NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2021年12月25日土曜日

事業計画の作り方23 後継者の方向け(11) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析6 内部環境分析(4) 代表的フレームワーク(後)

今回は前回に引き続き、内部環境分析の代表的フレームワークについての解説です。

今回は複数の事業を行っている場合や、複数の製品を取り扱っている場合に知っておくべき「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」について解説します。

1.前提知識

PPMの解説の前に前提知識として知っておくべき事項があります。以下の3つです。簡単に説明します。

(1)プロダクトライフサイクル(PLC)

製品を市場に投入してから撤退するまでを導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに分け、その製品の売上と利益・キャッシュフロー(CF)の状況を元に、どの時期に位置づけられるかを表すものです。導入期は当然ながらまだ売上は少ない上に、製品製造の効率がまだ低かったり広告宣伝費が必要であったりすることで、利益もCFはマイナスの段階です。成長期売上は増加傾向にあり、製造原価率は低下する方向にありますが、営業関連費用などがまだまだ多く必要で、利益・CFもマイナスかゼロ付近である段階です。成熟期は一般に市場自体の成長率が低くなったり、製品に対する認知が広がったりすることで売上は他の期よりも多く安定的です。そのため営業関連費用は減少傾向にあり、売上原価率も引き続き低下している状態です。そのため、利益・CFはプラス且つ安定的である段階です。衰退期は売上は減少傾向になり、費用も減少傾向ですが売上の低下を補うほどではなく、利益・CFも減少傾向となる段階です。

(2)経験曲線効果

過去から現在までのある製品の生産量(累積生産量)が多くなると、製造原価が逓減(単位当たりの生産コストが低下)することを意味します。熟練化、専門化、改善などのキーワードで説明されます。

(3)戦略事業単位(SBU)

定義がやや難しく、一般的には「企業が全社的な戦略実行のために設ける、独立した事業の単位」などと言われますが、PPMを理解する上では「単なる事業の単位」、つまりは、事業部などのことを意味すると考えていただいて差し支えありません。


2.プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

有名なボストン・コンサルティング・グループが開発した、戦略策定のための考え方で、複数の事業を行っている場合の経営資源の配分をどうするかを考え、決定する際に使用する枠組みのひとつです。当然ながら現状分析にも活用でき、現在の自社のそれぞれの事業や製品がどの象限に該当し、どう会社に貢献しているか、今後はどうか、という視点で利用します。

なお、PPMでは「相対的市場占有率(相対的市場シェア)」という言葉が出てきます。単なる「市場占有率(市場シェア)」ではありません。相対的市場占有率とは、市場占有率首位の企業の市場占有率に対し、自社の市場占有率がどの程度かを比較し計算した指標です。首位企業の市場占有率が50%であるのに対し、自社のそれが20%であれば、相対的市場占有率は40%と計算できます。相対的市場占有率と単なる市場占有率の違いを理解していない解説が散見されますのでご注意ください。ではなぜPPMでは「相対的市場占有率」を使用するかと言えば、端的に言えばそれを経験曲線効果の根拠として利用するからです。経験曲線効果が見られるか否かは、競合企業との比較による相対的なものです。企業数が多くて競争が激しく首位企業でも市場占有率が5%、二位企業は1%しかない状態が続いている業界を事例で考えて見ると、単純計算で首位企業は二位企業の5倍の累積生産量を持っており、それだけの経験曲線効果が生じていると考えることができます。これを相対的市場占有率ではなく、単なる市場占有率で捉えてしまうと、首位企業でも累積生産量が少なく経験曲線効果はない、などと誤った捉え方をしてしまう可能性があります。

(1)花形

花形というのは図で分かるとおり、市場成長率が高く、相対的市場占有率も高い事業や製品のことで、その事業や製品は言葉どおり「花形」と言えます。プロダクトライフサイクル上は成長期に該当し、資金流入は増加傾向にありますが、まだまだ投資や費用が必要で、利益やCFの面では大きなプラスにはなっていません。しかし、相対的市場占有率を維持・向上しるつ成熟期を迎えることができれば、投資や費用を減少させることができ、利益やCFを生み出す「金のなる木」になることができる可能性があります。

(2)金のなる木

市場成長率が低く、相対的市場占有率が高い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の成熟期に該当するため、他の期と比べ大きな利益・CFを生み出すことができます。いわゆる収穫期です。ここで収穫したキャッシュを花形に投じて金のなる木を目指したり、問題児に投じて花形に育てることを目指したりすることができます。

