • 事業規模の拡大を前提としていないフリーランサーやクリエイターのパターン
  • 他のフリーランサーやクリエイターとネットワーク型の連携をして仕事の幅を広げるパターン
など様々なパターンがあります。

Web関連事業やコンサルティング業のようにパソコンひとつで起業できる業種もあります。最近ではスマートフォン1つあれば十分だという意見を聞くこともあります。私の場合でも開業に際しては、ひとまずパソコン、スマートフォン及び名刺を用意し、コワーキングスペースに入会しただけです。一方でものづくり、農業や店舗運営のように一定の資金や施設が必要とされる業種もあります。

しかし、いずれにしても「覚悟」が必要とされない「起業」はありません。人とは違うこと、一定のリスクを負うことなので当たり前と言えるかもしれません。では、どういった覚悟が必要とされるのでしょうか?これからいくつかの質問をします。ひとつひとつ、自分に問いかけてみてください。これらの質問は、ベンチャーキャピタルでの活動や、起業相談を受ける中で整理していったものです。

大きな失敗をする覚悟、そこから再起する覚悟はありますか?

まずは、みなさんの過去の経験の中で、大きな失敗をしたことがあるか、それは何だったか、それをどう乗り切ったか、どう克服したかを思い出してノートに書き出してみてください。次に、みなさんがやろうと考えているビジネスで想定される大きな失敗とは何でしょうか?それも書き出してみてください。

この質問は、失敗=悪いこと、という意味合いでしたものではありません。どんなに優秀な人でも、挑戦する人は必ず失敗します。失敗をしたことがない人は、挑戦してこなかっただけです。失敗を想定していない人は、自分の能力を過信している傲慢な人にすぎません。一方で挑戦して失敗する人は、その仮説検証や試行錯誤の中で大きく成長していきます。失敗経験を活かすことで、次の成功確率を高めていくことができるのです。事業はその連続ともいえるものです。また、成功に法則を見出すことは難しいですが、失敗には法則を見出すことはできる、ということもいえます。

繰り返しになりますが、挑戦する以上、失敗は避けられません。失敗から学ぶことなしに成長もできません。つまりは、失敗する覚悟、それを乗り越える覚悟が「起業」には必ず必要となるのです。

本当の意味での人脈を活用する覚悟はありますか?

そもそも人脈とは何でしょうか?交換した名刺の数や、有名人と知り合いであることを自慢するタイプの方もいらっしゃいますが、それは人脈といえるのでしょうか?広い意味ではそうかもしれません。しかし、「起業」における「人脈」とは、あなたを信じて仕事を出してくれる人、あなたを信じてお金を出してくれる人、このような人たちとの関係を指します。きっとみなさんの周りにはみなさんの起業を応援してくれる方々が大勢いると思います。そういった方々との関係も当然ながら大切しなければなりません。一方で、応援だけでは事業は成り立たないのも事実です。起業における本当の人脈を持っているかどうか考えてください。そして、その人脈を活用する覚悟が自分にあるか問うことが大切です。

人のお金を使う責任を負う覚悟はありますか?

どんな方法で資金調達したとしても、人のお金を使って事業をする上では、様々な義務が生じます。そしてほとんどの場合、返済する金額やリターンとして戻す金額は借りたり投資を受けたりした金額よりも大きくする必要があります。もしくはそういった目標設定をします。また、知人や友人からお金を出してもらうということは、万が一事業が失敗したときに、同時に人間関係も損なわれる可能性があるということでもあります。そういったことを理解した上で、人のお金を使う責任を負う覚悟はありますか?

仲間をはじめとする関係者との関係で苦労し、苦悩する覚悟はありますか?

日常生活であれば、不都合のある相手とは距離をとったり、自分が引くことにより特に問題を表面化させずに済ませることができます。しかし、起業すれば自分が代表者であり最終責任者であるため、逃げることは許されません。どんなことも、どんな人に対しても何かしらの判断のもと、対処していく必要があります。

社内でも同様です。起業家自身と他の創業メンバーの間には覚悟や意識の大きな差があります。場合によっては、創業メンバーのサラリーマン精神が表面化することも。そのときには、創業メンバーと言えどもお互いのことを本当の意味で理解していないことにショックを受けると思います。それでも事業は一緒に行っていく必要があります。

友人と一緒に会社を経営する場合には、友人を解雇する必要に迫られるかもしれません。友人に連帯保証をお願いする必要が生じるかもしれません。家族との関係で苦悩することもあるかもしれません。

起業家はある段階では、ワークライフバランスなどと言ってはいられない場面にも直面します。運悪く、配偶者との関係がうまくいっていないタイミングと重なれば、離婚をつきつけられる可能性もあるのです。

最初は支援者だった人が、何かのきっかけで最大の敵対者になることだって少なくはありません。そうなると大変です。相手は「せっかく応援してやったのに裏切りやがって」と、普通では考えられないほどの嫌がらせをしてくるような事例もあります。

良くない可能性の話ばかりをしてしまいましたが、どれもが起こりうることです。そういったことに苦労し、苦悩することへの覚悟も必要です。

事業計画を人に見せる覚悟、そして厳しい意見をもらう覚悟はありますか?

どんなにじっくり考えた事業計画でも、人の真剣な批判にさらされていない計画は十分ではありません。特に先輩起業家の意見はとても貴重なものです。その方の話を聞くことで失敗の疑似体験もできるはずです。

事業計画を人に見せることに強い抵抗感を持つ方も多いかと思います。しかし、安心してください。人に見せたり話したりしたくらいで成り立たなくなる事業は、はじめから長持ちはしません。真似されることを恐れるよりも、人の批判にさらされていない不完全な事業計画であることを恐れて欲しいと思います。もちろん、見せる相手は選ばなくてなりませんが、多くの人に見せて厳しい意見をもらうことで事業計画はより良いものになります。一人ひとつの意見でも、100人に見せることで100個の改善点に気がつくことができるのです。

ぜひ、事業計画を人に見せる覚悟、事業計画が批判される覚悟を持って欲しいと思います。

環境の変化に対応していく覚悟はありますか?

