NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2021年12月7日火曜日

事業計画の作り方19 後継者の方向け(7) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析2 外部環境分析

前回は「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」の全体像について解説しました。今回は、その内、外部環境分析について解説します。

1.外部環境とは?

まずは外部環境とはどういった意味で、具体的にはどのような事項を意味するのでしょうか?前回の記事では単に、「自社の環境のうち、自社でコントロールするのが難しい事項」といった意味合いでご紹介しました。言葉の定義自体としては実務上はこの理解で問題ありません。一方で、具体的に何を指すのか、については基本を正確に理解しておき、且つ自社の場合はそこに過不足がないか、を考えることが重要です。伝統的には以下の事項が外部環境の基本的要素と言われています。
  1. 顧客
  2. 顕在的競合事業者
  3. 潜在的競合事業者
  4. 仕入先事業者
  5. 販売先事業者
  6. 流通事業者
  7. 経済的環境
  8. 政治的・法律的環境
  9. 人口動態的環境
  10. 社会的・文化的環境
  11. 技術的環境
  12. 自然環境
ここに、近年重要性が高まっている「13.経済安全保障」や「14.SDGs」などの横串を通す視点も忘れてはなりません。横串を通すとMECEではなくなってしまいますが、経済安保やSDGsについては上記伝統的要素での分類はうまく対応できませんし、「漏れ」を回避する方が「ダブり」を気にするよりも遥かに重要です。

さて、上記伝統的要素の内、1~6をミクロ的外部環境、7~12をマクロ的外部環境といったようにグルーピングできます。自社でコントロールするのが難しいのが外部環境、と説明しましたが、マクロ的外部環境とミロク的外部環境の間にはコントロール可否の度合いに違いがあります。マクロ的外部環境に自社から働きかける方法は限定されていますが、ミクロ的外部環境についてはコントロールが難しいとは言え、積極的な働きかけが必要です。

(1)顧客

顧客については、起業前の方向けの回でも解説していますので、そちらもご確認ください。
まずは「顧客は誰か」ですが、後継者の方がいらっしゃる企業の場合、すでに顧客が存在しますので、ポジショニングマップをいろいろな切り口で考えることができるはずです。ビジネスモデルによっては「顧客(実際に費用を負担する)」と「ユーザー(利用はするが費用は負担しない)」が異なる場合もありますので、定義をあいまいにしておかないことも大切です。「顧客のニーズ」や「価値提案」についても、知っているつもりにならずに一から分析しなおす、くらい行っても良いと思います。ここがしっかり理解できていないと後々、「自社の強み」を正しく把握できなくなってしまいます。

(2)(3)競合事業者

競合事業者については、「顕在化している競合」と「潜在的競合」を分けて分析することをおすすめします。「潜在的競合」とはファイブフォース分析に出てくる「新規参入者」と「代替品」を合わせたものに近い意味合いです。「自社の製品やサービス」を起点に考えると顕在的競合にしか考えが及びません。ですので競合について考える際には「顧客のニーズ」を起点に考える必要があります。こちらの記事もご確認ください。

(7)経済的環境

マクロ経済学の教科書に出てくるような事項、日本経済新聞で頻繁に取り扱われるような事項と理解しておけば良いでしょう。主なものはGDP、経済成長率、景気動向、消費、設備投資、政府支出、輸出入、税制、物価、為替、株価、金利、日銀短観、失業率、鉱工業指数などです。現在の水準がどうか、だけではなく、今後の推移はどのように予測され、その理由は何か、まで分析しましょう。もちろん、専門家でない限り実際の分析は難しいので、特定のエコノミストなどの発言や見解を追う、といった方法をとることもあります。

GDPや経済成長率といった話は規模が多すぎて自社には関係ないと思われがちですが、それらはたとえば、消費、設備投資、政府支出、輸出入などで構成される総合的な指標ですので、仕組みは理解しておくべきです。大学一年生が読む程度の経済学の基本テキストは理解しておいた方が良いですし、自社の事業にどう影響してくるかの仕組みについても学んでおきましょう。