(3)問題児

市場成長率は高いものの、相対的市場占有率は低い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の導入期もしくは成長期初期に該当します。投資や費用が必要で資金流出が大きい一方、売上はまだ小さいので利益・CFはマイナスの段階です。ただし、市場成長率が高いので投資を継続し、問題児→花形→金のなる木となるよう目指します。

(4)負け犬

市場成長率は低く、相対的市場占有率も低い事業や製品のことです。プロダクトライフサイクル上の衰退期に該当します。また、問題児から花形に育つことができなかった事業やそもそも参入に失敗した事業なども該当するでしょう。資金の流出も少なく、利益・CFだけ見ると大きな赤字ではないこともあるため現状維持とされることも少なくありませんが、将来性もありませんし、資本コストの面で見ると必要な利益率などを満たしていないなどの可能性もありますので撤退を検討すべき状態です。


このように複数事業を行う企業の事業単位・製品単位の分析に活用できる枠組みですが、以下のような問題点も指摘されています。
  • 事業や製品化の相乗効果(シナジー)などが反映されない。
  • 市場成長率の予測が難しい。
  • 経験曲線効果が発生しない業界には適用できない。

今回は以上です。次回は「M&Aのデューデリジェンスの手法を活用した分析」について解説予定です。

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2021年12月20日月曜日

事業計画の作り方・番外編 起業前の方向け 優れた起業家に共通する事項とは?


さて今回は、優れた起業家に共通する事項について考えてみたいと思います。なお、本記事では「経営者」と「起業家」という言葉をあえて区別せずに使用しています。ご了承ください。

優れた起業家とは?大きなビジョンや夢がある、経験豊富、若くて行動的、MBAホルダー、営業力がある、数字に強い……など挙げればキリがありません。今回は起業家の資質として以下の6項目を挙げました。優れた起業家の条件として、多くの場合、経験、知識、スキルや人脈などが挙げられますが、それらは必要条件であっても十分条件ではありません。今回挙げた以下の項目は、捉えようによっては精神論的に聞こえるかもしれませんが、これらが備わっていてはじめて、経験、知識、スキルや人脈が活きてくるものと考えます。


(1)実現したい夢や目標がある

いくら経験豊富で、能力が高くとも、実現したい夢や理想がなければ事を成し遂げられません。私の好きな言葉をを引用します。引用中、敬称略。
夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。吉田松陰

夢しか実現しない。福島正伸

起業を志しているみなさんには、これらを「夢なき起業家に成功なし」と読み替えていただきたいと思います。成し遂げたいことがあるからこそ、手段として起業を選んでいる方から見たら当然のことと思えるかもしれません。しかし実際には起業が目的化している事例も少なくありません。


(2)決断力がある

いくら大きな夢や高い理想があっても、貫き通す「強い心」がなければ成し遂げることはできません。では強い心とはどういう意味でしょうか?ここでは「決断力」と読み解きたいと思います。

起業家が備えるべき決断力とは「失敗を恐れない心」とも言い換えることができます。起業家にとって決断力が重要なのは言うまでもありませんが、ここで言う決断力は、「正しい決断を下す力」とは少し違います。まず「決断する力」があり、その上で「正しい決断を下す力」が活きるのです。この順番を間違えると正しい決断をする力はあるものの、そもそも決断する力がない、ということになりかねません。

失敗を恐れる者は「正しさの追求」を言い訳にして決断を下さなかったり、先延ばししたりします。情報をもっと集めよう、様子を見よう、もっと考えたいなどの言い訳が典型的です。旧日本軍の失敗を見てもわかるとおり、情報はとても大切ですので軽視してはなりません。ただ、ほぼ全ての場面で必要な情報が満足いく程度まで集まるようなことはありません。常にいくつかの情報は不足するものです。また、そもそも「熟慮すれば正しい判断ができる」と考えている時点で、それは多くの場合、傲慢にすぎないのです。

決断を先延ばしにして立ち止まる癖がついた者よりも、意思決定を積極的に行う仮説検証・試行錯誤型の者こそ、起業家の資質を持っていると言えます。

もし失敗したら?大丈夫、「世の中に失敗というものはない。チャレンジしているうちは失敗はない。あきらめた時が失敗である。(稲盛和夫)」


(3)自省する力がある

次に、「自省する力」を取り上げたいと思います。自らの言動や行動を反省し、己の力不足を認めずして成長はありえません。まずは自分が「知らない」ことを知る。ソクラテスの「無知の知」、論語の「これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らざるとなせ。これ知るなり」など、繰り返し説かれてきたことです。