会社を経営していくうちに必ず環境の変化に遭遇します。そのときに生き残ることができるのは、ダーウィンが言うように「環境に適応した者」だけです。環境の変化に対応するというのは思いの外苦痛や苦労を伴います。環境の変化への適応は、誰もがその必要性に気が付いたときでは遅いことが大半です。多くの人が環境の変化にも、変化への適応の必要性にも気が付いていない時期、そして、旧来の仕組みなどが何の不都合も生じさせていない時期から行う必要があります。そして、多くの人は一度出来上がったものを変化させたり、作り変えたいすることに強い拒否感を持ちます。そのような中で環境の変化に対応していくのは、環境の変化に気が付けることよりも重要で、且つ覚悟を要することなのです。

自社・自分に独自性があるとの思い込みを断ち切る覚悟はありますか?

ベンチャーキャピタルはベンチャー企業に対し、残念ながら投資は行わないという判断をすることも少なくはありません。しかし、その中にも実は、直感的に素晴らしいと感じる事業も多くあるのです。では、投資をしないという判断をしたのはなぜでしょうか。もちろん理由はひとつではありませんが、多い理由のひとつに「情報軽視、誤った情報分析」というものがあります。「私の事業はとてもユニークであり、世界に同じことをやっている企業は存在しない。」という思い込みが典型的な例です。事業計画の検討には、「競合分析」という項目を必ず盛り込むべきですが、その際、次の2点は絶対に忘れないで欲しいと思います。ひとつめは「競合企業は必ず存在する」ということ。ふたつめは「競合か否かは必ず顧客目線で考える」ということです。

競合がいない、と言ってしまうのは傲慢であり、かつ情報の軽視といえます。冷静に考えれば、数十億人いる人類の中で、「自分と同じことを考えている人、同じ視点を持った人は他には存在しない」と考えることはおかしいと気がつくはずです。自分が唯一無二の天才である可能性と、自分と同等かそれ以上の頭の良さをもった人が世界の中に一人以上いる可能性、それを比べても分かるはずです。また、「自分と同じ技術を持つ人は他にはいない」というのも、事業として考えた場合は、誤った情報分析といえます。誤解を恐れず言えば、顧客から見た場合、顧客自身のニーズが満たされたり、ペインが解消されたりするのであれば、それがどういった技術で実現されているかは、あまり関係がありません。だからこそ、競合分析をする際には、「同じ技術はないか?」ではなく「顧客のニーズを満たす他の方法はないか?」という視点で分析すると、より正解に近づけると言えます。

次こそはうまくいくという考えを振り切る覚悟はありますか?

起業前後というのは、ひたすら前向きなことを考え、良くない可能性には目を向けたくない時期です。しかし、撤退の可能性を考えないのは、目を背けていれば撤退するような状況には陥らないと考える、非科学的な姿勢ともいえます。どういう場合に撤退すべきか、撤退する際にはどれほどの損害が発生するのかを考えておく必要があります。

また、起業家というのは多くの人が諦めてしまう場面でも、粘り強く事業を推進する力がある方が多いのですが、事業を営む中ではそれが裏目に出てしまう場面もあります。失敗を繰り返す中でも「次こそはうまくいく」と考え、撤退のタイミングを逃してしまう、というのが典型例です。

まずは撤退を合理的に判断できる知識を身につけておきましょう。経済学やファイナンスの知識です。「サンクコスト」という言葉があります。日本語にすると「埋没費用」です。実はこの言葉を知っているだけで、撤退の判断をより合理的に下せる可能性が高まります。みなさんの周りでも「今までかけた時間と資金が無駄になるから、中止なんてできない。」という話を聞いたりすることはないでしょうか?こういう場合に、サンクコストの考え方を応用すると、「過去に投資した資金や労力は一旦脇に置き、これから必要となる投資額とその効果を再度計算しなおして、投資継続か否かを判断しよう。」と考えられます。ぜひ、経済学とファイナンスの基礎的な知識は身につけておいてください。

越境する覚悟はありますか?

越境とは、例えば自分が経験のない分野の仕事に就いてみたり、全く文化の違う外国に飛び込んだり、自分の従来の枠を飛び越えることを意味します。新しい価値観とぶつかり合うことは人が最も成長できる場面のひとつです。「新しい価値を生み出すことができるのは、越境した人だけ」と言われることもあります。会社を変革できるのは「若者、馬鹿者、よそ者だけ」という言葉とも通じるところがあるのではないでしょうか。


本稿では「自分に問いかけて欲しい質問」を通じて、起業を「覚悟」という面から考えてみました。当然ながら、他にもたくさん覚悟する必要があることは少なくありません。また、起業後の事業の段階ごとに覚悟すべき事項も変わってきます。起業の段階は主に始める覚悟ですし、仲間を増やす段階では、人の人生(の一部)を背負う覚悟が求められます。事業を拡大させる時期には、波に乗る覚悟、組織をつくる覚悟、社員などに背中を見られる覚悟が求められます。会社が安定成長に入っても、安定が衰退の始まりだと考えると、経営を変えていく覚悟が必要となるでしょう。起業前のみなさんから見ると、少し将来の話もありますが、まずは「あなたは覚悟ある起業家か?」という問いに少しでも自信を持って回答できるようになれると素晴らしいと考えます。

また、これから起業をする方々には、起業や事業を行うことを楽しんで欲しい、と心から思います。本記事では「覚悟」という一見重たいキーワードが多かったですが、それを上回る楽しさを起業や事業に見いだせる人こそが起業家なのです。ワクワクすることが起業家にとっての最大のご褒美でありモチベーションの源です。ぜひ起業や事業を楽しんでください。

2021年12月28日火曜日

事業計画の作り方24 後継者の方向け(12) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析7 内部環境分析(5) M&Aのデューデリジェンスの手法を活用した分析

