本記事は過去の記事の内容を「事業計画の作り方」シリーズ向けに加筆・修正したものです。
今回は「営業」について考えます。事業計画の作り方シリーズ本編の営業に関する記事と合わせてご覧ください。
営業に関するありがちな勘違い
起業前後の方が意外と軽視もしくは楽観視する事項として「営業」があります。次のようなことに思い当たる節はないでしょうか?- 私の製品は最先端な技術、他に例を見ない技術が元になっており、競争力がある(ので売れるはず)。
- ターゲット顧客にヒアリングした結果、評判が良かった(ので売れるはず)。
- 大きな会社が販売代理店になることになっている(ので売れるはず)。
- 全国に代理店網を構築できる(ので売れるはず)。
- マーケティングは完璧である(ので売れるはず)。
- 当社の製品は競合他社の製品よりはるかに安い(ので売れるはず)。
もちろん上記の事項は製品やサービスが売れるために望ましい事項ではあります。ただ、それだけでは足りません。そこには「営業」の機能が足りないもしくは存在していません。良い製品やサービスであれば顧客の方から探し出してくれるかのような勘違いも耳にすることが多いですが、ほとんどの場合、何等かの営業活動を行わなければ顧客に知ってもらうことができず、結果として売上は増えません。これは取り扱う製品やサービスが本当に日本一・世界一でも同様です。日本は経済が停滞しているとはいえ、やはりすごい国で、世界有数の製品やサービスを広めようとしている企業は多くあります。しかし、そのような企業でも多くの場合は苦戦し、中には事業継続を断念する事例もあるのです。理由は様々ですが、「営業」の機能が足りないもしくは存在していない、という理由によるものの割合は大きいと考えます。
戦略がなく敗れ去った国家や軍隊の話は歴史でもよく登場しますが、起業間もない事業者の売上が伸び悩むのは、実はそれとは逆で戦略しかないことが原因であることが少なくないと考えています(戦略すらない事例も残念ながらあります)。私はそれを「戦略あって兵隊なし」と表現しています。本当は「戦略あって実行なし」や「戦術なし」でも構わないのですが、分かりやすい言葉として「兵隊なし」としています。ここでは「兵隊=実行策」であり、その中で最も重要なもののひとつが営業なのです。
起業家の中での営業の位置付け
まずは、多くの起業家にとっての営業の位置付けについて見てみましょう。繰り返しになりますが、実は営業を軽視する起業家は多いのです。起業家は、プログラマー、コンサル、技術者やマーケターなど様々な背景を持っていますが、意外に少ないのが営業出身者。そのため、営業について軽視もしくは楽観視している事例が多く見受けられますし、たとえ営業にも意識が向いていてもその役割は重視されていないことも多くあります。しかし、起業後、製品やサービスが販売できる状態になる以前に営業を重視した社内体制を構築すべきです。マーケティングの究極の目的は、製品やサービスが「売れる」状態を作り出すことですが、それを実現できている企業は決して多くはありません。また、製品やサービスは常に顧客の声を聞いて改良していく必要があります。今では「顧客開発モデル」などの優れた手法もありますが、実際の販売開始以降は、顧客の声は営業部門に一番多く集まります。どんなビジネスでも「顧客」がスタートラインなのです。そこに一番近い場所にいる営業部門を重視しなくて良いなどと言ったことはありえません。
早速今から営業の位置付けについて考えてみて欲しいと思います。
まずは「直販」からはじめる
営業や営業部門の重要性を理解している場合、まずは「直販」と呼ばれる営業方法から開始することが望ましいと考えられます。これは「現場主義」の営業場面での体現といえます。直販を行うことは営業担当者がいなくても実施可能です。営業は重要なものなので経営者自身が行うに十分に値します。
そこで知るべきは本当の顧客のニーズだけではなく、どうやったら顧客の感動を得られるか、どのような流れ、方法やステップで顧客の感動を得たか、その中で重要なポイントはどの部分か、などです。直販を最初に行うべき理由はここにあります。
営業経験のない経営者が、自社の商品やサービスの販売を開始する際、いきなり代理店網を構築しようとすることがあります。はっきり言ってしまうとそれは成功する可能性が極めて低いです。代理店は一度契約すれば後は黙って製品やサービスを販売してくれる存在ではありません。代理店となる企業はほとんどの場合、あなたの会社以外とも代理店契約を結んでいるのです。そして、取り扱う製品やサービスは多岐にわたります。そういった中、代理店自身の利益を考えた場合、代理店は当然ながら、売りやすいもの、利益率が高いものを優先して販売していきます。あなたは代理店に対し、自社の製品やサービスの販売を強化してもらえるよう働きかけるでしょう。そのときに重要になるのが、あなたの会社が直販で培ったノウハウなのです。代理店に対しそのノウハウを提供していくことで、あなたの会社の製品やサービスは、代理店にとって売りやすいものとなっていきます。こういった取り組みがあって初めて代理店網が活きてくるのです。
代理店の活用は掛け算に似ています。あなたの会社の営業力がゼロであれば、どんなに立派な代理店網を構築しても、掛け算した結果は変わらずゼロになるにすぎません。必ず、まずは直販からはじめましょう!
営業は仕組みづくり
営業活動を強化する際にありがちな間違いが、いわゆる「スーパー営業マン」を採用したり育てたりしようとすることです。営業の世界にはそういった方達が少なくないですし、そういった方達は尊敬すべき対象です。ですが、そういった方達の営業ノウハウはその方達にしかできないことが多く、営業ノウハウはブラックボックスになりやすいと言われることもあります。そのため、会社を継続的に成長させるためには、スーパー営業マンにしかできない方法を追い求めるのではなく、教育訓練さえすれば誰にでも実施可能な方法の積み上げで構築された営業組織を作る必要があります。つまりは、属人的な営業ではなく、組織的な営業を行う体制が望ましいといえます。組織的な営業活動を行うために最低限必要となるのがたとえば次の機能です。- 営業のステップ化とKPI目標設定
- 営業力強化目的とした営業会議(ただの報告や情報共有を目的としない)
- インセンティブ制度
- 営業力強化の取り組み(教育)
KPIはいろいろ定義や使われ方がありますが、ここでは「先行指数」として捉えたいと思います。売上や利益を営業の管理指標にしている例が少なくありませんが、売上利益は結果であって、それを管理しても営業の観点では意義に乏しいと言えます(もちろん経営の観点では重要です)。売上利益をあげるための営業活動をステップ化し、それぞれのステップに目標となるKPIを設定しましょう。分かりやすい例としては訪問数やキーパーソンへの提案数などです。そういったことを先行指数として管理していくことが営業の結果につながっていきます。
また、インセンティブ制度も重要です。営業結果を出した担当者には何かしらのかたちできちんと報いる制度を作ることが営業力強化にもつながります。
成長している企業での取締役会、経営会議そして営業会議でも、戦略に関する事項に議論が集中する場面を多々見てきました。しかし、結果を出していく企業は必ず兵隊=実行策についてもしっかりと議論し仕組みを作っています。そして実行策の代表格のひとつが「営業」です。私は営業なくして成長なし、と考えています。
また、インセンティブ制度も重要です。営業結果を出した担当者には何かしらのかたちできちんと報いる制度を作ることが営業力強化にもつながります。
成長している企業での取締役会、経営会議そして営業会議でも、戦略に関する事項に議論が集中する場面を多々見てきました。しかし、結果を出していく企業は必ず兵隊=実行策についてもしっかりと議論し仕組みを作っています。そして実行策の代表格のひとつが「営業」です。私は営業なくして成長なし、と考えています。
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