そして「うまくいったらみんなのおかげ、失敗したら自分のせい」を心得ましょう。起業家自身を「褒めて伸ばす」のは単なる甘えです。優れた起業家は、自省する習慣を持っています。もちろん、役職員に対してはぜひ「褒めて伸ばす」を実践して欲しいと思います。


(4)学びと実践を繰り返す

「実践主義者」と呼ばれる人がいます。机上で考えているだけで実際の行動に移せないのはたしかに良くありませんが、実践主義の人が陥りがちなのが、経験のみを重視しすぎる点です。起業家には経験や実践だけでは足りません。経営学と実際の経営は違うと考え、経営学をきちんと学ばない起業家も少なくありませんが、非常にもったいないことです。

優れた起業家は、学びと実践、その間を行ったり来たりして、自分が経験したことの本当の意味を知ったり、事前に得た知識をもとに経験をより充実させたりしています。


(5)考えの枠組みや軸を持っている

アニマルスピリットを持つからか、野性的勘を発揮する起業家も多いようです。世の中、すべてが理屈で片付くわけではないので、鋭い勘も重要です。しかし、優れたは自分の勘も大切にしつつ、自分なりの考え方に「枠組み」や「軸」を持っています。判断に迷ったときの寄る辺となるものです。

考えの枠組みや軸とは、経営関連書籍ではいわゆる「フレームワーク」として解説されているものもそれに当たります。「目標から遡って考える」、「趣旨から考える」、「原則と例外」、「正攻法と奇策の組み合わせ」、「選択と集中」、「論理と直感」など、経営の様々な場面で活用することができます。


(6)したたかである

夢が大きく失敗を恐れず、自身を省みながら、勉強熱心で考え方に軸もある。実はこれでも優れた起業家とは必ずしも言えません。そこには「したたかさ」が足りないことが多いからです。

優れた起業家のしたたかさとは?まずは「役割を演じられる」ことです。素のままの自分が起業家に向いている、という人もいるとは思います。しかしそれは極めて限られた人だけに言えることです。起業家は思い通りにはいかない事柄に多い環境の中で、「起業家たるものこうあるべきだ」という考えの下に、その場に応じた役割を演じなければなりません

次に「愛情深いが、冷酷にもなれる」二面性です。綺麗ごとしか言えない起業家は成功しません。二面性という意味では、人に見せない「欲」も重要な原動力です。夢だって欲のひとつと言えます。したたかな起業家は表には出さない一面を持ち、そのこと自体が人間としての魅力を高めることにもつながっていたりします。


優れた起業家に共通する事項はこれだけではありませんし、逆にこれが全て揃っている必要があるわけでもありません。しかしそれでも多くの起業家に共通すると私は考えています。起業家予備軍のみなさんのお役に立てば幸いです。

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2021年12月18日土曜日

事業計画の作り方22 後継者の方向け(10) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析5 内部環境分析(3) 代表的フレームワーク(前)

内部環境分析についての解説の一回目で触れたとおり、前回の「経営面・業務面・人事面に分けた分析」に引き続き、内部環境分析の代表的フレームワークについて解説します。

今回は、経営資源の優位性を分析する「VRIO分析(VRIOフレームワーク)」、自社のどの活動で価値を生み出しているかを分析する「バリューチェーン分析」について解説し、次回は複数の事業を行っている場合に知っておくべき「プロダクトライフサイクル」、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」、「ビジネススクリーン」について解説します。

1.VRIO分析

VRIO分析は、企業の競争優位性の源泉を経営資源に求める考え方(リソースベースドビュー)に基づく代表的フレームワークです。内部環境分析に利用されるフレームワークですが、競合他社との比較といった外部環境を加味できるところも特徴のひとつです。なお余談ですが、リソースベースドビューとよく比較される考え方に「ポジショニングアプローチ」があります。これは、企業の競争優位性の源泉を市場における自社の位置づけに求める考え方で、以前説明した5フォース分析などがその代表的フレームワークです。

一般的には「VRIO=ブリオ」と読み、「Value」、「Rarity」、「Imitability」、「Organization」の頭文字をとったものです。それらひとつひとつ、そしてその組み合わせが企業の競争優位性を生み出していると考えます。ひとつずつ説明します。