今回は内部環境分析の続きで、「M&Aのデューデリジェンスの視点を活用した分析」について解説します。

デューデリジェンスとは一般に「DD」と略され、M&Aの対象となる会社の詳細を調査・分析することを意味し、実務上は「買収監査」と訳されます。DDの目的は多くの場合、「リスクの洗い出し」、「買収の可否判断のための調査・分析」や「バリュエーションのための調査・分析」と捉えられることが多いですが、それと同じかそれ以上に重要な役割として「企業買収後の経営を成功に導くための調査・分析」ということがあります。DDを担うのは各種専門家であり、その専門家の役割はほとんどの場合、「M&Aを成約させるまで」つまりは「株式譲渡などを実施し、経営主体を売り手から買い手側に移転させるまで」であるため、DDの目的を「リスクの洗い出し」、「買収の可否判断のための調査・分析」や「バリュエーションのための調査・分析」と捉えがちですが、肝心の買い手にとってはM&Aは手段でしかなく、その後の経営の方が重要です。ですので買い手にとってのDDは「企業買収後の経営を成功に導く」ために実施するという意味合いがある、ということです。

DDの目的が「企業買収後の経営を成功に導くこと」であるのなら、その手法はM&Aの場面でなくとも企業の現状分析にも応用可能です。M&Aでは経験値の高い専門家が行うものなので、実務はかなり高度ですが、その手法を学ばない手はありません。今回は「各種DDを自社の現状分析の手段として活用する」という前提の下、その概要と多くの企業に当てはまる論点などについて解説します。

1.事業デューデリジェンス(事業DD)

事業DDとは、本シリーズで解説しているような企業の現状分析全般を意味します。この後説明する各種DDが、企業の特定の部分や機能などをその調査・分析の対象としているのと比較して、事業DDは企業全体・事業全体を調査・分析の対象とするのが特徴です。内容は他の回と重複しますので割愛します。

他のDDは専門家の力を借りることも選択肢ではありますが、事業DDは経営者自身が行うべきです。M&AでのDDは他の企業についての調査・分析なので様々な制約がありますが、自社の現状分析の場面であれば、制約は極めて限定的です。

2.財務デューデリジェンス(財務DD)

財務DDとは、調査対象となる会社の資産状況、損益状況、キャッシュフローの状況、その他財務的な調査・分析を行うことを意味します。単なる財務分析とは異なるものです。M&Aの場面では多くの場合、公認会計士に依頼したり、後述する税務DDと合わせて税理士に依頼したりします。

調査・分析の結果判明した財務的影響は数値化し、将来の事業計画や数値計画へ反映させます。また、調査・分析の結果はバリュエーションにも反映させることでバリュエーションの精度が向上します。また、財務DDの結果だけでなく、後述する他のDDの調査・分析結果について、それが数値化できるものは全て財務DDに反映されることを通じて、実態の貸借対照表、損益計算書そして事業計画に影響します。

主な論点としては以下のような事項があります。その内、貸借対照表の資産に計上されているものについては「資産性は実在するか(実在性)」、「資産の額は時価となっているか(評価額)」、「換金可能か」といった視点で、負債に計上されているものや計上すべきものについては「抜け漏れはないか(網羅性)」の視点で分析します。

(1)資産に関するもの

売掛金、受取手形、前払い費用、棚卸資産、
時価のない有価証券、ゴルフ会員権、保険積立金、建物、土地、
無形固定資産、貸付金、差入保証金、敷金 など

(2)負債に関するもの

各種引当金、退職給付債務、残業代等の未払い、その他の簿外債務・偶発債務 など

また、損益計算書に関する事項としても、売上の計上時期は適切か、売上と原価の計上時期は一致しているか、などの調査・分析を行うべきです。但し、その場合は会計についての正しい知識が求められますので、公認会計士や税理士に相談することをおすすめします。

3.税務デューデリジェンス(税務DD)

税務DDは、税務リスクの把握のために実施するものです。M&Aの場面では、税理士法人などに依頼して実施することが一般的です。自社の現状分析に応用する場合でも、前回の税務調査から時間が空いている企業ほど、税務DDの重要度は高いと言えます。但し、税務DDは専門家以外が行っても効果が出ない事項もありますので、実施に当たっては注意が必要です。

主な実施事項は以下のようなものです。
  1. 税務申告書の再チェック
  2. 過去の税務調査での指摘事項への対応状況
  3. 過去の取引内容の精査
  4. 税務コンプライアンス体制の確認
「2」と「4」に関しては自社内でも実施可能でしょう。「1」と「3」については専門家の助力を得ないと効果的に実施できない可能性が高いでしょう。
「4」については、今後の社内体制の整備と関連することもあり、とても重要です。以下のような内容が含まれます。
  • 文書化、フローの統一化、内部統制、資料の補完状況、
  • 税務当局とのコミュニケーション
  • 顧問税理士との関係(担当者の交代など)

4.法務デューデリジェンス(法務DD)

法務DDの目的は「法的な実務課題の洗い出し」です。M&Aでは弁護士に依頼して実施します。自社の現状分析においても、以下のような事項に明確に回答できない場合は弁護士に関与してもらい、分析・調査を行い、結果への対応を相談すべきでしょう。
  • 定款に自社の現状と矛盾する記載はないか
  • 株主総会や取締役会は適法に開催されているか
  • 定款や議事録に事業上の制約となる記載はないか
  • 登記上の権利関係はどうか
  • 名義株はないか
  • 株主に問題のある者はいないか
  • 特殊な契約は存在しないか
  • 取引先などに反社会的勢力やその疑いのある者がいないか
  • 知的財産権の権利関係はどうか
  • 業法の改正動向はどうか
  • 法的リスク回避やコンプライアンスの体制はどうか

5.人事デューデリジェンス(人事DD)