(8)政治的・法律的環境

政策、規制、法律改正、政権交代、外交などがキーワードとして挙げられます。よほど新しい業界でもない限り、「現在の政策や規制」について知らない、ということはあまり多くはありませんが、内容のアップデートや、改革・改正の方向性などについてはカバーできていないことが多いようです。新聞に目を通すだけではなく、業界団体の勉強会に出席したり、業界紙で情報収集したりする必要があります。また、各省庁の各種研究会の議事録やパブリックコメントなどをウォッチしておくのも良い手段です。

(10)社会的・文化的環境

文化の変遷、教育、犯罪、世間の関心などがキーワードとして挙げられます。

(11)技術的環境

ものづくりの技術などももちろん大切ですが、忘れてはならないのが、IT化、DX化、AIやバーチャル技術、量子関連技術など現在進行形の技術や、その次に高い可能性で訪れるであろう技術についての環境分析です。

(13)(14)経済安全保障やSDGsなどの新しい流れ

複数の上記伝統的要素に関係していますので、「ダブり」を気にすることなく独立した項目として分析を行うべきです。特に脱炭素と人権については急速に環境が変化していますし、個々の事業への影響も大きいので要注目です。新しい流れについては日本国内の論調だけを見ていると、重要性、方向性やスピード感を見誤ってしまう可能性があるので、海外の記事や、国内でも先進的と言われる企業や専門家の動向をチェックしておくことをおすすめします。


2.代表的フレームワーク

外部環境分析のフレームワークとして知っておくべきなのは、マクロ外部環境分析の「PEST分析」とミクロ外部環境分析の「ファイブフォース分析」です。経営に関する書籍などでは必ず触れられているフレームワークなのでご存知の方も多いと思います。

(1)PEST分析

PEST分析は、政治的要因(Politics)、経済的要因(Economics)、社会的要因(Society)、技術的要因(Technology)という4つの要素でマクロ外部環境分析を行うフレームワークです。一般的には「ペスト」と読みます。

各要素については、分類に違いがありますが、上記「7.経済的環境」以降の要素についての説明を参照してください。なお、PEST分析を行う際には、各要素ごとに「自社にとって追い風となる事項」、「自社にとって向かい風となる事項」に分けて整理しておくと後で活用がしやすくなります。

(2)ファイブフォース分析

自社の所属する業界の収益性を決定する要因を分析するフレームワークで、ミクロ的外部環境分析を行うツールとして活用されます。

ファイブフォース分析は「外部環境の中では比較的働きかけがしやすく、働きかけをすべきミクロ的外部環境分析」に関するものですので、単に分析を行うだけでなく、それぞれの要素に適切な働きかけを行うことで、収益性を維持・向上させていくための行動計画立案のツールともなります。

競合企業」とは、すでに競争が顕在化している「業界内の競争環境」を意味します。業界内の社数が多い、会社規模が似通っている、差別化できる要素が少ない、市場規模が拡大しにくい、撤退障壁がある、などの状態だと業界内の競争が激しいことが多いです。

サプライヤー」とは供給業者や仕入れ先のことを意味しており、サプライヤーの社数が少ない、サプライヤーの技術や材料が他に替え難い、などの状態だとサプライヤーの交渉力が相対的に自社より強く、高い価格での仕入れとならざるを得ないなどの可能性があります。販売先を意味する「バイヤー」についても同様です。

新規参入事業者」について考える際には、参入障壁の高さについての視点を持っておくことが重要ですし、「代替品」については、それが存在しないと短絡的に考えずに「顧客のニーズを満たすことができる、他の製品やサービスはないか」を常日頃ウォッチしておくことが重要です。

ファイブフォース分析もPEST分析と同様に各要素ごとに「自社にとって追い風となる事項」、「自社にとって向かい風となる事項」に分けて整理しておくと後で活用がしやすくなります。

次回からは内部環境分析についての解説を予定しています。
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