(1)Value 価値・経済性

人的リソース・物的リソース・財務リソース・情報リソース(いわゆる、ヒト・モノ・カネ・情報)について、経済的な価値があり、事業機会を逃さずに最大限に活用できるか、ということを意味します。少し分かりにくいので言い換えると「その経営資源がない場合と比べ、企業価値は大きく増加するか」という問いに「YES」で答えられる場合は「価値・経済性あり」と考えます。

(2)Rarity 希少性

自社の属する業界において希少性はあるか、ということを意味します。競合他社の中で少数の企業しか希少性を持ち合わせていない場合は「希少性あり」と考えます。

(3)Imitability 模倣困難性

他社・他者が模倣することは容易か困難か、ということを意味します。言い換えると「他社・他者がその事業を模倣するにはどの程度の投資、費用や経営資源が必要か」という意味で「投資対効果などの観点で多大な投資等が必要となる」と回答できる場合は「模倣困難性あり」と考えます。模倣困難性は「歴史的経緯」、「ブラックボックス」、「複雑性」、「知的財産権による保護」というキーワードが重要です。歴史的経緯は、ある企業独自の歴史的要因が模倣困難性の理由となっているということを意味します。ブラックボックスは、経営資源の調達や運用の曖昧さなど、社外から見た場合に理解しにくいことが模倣困難性の理由となっていることを意味します。複雑性は、社会的要因、政治的要因などが複合的に絡み合っていることが模倣困難性の理由となっていることを意味します。そして最後は、知的財産権による保護が模倣困難性の理由となっていることを意味します。

(4)Organization 組織・体制

企業の競争優位性をもたらす経営資源を保有していても、それを活かすことができる組織・体制になっていないと本当の競争優位とは言えません。組織としての方針が定められ、意思決定が迅速に行われ、経営資源利用の手続き・フローが整備されており、組織内の誰でもその経営資源を利用できるようになっている状態が求められます。

VRIO分析は、V→R→I→Oの順番で分析します。「V」にYESで回答できる場合は「R」に進み、そこもYESであれば次は「I」に・・・・という流れです。以下の表をご覧になると、分析の流れと、その評価(自社の競争優位の状態)についてご理解いただけると思います。
VRIO分析を行う場合にいくつか注意点があります。
  • 分析結果は永続的なものではないため、継続的に行っていく必要があります。外部環境は変化しますし、同様に顧客の価値観や価値基準も変化します。
  • 外部パートナーのリソースは含めないで分析する必要があります。「自社でコントロールできる」ことが内部環境分析の対象の前提です。

2.バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、企業活動のどこに価値があるか、企業活動を通じてどのように価値が創出されているかを分析するフレームワークです。さらには、競合企業が模倣できない価値を創出することを目的とします。また、前回の「業務面の分析」がそれぞれの業務の強み・弱みを分析するための方法であったのに対し、バリューチェーン分析は企業のそれぞれの活動・機能の流れやつながり方に注目した分析と言えます。ですので、個々の活動・機能の分析だけではなく、企業活動全体を俯瞰し、整合性をとるように分析していくことが重要です。

バリューチェーン分析の基本形は以下の図のとおりです。このフレームワークは最初に製造業を想定して考えられたようで、当然ながら全ての企業に当てはまるわけではありません。基本形を参考に、それぞれの企業ごとに自社の活動の流れを考える必要があります。

(1)主活動

その活動が直接的に価値を生み出す活動のことを主活動と定義します。
上記の図で言うと、「購買物流→製造→出荷物流→マーケティング・販売→サービス」です。

(2)支援活動

企業の活動は主活動だけでは完結しません。主活動を支え、より円滑に活動できるようにするための活動を支援活動と呼びます。上記の図で言うと、「全般管理(インフラストラクチャー)」、「人事・労務管理」、「技術開発」、「調達活動」がそれに当たります。

(3)分析の手順

以下のような流れで分析を行います。
 (a)提供価値の理解
 (b)活動の分解(主活動)
 (c)支援活動(主活動以外の活動)の特定と定義
 (d)ベンチマーク対象・比較対象となる企業の特定
 (e)事実や数値(費用・時間など)の洗い出し
 (f)各活動の分析(強み弱み分析、VRIO分析)
 (g)分析結果の意味の考察