人事DDは、組織風土、報酬体系、スキル構成、キーパーソンなどを明確化するために実施します。
たとえば以下のような調査を行います。
  • 全社、各部門の使命とそれを落とし込んだ心得は明確か?
  • それを元に役職員にどう活躍して欲しいかが明確か?
  • 期待している動きをしている役職員に報いる制度はあるか?
中小企業には「労務」に詳しい人材はいても「人事」に詳しい人材はいないことが多いですので、人事DDについても専門家の力を借りることも選択肢のひとつです。たとえば、人事に強いコンサルタント会社などです。但しその場合、新しい人事制度を作るところまでコンサルタントに依頼するのかは慎重な検討が必要です。

6.労務デューデリジェンス(労務DD)

労務DDの目的は「労務リスクの洗い出し」であり、守りの面での人事DDとも言えます。
主な内容としては、
  • 労使関係
  • 法令遵守体制
  • 未払残業代(通常2年、最大4年)
  • 離職率や休職率
  • メンタルヘルス
が挙げられます。日頃から社会保険労務士などにこまめに相談している、社内に労務に詳しい人材がいるなどの場合は、自社内で簡易的に実施するという選択肢もあります。そうでない場合は、弁護士か社会保険労務士といった専門家に相談してみましょう。

7.システムデューデリジェンス(システムDD、IT DD)

システムDDの目的としては、「IT・システム関連のリスクの洗い出し」、「今後の必要投資額の算定」などが挙げられます。DDの前提の置き方にもよりますが、現状の事業と現状のシステムを所与として、その延長線上での調査・分析である場合は、DX化などには対応できませんので注意が必要です。
主な内容としては、
  • システムの安全性や信頼性
  • コンプライアンス
  • 情報システム人材
  • 今後のシステム投資に要する額や時間のシミュレーション
が挙げられます。中小企業の場合、社内にシステム部門が存在しない、システム担当者は必要最低限の人数しかいない、ということが一般的かと思いますので、これも専門家に相談すべき事項と言えます。

8.不動産デューデリジェンス(不動産DD)

不動産DDの目的は「不動産に関するリスクの洗い出し」、「今後の必要投資額の算定」が主なものです。自社で土地建物などの不動産を所有している場合、賃借でも工場などの箱ものがある場合には実施すべきものです。逆に、オフィスビルのテナントなどとして活動している場合は実施の必要性は低いと考えられます。
主な実施事項は以下のとおりです。

(1)物理的調査

 土地→面積、形状、地勢、土壌汚染、間口、奥行き 等
 建物→面積、用途、構造、築年、内装、外装、設備、有害物質(アスベスト等)

(2)法律的調査

 行政上の使途制限、都市計画、建築の遵法性、所有権等の権利関係
 係争の可能性の有無 等

(3)経済的調査

 地域経済、需要動向、価格トレンド

土地については不動産鑑定士、建物については不動産鑑定士に加えて建築士・調査専門部門がある建設会社などに依頼することが一般的です。複数の専門家に依頼する場合は、それぞれ別個に依頼するのではなく、プロジェクトチームを作り、連携して活動してもらう必要があります。また、一般的な不動産鑑定よりも対象が広いなどの理由で、不動産鑑定士だけでは完結しないこと、経験がある不動産鑑定士に依頼すべきことなどの注意点もあります。

9.環境デューデリジェンス(環境DD)

近年、重要性がますます高まっているのが環境DDです。その目的は「環境上の問題点の把握」、「環境管理体制」ですが、社会的な関心・意識の高まり、法制度の整備などを通じて、その調査対象は拡大しています。一般的な環境DDの内容は、
  • 土壌、地下水汚染のリスク確認
  • アスベスト、PCB等の有害物質の利用・残存状況の把握
  • 廃棄物管理の状況把握
  • 大気排出、給排水、温室効果ガス排出の状況確認
  • 労働安全衛生状況の確認
  • 現地調査(フェーズⅠ:聞き取り、資料の確認、フェーズⅡ:必要に応じてボーリング調査等実施)
ですが、炭素排出量の状況確認なども当然に調査範囲に含まれてきます。

以上で内部環境分析についての解説は終了です。次回からはSWOT分析・クロスSWOT分析について解説予定です(間に補足説明の回を追加する可能性もあります)。

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2021年12月27日月曜日

事業計画の作り方・番外編 起業前の方向け 営業についてどう考えるべきか

本記事は過去の記事の内容を「事業計画の作り方」シリーズ向けに加筆・修正したものです。

今回は「営業」について考えます。事業計画の作り方シリーズ本編の営業に関する記事と合わせてご覧ください。

営業に関するありがちな勘違い

起業前後の方が意外と軽視もしくは楽観視する事項として「営業」があります。次のようなことに思い当たる節はないでしょうか?

  1. 私の製品は最先端な技術、他に例を見ない技術が元になっており、競争力がある(ので売れるはず)。
  2. ターゲット顧客にヒアリングした結果、評判が良かった(ので売れるはず)。
  3. 大きな会社が販売代理店になることになっている(ので売れるはず)。
  4. 全国に代理店網を構築できる(ので売れるはず)。
  5. マーケティングは完璧である(ので売れるはず)。
  6. 当社の製品は競合他社の製品よりはるかに安い(ので売れるはず)。
他にも自社商品やサービスが売れるはずであるという理由をたくさん聞くことがありますが、これらは実は「営業」を知らない(営業経験がない)起業予定者にありがちな勘違いです。

もちろん上記の事項は製品やサービスが売れるために望ましい事項ではあります。ただ、それだけでは足りません。そこには「営業」の機能が足りないもしくは存在していません。良い製品やサービスであれば顧客の方から探し出してくれるかのような勘違いも耳にすることが多いですが、ほとんどの場合、何等かの営業活動を行わなければ顧客に知ってもらうことができず、結果として売上は増えません。これは取り扱う製品やサービスが本当に日本一・世界一でも同様です。日本は経済が停滞しているとはいえ、やはりすごい国で、世界有数の製品やサービスを広めようとしている企業は多くあります。しかし、そのような企業でも多くの場合は苦戦し、中には事業継続を断念する事例もあるのです。理由は様々ですが、「営業」の機能が足りないもしくは存在していない、という理由によるものの割合は大きいと考えます。

戦略がなく敗れ去った国家や軍隊の話は歴史でもよく登場しますが、起業間もない事業者の売上が伸び悩むのは、実はそれとは逆で戦略しかないことが原因であることが少なくないと考えています(戦略すらない事例も残念ながらあります)。私はそれを「戦略あって兵隊なし」と表現しています。本当は「戦略あって実行なし」や「戦術なし」でも構わないのですが、分かりやすい言葉として「兵隊なし」としています。ここでは「兵隊=実行策」であり、その中で最も重要なもののひとつが営業なのです。

起業家の中での営業の位置付け

まずは、多くの起業家にとっての営業の位置付けについて見てみましょう。繰り返しになりますが、実は営業を軽視する起業家は多いのです。起業家は、プログラマー、コンサル、技術者やマーケターなど様々な背景を持っていますが、意外に少ないのが営業出身者。そのため、営業について軽視もしくは楽観視している事例が多く見受けられますし、たとえ営業にも意識が向いていてもその役割は重視されていないことも多くあります。しかし、起業後、製品やサービスが販売できる状態になる以前に営業を重視した社内体制を構築すべきです。

マーケティングの究極の目的は、製品やサービスが「売れる」状態を作り出すことですが、それを実現できている企業は決して多くはありません。また、製品やサービスは常に顧客の声を聞いて改良していく必要があります。今では「顧客開発モデル」などの優れた手法もありますが、実際の販売開始以降は、顧客の声は営業部門に一番多く集まります。どんなビジネスでも「顧客」がスタートラインなのです。そこに一番近い場所にいる営業部門を重視しなくて良いなどと言ったことはありえません。

早速今から営業の位置付けについて考えてみて欲しいと思います。

まずは「直販」からはじめる

営業や営業部門の重要性を理解している場合、まずは「直販」と呼ばれる営業方法から開始することが望ましいと考えられます。これは「現場主義」の営業場面での体現といえます。

直販を行うことは営業担当者がいなくても実施可能です。営業は重要なものなので経営者自身が行うに十分に値します。

そこで知るべきは本当の顧客のニーズだけではなく、どうやったら顧客の感動を得られるか、どのような流れ、方法やステップで顧客の感動を得たか、その中で重要なポイントはどの部分か、などです。直販を最初に行うべき理由はここにあります。

営業経験のない経営者が、自社の商品やサービスの販売を開始する際、いきなり代理店網を構築しようとすることがあります。はっきり言ってしまうとそれは成功する可能性が極めて低いです。代理店は一度契約すれば後は黙って製品やサービスを販売してくれる存在ではありません。代理店となる企業はほとんどの場合、あなたの会社以外とも代理店契約を結んでいるのです。そして、取り扱う製品やサービスは多岐にわたります。そういった中、代理店自身の利益を考えた場合、代理店は当然ながら、売りやすいもの、利益率が高いものを優先して販売していきます。あなたは代理店に対し、自社の製品やサービスの販売を強化してもらえるよう働きかけるでしょう。そのときに重要になるのが、あなたの会社が直販で培ったノウハウなのです。代理店に対しそのノウハウを提供していくことで、あなたの会社の製品やサービスは、代理店にとって売りやすいものとなっていきます。こういった取り組みがあって初めて代理店網が活きてくるのです。

代理店の活用は掛け算に似ています。あなたの会社の営業力がゼロであれば、どんなに立派な代理店網を構築しても、掛け算した結果は変わらずゼロになるにすぎません。必ず、まずは直販からはじめましょう!

営業は仕組みづくり

営業活動を強化する際にありがちな間違いが、いわゆる「スーパー営業マン」を採用したり育てたりしようとすることです。営業の世界にはそういった方達が少なくないですし、そういった方達は尊敬すべき対象です。ですが、そういった方達の営業ノウハウはその方達にしかできないことが多く、営業ノウハウはブラックボックスになりやすいと言われることもあります。そのため、会社を継続的に成長させるためには、スーパー営業マンにしかできない方法を追い求めるのではなく、教育訓練さえすれば誰にでも実施可能な方法の積み上げで構築された営業組織を作る必要があります。つまりは、属人的な営業ではなく、組織的な営業を行う体制が望ましいといえます。組織的な営業活動を行うために最低限必要となるのがたとえば次の機能です。
  • 営業のステップ化とKPI目標設定
  • 営業力強化目的とした営業会議(ただの報告や情報共有を目的としない)
  • インセンティブ制度
  • 営業力強化の取り組み(教育
KPIはいろいろ定義や使われ方がありますが、ここでは「先行指数」として捉えたいと思います。売上や利益を営業の管理指標にしている例が少なくありませんが、売上利益は結果であって、それを管理しても営業の観点では意義に乏しいと言えます(もちろん経営の観点では重要です)。売上利益をあげるための営業活動をステップ化し、それぞれのステップに目標となるKPIを設定しましょう。分かりやすい例としては訪問数キーパーソンへの提案数などです。そういったことを先行指数として管理していくことが営業の結果につながっていきます。

また、インセンティブ制度も重要です。営業結果を出した担当者には何かしらのかたちできちんと報いる制度を作ることが営業力強化にもつながります。

成長している企業での取締役会、経営会議そして営業会議でも、戦略に関する事項に議論が集中する場面を多々見てきました。しかし、結果を出していく企業は必ず兵隊=実行策についてもしっかりと議論し仕組みを作っています。そして実行策の代表格のひとつが「営業」です。私は営業なくして成長なし、と考えています。

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2021年12月25日土曜日

事業計画の作り方23 後継者の方向け(11) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析6 内部環境分析(4) 代表的フレームワーク(後)