(4)バリューチェーン分析を行うメリット

自社の提供価値の源泉を論理的に説明できるようになります。また、自社の提供価値の源泉だけでなく、競合企業の提供価値の源泉を分析することができます。さらには、今後の経営資源配分や、M&A戦略立案につなげることができる、というメリットもあります。

(5)注意点

単一機能の優位性は他社も模倣しやすく、持続的な競争優位を確立できません。そのため、複数の機能での優位性保持が必要です。また、企業の活動全体として価値が高まるよう、各機能・活動の整合性あるつながりが必要です。

2021年12月15日水曜日

事業計画の作り方21 後継者の方向け(9) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析4 内部環境分析(2) 経営面・業務面・人事面に分けた分析

内部環境分析の続きです。今回は「経営面・業務面・人事面に分けた分析」について解説します。

前回解説したとおり、内部環境分析を経営面・業務面・人事面に分類して行う方法は、特にフレームワークとして確立されたものではありません。実際に内部環境分析を行うと、多くの場合、製品やサービスの強みや、技術的な強みなどに関心が集まってしまう傾向があったため、議論から漏れ勝ちなものの重要な事項について、「漏れ」が少なく検討できるよう、整理したものです。製品やサービスの強みや、技術的な強みなどについての強み・弱みはそれはそれでとても重要ですので、深堀することをおすすめします。

1.経営面についての内部環境分析

「経営面」というくらいですから、経営者・経営陣に加え、組織体としての会社、という視点で分析を行います。以前にもこのシリーズでご紹介しましたが、よくまとまったものとして、孫子の「組織の優劣」つまりは「道・天・地・将(智信仁勇厳)・法」の枠組みが有用です。孫子はいわゆる兵法書で、以下で説明する内容も、本来は国家同士もしくは軍隊同士の「彼我の優劣を判断するための基準」として考えられたものです。国家や軍単も、企業と同様に「目的を持った組織」として捉えると、企業における彼我の優劣を判断する基準、つまりは内部環境分析の枠組みとして大変参考になります。

」とは「経営者と従業員の一体感」ということを意味しています。なかなか分析しにくいかもしれませんが、あらゆる組織体の活動の基盤となる事項ですのでとても重要です。

」、これについては解釈はいろいろありますが、私は「時間的条件」、「国際・国内情勢」、「経済情勢」などと幅広い意味合いで捉えています。ただし、いずれも「外部環境」に関することなので外部環境分析の際に参考にすることにしましょう。

」とは「地理的条件、立地条件」を意味します。Webの登場や、コロナ禍でのリモートワークやWeb会議の浸透で立地条件の重要性が低下しているようにも見えますが、本当にそうか、という視点で分析しましょう。

」とは「経営者の器量」を意味します。「経営陣の器量」と読み替えても問題ありません。これはさらに智信仁勇厳で構成されます。「」は学ぶことが好きか、物事を明察できる知力はあるか、「」は信用第一に努めているか、「」は愛情深く部下の心情をつかみとることができるか、「」はいざというときの決断力はあるか、困難にくじけない勇気を持っているか、「」は組織規律維持のために厳正な信念をもって禁欲的な態度を率先垂範できるか、を意味します。

」とは「規程、制度、組織原則」を意味します。これが行き過ぎると官僚制の逆機能の一因となってしまいますが、多くの人員で構成される組織を運営するためには一定程度の整備がなされていることが必要です。規程や制度については明文化されている場合は分かりやすいですが、それが明文化されていない場合は分析するのはやや困難です。組織原則も同様に分析にかなり困難が伴いますが、組織の分析としてとても重要です。

また、組織体としての会社の分析、という意味合いで組織図の分析が有用です。中小企業の場合、組織図がないことも多々ありますが、後に解説する業務面についての内部環境分析と合わせ、「現状の実際の組織図」、「現状でのあるべき組織図」をそれぞれ作成することで、「不足している機能や人材」が見えてきます。

「現状の実際の組織図」とは、社内ヒアリングなどを通じて、実際にどの業務をどの部署が担当しているのか、それを誰が管理しているのか、権限はどのようになっているのか、などの情報を集めて、その情報を元に書きます。つまりは現状をありのままに表した組織図、ということです。

「現状でのあるべき組織図」とは、自社で現在行っている事業で必要となる機能・部署、必要となる管理者、など様々な事象を検討の上、「本来、こういう組織図であればより適切な経営や事業運営ができるはず」という組織図を考え作成します。その際には以下のような基本的な組織の原則を知っておくと便利です。つまりは、専門化の原則、権限責任一致の原則、統制範囲の原則、命令統一性の原則、権限移譲の原則(例外の原則)です。特に専門化の原則統制範囲の原則命令統一性の原則は組織図を書く際に必須の知識です。

「専門化の原則」は、業務を分業することで、効率性、専門性や習熟度を高めることを意味します。たとえば経理に関する業務は集約して経理部に担当してもらうことで、効率的な処理ができますし、さらには経理についての専門性や習熟度が高まる、という意味合いです。ですので、基本的な組織図を書く際には、分業と同類業務の集中、を考えておく必要があります。

「統制範囲の原則」は、ひとりの管理者が管理できる部下の数には限界があり、それを超えると組織は非効率に陥ってしまうというものです。ですので、組織図を書く際には、業務量、担当者数、管理者数のバランスを考えておく必要があります。中小企業では、特定の管理者が普通は管理不能な膨大な数の業務と従業員を管理していることになっている、という組織図がよく見られます。それは本来はあってはなりません。

「命令統一性の原則」は、分かりやすく言えば「上司はひとりとしなければならない」という意味合いです。ある従業員に指示を出す上司はひとり、その従業員が報告をする相手となる上司もひとりだけ、ということです。たまに中小企業の組織図で、ある部門には同格の部長が二人いたり、部長だけでなく取締役が直接指示を出せることとなっている事例を見かけることがあります。実務上は都度都度調整して乗り切っているのかもしれませんが「あるべき組織図」では避けなければなりません。そういう意味で、いわゆるマトリックス型の組織図は運用に困難か手間を要することとなりますので同様に避けるべきです。

現状の実際の組織図」、「現状でのあるべき組織図」を比較することで、本来はあるべきこの機能が社内に存在しないこういった能力を持っている人材が不足している、などが分かりますし、さらに「将来のある時点でのあるべき組織図」まで描くことができれば、それは将来の計画策定時にも重要な情報となります。


2.業務面についての内部環境分析

会社の強みが、社内のある業務の生産性が極めて高いことや、顧客からの評価が高いことであることも少なくありません。そういった強みや弱みを洗い出すために、社内業務を「主業務」と「支援業務」に分けて列挙し、それぞれの業務を2つの評価軸で評価してみましょう。先述の「組織図の分析」と合わせて行うとより効果的な分析となるでしょう。

1つ目の評価軸は「顧客の評価」です。
これを例えば「4:大変評価されている、3:まぁ評価されている、2:あまり評価されていない、1:評価されていない、0:わからない」で点数付けしていきます。

2つ目の評価軸は「同業他社との比較」です。同様に「4:大変優位性がある、3:まぁ優位性がある、2:やや劣っている、1:劣っている、0:わからない」で点数付けしていきます。


3.人事面についての内部環境分析

企業活動の基盤となる事項で「人事」の重要性を否定する人はほとんどいないと思います。以下のような事項の分析を通じて、自社の人事的な強み・弱みを洗い出していきます。
  1. 組織風土はどのようなものか、会社の方針と合致しているか
  2. 人事評価制度は会社の方針を反映したものとなっているか
  3. 報酬体系は人事評価制度に連動したものとなっているか、仕組みはシンプルか
  4. 離職率と休職率は業界平均等と比べてどうか、高すぎないか、低すぎないか、その理由はどう考えられるか
  5. 業界、業種特有の項目の水準はどうか
「5」についてはたとえば以下のようなものです。
 製造の場合→技術や品質管理の伝承、蓄積
 営業の場合→シフト体制やインセンティブ制度等
 SEの場合→労働時間の管理
 それらの参考となる情報、労働時間、離職率、求職率、年齢構成etc.

次回は、内部環境分析の代表的フレームワークについて解説予定です。
 
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2021年12月14日火曜日

M&Aの基礎知識:中小M&Aにおけるセカンドオピニオンとは?

M&Aについては本日現在、バリュエーションについての記事を連載中ですが、それとは別に単発テーマを取り扱う「M&Aの基礎知識」のコーナーも不定期で掲載しています。前回の「FA形式と仲介形式」には多くのアクセスをいただき、ありがとうございました。

さて、2020年3月に経済産業省から発表された「中小M&Aガイドライン」で取り上げられたことをきっかけに「中小M&Aにおけるセカンドオピニオン」のニーズが高まっています。今回は中小M&Aにおけるセカンドオピニオンとはどういったものかまとめました。

1.セカンドオピニオンのそもそもの意味は?