今回は前回に引き続き、内部環境分析の代表的フレームワークについての解説です。

今回は複数の事業を行っている場合や、複数の製品を取り扱っている場合に知っておくべき「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」について解説します。

1.前提知識

PPMの解説の前に前提知識として知っておくべき事項があります。以下の3つです。簡単に説明します。

(1)プロダクトライフサイクル(PLC)

製品を市場に投入してから撤退するまでを導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに分け、その製品の売上と利益・キャッシュフロー(CF)の状況を元に、どの時期に位置づけられるかを表すものです。導入期は当然ながらまだ売上は少ない上に、製品製造の効率がまだ低かったり広告宣伝費が必要であったりすることで、利益もCFはマイナスの段階です。成長期売上は増加傾向にあり、製造原価率は低下する方向にありますが、営業関連費用などがまだまだ多く必要で、利益・CFもマイナスかゼロ付近である段階です。成熟期は一般に市場自体の成長率が低くなったり、製品に対する認知が広がったりすることで売上は他の期よりも多く安定的です。そのため営業関連費用は減少傾向にあり、売上原価率も引き続き低下している状態です。そのため、利益・CFはプラス且つ安定的である段階です。衰退期は売上は減少傾向になり、費用も減少傾向ですが売上の低下を補うほどではなく、利益・CFも減少傾向となる段階です。

(2)経験曲線効果

過去から現在までのある製品の生産量(累積生産量)が多くなると、製造原価が逓減(単位当たりの生産コストが低下)することを意味します。熟練化、専門化、改善などのキーワードで説明されます。

(3)戦略事業単位(SBU)

定義がやや難しく、一般的には「企業が全社的な戦略実行のために設ける、独立した事業の単位」などと言われますが、PPMを理解する上では「単なる事業の単位」、つまりは、事業部などのことを意味すると考えていただいて差し支えありません。


2.プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

有名なボストン・コンサルティング・グループが開発した、戦略策定のための考え方で、複数の事業を行っている場合の経営資源の配分をどうするかを考え、決定する際に使用する枠組みのひとつです。当然ながら現状分析にも活用でき、現在の自社のそれぞれの事業や製品がどの象限に該当し、どう会社に貢献しているか、今後はどうか、という視点で利用します。

なお、PPMでは「相対的市場占有率(相対的市場シェア)」という言葉が出てきます。単なる「市場占有率(市場シェア)」ではありません。相対的市場占有率とは、市場占有率首位の企業の市場占有率に対し、自社の市場占有率がどの程度かを比較し計算した指標です。首位企業の市場占有率が50%であるのに対し、自社のそれが20%であれば、相対的市場占有率は40%と計算できます。相対的市場占有率と単なる市場占有率の違いを理解していない解説が散見されますのでご注意ください。ではなぜPPMでは「相対的市場占有率」を使用するかと言えば、端的に言えばそれを経験曲線効果の根拠として利用するからです。経験曲線効果が見られるか否かは、競合企業との比較による相対的なものです。企業数が多くて競争が激しく首位企業でも市場占有率が5%、二位企業は1%しかない状態が続いている業界を事例で考えて見ると、単純計算で首位企業は二位企業の5倍の累積生産量を持っており、それだけの経験曲線効果が生じていると考えることができます。これを相対的市場占有率ではなく、単なる市場占有率で捉えてしまうと、首位企業でも累積生産量が少なく経験曲線効果はない、などと誤った捉え方をしてしまう可能性があります。

(1)花形

花形というのは図で分かるとおり、市場成長率が高く、相対的市場占有率も高い事業や製品のことで、その事業や製品は言葉どおり「花形」と言えます。プロダクトライフサイクル上は成長期に該当し、資金流入は増加傾向にありますが、まだまだ投資や費用が必要で、利益やCFの面では大きなプラスにはなっていません。しかし、相対的市場占有率を維持・向上しるつ成熟期を迎えることができれば、投資や費用を減少させることができ、利益やCFを生み出す「金のなる木」になることができる可能性があります。

(2)金のなる木

市場成長率が低く、相対的市場占有率が高い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の成熟期に該当するため、他の期と比べ大きな利益・CFを生み出すことができます。いわゆる収穫期です。ここで収穫したキャッシュを花形に投じて金のなる木を目指したり、問題児に投じて花形に育てることを目指したりすることができます。

(3)問題児

市場成長率は高いものの、相対的市場占有率は低い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の導入期もしくは成長期初期に該当します。投資や費用が必要で資金流出が大きい一方、売上はまだ小さいので利益・CFはマイナスの段階です。ただし、市場成長率が高いので投資を継続し、問題児→花形→金のなる木となるよう目指します。

(4)負け犬

市場成長率は低く、相対的市場占有率も低い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の衰退期に該当します。また、問題児から花形に育つことができなかった事業やそもそも参入に失敗した事業なども該当するでしょう。資金の流出も少なく、利益・CFだけ見ると大きな赤字ではないこともあるため現状維持とされることも少なくありませんが、将来性もありませんし、資本コストの面で見ると必要な利益率などを満たしていないなどの可能性もありますので撤退を検討すべき状態です。


このように複数事業を行う企業の事業単位・製品単位の分析に活用できる枠組みですが、以下のような問題点も指摘されています。
  • 事業や製品化の相乗効果(シナジー)などが反映されない。
  • 市場成長率の予測が難しい。
  • 経験曲線効果が発生しない業界には適用できない。

今回は以上です。次回は「M&Aのデューデリジェンスの手法を活用した分析」について解説予定です。

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2021年12月20日月曜日

事業計画の作り方・番外編 起業前の方向け 優れた起業家に共通する事項とは?


さて今回は、優れた起業家に共通する事項について考えてみたいと思います。なお、本記事では「経営者」と「起業家」という言葉をあえて区別せずに使用しています。ご了承ください。

優れた起業家とは?大きなビジョンや夢がある、経験豊富、若くて行動的、MBAホルダー、営業力がある、数字に強い……など挙げればキリがありません。今回は起業家の資質として以下の6項目を挙げました。優れた起業家の条件として、多くの場合、経験、知識、スキルや人脈などが挙げられますが、それらは必要条件であっても十分条件ではありません。今回挙げた以下の項目は、捉えようによっては精神論的に聞こえるかもしれませんが、これらが備わっていてはじめて、経験、知識、スキルや人脈が活きてくるものと考えます。


(1)実現したい夢や目標がある

いくら経験豊富で、能力が高くとも、実現したい夢や理想がなければ事を成し遂げられません。私の好きな言葉をを引用します。引用中、敬称略。
夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。吉田松陰

夢しか実現しない。福島正伸

起業を志しているみなさんには、これらを「夢なき起業家に成功なし」と読み替えていただきたいと思います。成し遂げたいことがあるからこそ、手段として起業を選んでいる方から見たら当然のことと思えるかもしれません。しかし実際には起業が目的化している事例も少なくありません。


(2)決断力がある

いくら大きな夢や高い理想があっても、貫き通す「強い心」がなければ成し遂げることはできません。では強い心とはどういう意味でしょうか?ここでは「決断力」と読み解きたいと思います。

起業家が備えるべき決断力とは「失敗を恐れない心」とも言い換えることができます。起業家にとって決断力が重要なのは言うまでもありませんが、ここで言う決断力は、「正しい決断を下す力」とは少し違います。まず「決断する力」があり、その上で「正しい決断を下す力」が活きるのです。この順番を間違えると正しい決断をする力はあるものの、そもそも決断する力がない、ということになりかねません。

失敗を恐れる者は「正しさの追求」を言い訳にして決断を下さなかったり、先延ばししたりします。情報をもっと集めよう、様子を見よう、もっと考えたいなどの言い訳が典型的です。旧日本軍の失敗を見てもわかるとおり、情報はとても大切ですので軽視してはなりません。ただ、ほぼ全ての場面で必要な情報が満足いく程度まで集まるようなことはありません。常にいくつかの情報は不足するものです。また、そもそも「熟慮すれば正しい判断ができる」と考えている時点で、それは多くの場合、傲慢にすぎないのです。

決断を先延ばしにして立ち止まる癖がついた者よりも、意思決定を積極的に行う仮説検証・試行錯誤型の者こそ、起業家の資質を持っていると言えます。

もし失敗したら?大丈夫、「世の中に失敗というものはない。チャレンジしているうちは失敗はない。あきらめた時が失敗である。(稲盛和夫)」


(3)自省する力がある

次に、「自省する力」を取り上げたいと思います。自らの言動や行動を反省し、己の力不足を認めずして成長はありえません。まずは自分が「知らない」ことを知る。ソクラテスの「無知の知」、論語の「これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らざるとなせ。これ知るなり」など、繰り返し説かれてきたことです。

そして「うまくいったらみんなのおかげ、失敗したら自分のせい」を心得ましょう。起業家自身を「褒めて伸ばす」のは単なる甘えです。優れた起業家は、自省する習慣を持っています。もちろん、役職員に対してはぜひ「褒めて伸ばす」を実践して欲しいと思います。


(4)学びと実践を繰り返す

「実践主義者」と呼ばれる人がいます。机上で考えているだけで実際の行動に移せないのはたしかに良くありませんが、実践主義の人が陥りがちなのが、経験のみを重視しすぎる点です。起業家には経験や実践だけでは足りません。経営学と実際の経営は違うと考え、経営学をきちんと学ばない起業家も少なくありませんが、非常にもったいないことです。

優れた起業家は、学びと実践、その間を行ったり来たりして、自分が経験したことの本当の意味を知ったり、事前に得た知識をもとに経験をより充実させたりしています。


(5)考えの枠組みや軸を持っている

アニマルスピリットを持つからか、野性的勘を発揮する起業家も多いようです。世の中、すべてが理屈で片付くわけではないので、鋭い勘も重要です。しかし、優れたは自分の勘も大切にしつつ、自分なりの考え方に「枠組み」や「軸」を持っています。判断に迷ったときの寄る辺となるものです。

考えの枠組みや軸とは、経営関連書籍ではいわゆる「フレームワーク」として解説されているものもそれに当たります。「目標から遡って考える」、「趣旨から考える」、「原則と例外」、「正攻法と奇策の組み合わせ」、「選択と集中」、「論理と直感」など、経営の様々な場面で活用することができます。


(6)したたかである

夢が大きく失敗を恐れず、自身を省みながら、勉強熱心で考え方に軸もある。実はこれでも優れた起業家とは必ずしも言えません。そこには「したたかさ」が足りないことが多いからです。

優れた起業家のしたたかさとは?まずは「役割を演じられる」ことです。素のままの自分が起業家に向いている、という人もいるとは思います。しかしそれは極めて限られた人だけに言えることです。起業家は思い通りにはいかない事柄に多い環境の中で、「起業家たるものこうあるべきだ」という考えの下に、その場に応じた役割を演じなければなりません

次に「愛情深いが、冷酷にもなれる」二面性です。綺麗ごとしか言えない起業家は成功しません。二面性という意味では、人に見せない「欲」も重要な原動力です。夢だって欲のひとつと言えます。したたかな起業家は表には出さない一面を持ち、そのこと自体が人間としての魅力を高めることにもつながっていたりします。


優れた起業家に共通する事項はこれだけではありませんし、逆にこれが全て揃っている必要があるわけでもありません。しかしそれでも多くの起業家に共通すると私は考えています。起業家予備軍のみなさんのお役に立てば幸いです。

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2021年12月18日土曜日

事業計画の作り方22 後継者の方向け(10) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析5 内部環境分析(3) 代表的フレームワーク(前)

内部環境分析についての解説の一回目で触れたとおり、前回の「経営面・業務面・人事面に分けた分析」に引き続き、内部環境分析の代表的フレームワークについて解説します。

今回は、経営資源の優位性を分析する「VRIO分析(VRIOフレームワーク)」、自社のどの活動で価値を生み出しているかを分析する「バリューチェーン分析」について解説し、次回は複数の事業を行っている場合に知っておくべき「プロダクトライフサイクル」、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」、「ビジネススクリーン」について解説します。

1.VRIO分析

VRIO分析は、企業の競争優位性の源泉を経営資源に求める考え方(リソースベースドビュー)に基づく代表的フレームワークです。内部環境分析に利用されるフレームワークですが、競合他社との比較といった外部環境を加味できるところも特徴のひとつです。なお余談ですが、リソースベースドビューとよく比較される考え方に「ポジショニングアプローチ」があります。これは、企業の競争優位性の源泉を市場における自社の位置づけに求める考え方で、以前説明した5フォース分析などがその代表的フレームワークです。

一般的には「VRIO=ブリオ」と読み、「Value」、「Rarity」、「Imitability」、「Organization」の頭文字をとったものです。それらひとつひとつ、そしてその組み合わせが企業の競争優位性を生み出していると考えます。ひとつずつ説明します。

(1)Value 価値・経済性

人的リソース・物的リソース・財務リソース・情報リソース(いわゆる、ヒト・モノ・カネ・情報)について、経済的な価値があり、事業機会を逃さずに最大限に活用できるか、ということを意味します。少し分かりにくいので言い換えると「その経営資源がない場合と比べ、企業価値は大きく増加するか」という問いに「YES」で答えられる場合は「価値・経済性あり」と考えます。

(2)Rarity 希少性

自社の属する業界において希少性はあるか、ということを意味します。競合他社の中で少数の企業しか希少性を持ち合わせていない場合は「希少性あり」と考えます。

(3)Imitability 模倣困難性

他社・他者が模倣することは容易か困難か、ということを意味します。言い換えると「他社・他者がその事業を模倣するにはどの程度の投資、費用や経営資源が必要か」という意味で「投資対効果などの観点で多大な投資等が必要となる」と回答できる場合は「模倣困難性あり」と考えます。模倣困難性は「歴史的経緯」、「ブラックボックス」、「複雑性」、「知的財産権による保護」というキーワードが重要です。歴史的経緯は、ある企業独自の歴史的要因が模倣困難性の理由となっているということを意味します。ブラックボックスは、経営資源の調達や運用の曖昧さなど、社外から見た場合に理解しにくいことが模倣困難性の理由となっていることを意味します。複雑性は、社会的要因、政治的要因などが複合的に絡み合っていることが模倣困難性の理由となっていることを意味します。そして最後は、知的財産権による保護が模倣困難性の理由となっていることを意味します。

(4)Organization 組織・体制

企業の競争優位性をもたらす経営資源を保有していても、それを活かすことができる組織・体制になっていないと本当の競争優位とは言えません。組織としての方針が定められ、意思決定が迅速に行われ、経営資源利用の手続き・フローが整備されており、組織内の誰でもその経営資源を利用できるようになっている状態が求められます。

VRIO分析は、V→R→I→Oの順番で分析します。「V」にYESで回答できる場合は「R」に進み、そこもYESであれば次は「I」に・・・・という流れです。以下の表をご覧になると、分析の流れと、その評価(自社の競争優位の状態)についてご理解いただけると思います。
VRIO分析を行う場合にいくつか注意点があります。
  • 分析結果は永続的なものではないため、継続的に行っていく必要があります。外部環境は変化しますし、同様に顧客の価値観や価値基準も変化します。
  • 外部パートナーのリソースは含めないで分析する必要があります。「自社でコントロールできる」ことが内部環境分析の対象の前提です。

2.バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、企業活動のどこに価値があるか、企業活動を通じてどのように価値が創出されているかを分析するフレームワークです。さらには、競合企業が模倣できない価値を創出することを目的とします。また、前回の「業務面の分析」がそれぞれの業務の強み・弱みを分析するための方法であったのに対し、バリューチェーン分析は企業のそれぞれの活動・機能の流れやつながり方に注目した分析と言えます。ですので、個々の活動・機能の分析だけではなく、企業活動全体を俯瞰し、整合性をとるように分析していくことが重要です。

バリューチェーン分析の基本形は以下の図のとおりです。このフレームワークは最初に製造業を想定して考えられたようで、当然ながら全ての企業に当てはまるわけではありません。基本形を参考に、それぞれの企業ごとに自社の活動の流れを考える必要があります。

(1)主活動

その活動が直接的に価値を生み出す活動のことを主活動と定義します。
上記の図で言うと、「購買物流→製造→出荷物流→マーケティング・販売→サービス」です。

(2)支援活動

企業の活動は主活動だけでは完結しません。主活動を支え、より円滑に活動できるようにするための活動を支援活動と呼びます。上記の図で言うと、「全般管理(インフラストラクチャー)」、「人事・労務管理」、「技術開発」、「調達活動」がそれに当たります。

(3)分析の手順

以下のような流れで分析を行います。
 (a)提供価値の理解
 (b)活動の分解(主活動)
 (c)支援活動(主活動以外の活動)の特定と定義
 (d)ベンチマーク対象・比較対象となる企業の特定
 (e)事実や数値(費用・時間など)の洗い出し
 (f)各活動の分析(強み弱み分析、VRIO分析)
 (g)分析結果の意味の考察

(4)バリューチェーン分析を行うメリット

自社の提供価値の源泉を論理的に説明できるようになります。また、自社の提供価値の源泉だけでなく、競合企業の提供価値の源泉を分析することができます。さらには、今後の経営資源配分や、M&A戦略立案につなげることができる、というメリットもあります。

(5)注意点

単一機能の優位性は他社も模倣しやすく、持続的な競争優位を確立できません。そのため、複数の機能での優位性保持が必要です。また、企業の活動全体として価値が高まるよう、各機能・活動の整合性あるつながりが必要です。