もともとは医療の用語として普及したもので、以下のような意味の言葉です。
セカンドオピニオンを簡単に説明すると、日本語では「第二の意見」と呼ばれるように、患者がある病気で診断を下された際に診断結果やその後の治療方針や治療方法について、主治医以外の医師から意見を聞くことを言います。主治医以外の意見を聞くことで、現在の治療が適切なのか、他に良い治療がないのかなど、患者がより納得のいく治療を受けることが可能になります。
(出典:セカンドオピニオン.com Webサイト)

医療の用語としての「セカンドオピニオン」は、自身が大きな病気を患ったり、ご家族を含む親しい方にそういった方がいらっしゃったりする方はご存知であることが多いのではないでしょうか。医療の世界ではセカンドオピニオンを取得することは普通の風景になっているようで、まともな医師であれば自分が担当する患者が他の医師に意見を聞くことになる主治医の立場でも、患者やセカンドオピニオンを取得することに対してネガティブな反応をすることはないそうです。

 

2.M&Aにおけるセカンドオピニオンとは?

中小M&Aガイドラインでは以下のように定義されています。
セカンド・オピニオンとは、中小M&Aを行おうとしている者が支援機関と契約を締結する際や、支援機関から受けた助言の内容の妥当性を検証したい場合等に、他の支援機関から意見を求めることをいう。
同ガイドライン用に定義されている言葉が含まれますので、より一般的な用語で書き直すと以下のとおりです。

中小企業のM&Aにおけるセカンドオピニオンとは、
  • 事業を譲り渡す側(いわゆる売り手)や事業を譲り受ける側(いわゆる買い手)が、
  • M&A助言業務を行うFA事業者M&A仲介事業者などのM&A専門家
  • ファイナンシャルアドバイザリー契約(FA契約)仲介契約を締結する際や、
  • それらのM&A専門家によるM&Aのストラクチャーやバリュエーションなどを含む専門的な助言の内容の妥当性を検証したい場合等に、
  • 他のM&A専門家に意見を求めること
をいう。

先述のとおり、セカンドオピニオンという言葉は、もともとは医療の用語として普及したもので、患者が主治医から説明された診断結果や治療方針・方法について、主治医以外の医師から意見を得ることを意味します。今後の治療などについて、患者自身がより判断しやすくなったり、納得感を高めたりすることが可能になると言われています。その意味合いが転用され、中小M&Aでも使われるようになりました。

3.中小M&Aにおけるセカンドオピニオンの必要性

以下のようなことが言えるため中小M&Aにおいてもセカンドオピニオンが必要です。
  1. M&Aはほとんどの中小企業にとって極めて少ない回数しか経験しないものであるため、日々忙しい経営者や企業オーナーが理解を深めていくことは容易ではない。
  2. 専門家の質やその助言内容がどうかを、その分野の専門ではない者が判断するのはM&Aに限らず容易ではない
  3. 加えて、M&A助言業務は医療行為とは違い資格や免許が不要なため、専門家が保有する専門性が一定水準以上であることが客観的には担保されていない
補足すると、まず「1」についてですが、特に「売り手」についてそう言えます。グループ会社をいくつも所有している場合、連続起業家などである場合など、複数の会社を所有しているような例はまだまだ稀ですので、M&Aを経験するとしてもそれは1回きりであるという場合が大半ではないでしょうか。「買い手」の場合は複数回経験することがあり得ますが、それでも回数はそれほど多くはないと言えるでしょう。

「3」についても注意が必要です。たとえ士業専門家がM&Aの助言を行っている場合と言えども当てはまります。その士業専門家は確かに士業資格を保有してはいますすが、M&A助言業務そのものが士業としての本来の業務ではないことが多い(つまりは多くの士業専門家にとってM&A助言サービスは新規事業であったり、付帯サービスであったりする)ため、士業の資格を保有していることが、M&Aについての専門性が一定水準以上であることを担保しているわけではない、というわけです。士業専門家でもそう言えるのですから、それ以外の場合は猶更と言えるでしょう。

これらを解消するために、国も事業承継ガイドライン中小M&Aガイドラインを定め、中小企業経営者や企業オーナーの理解を促進したり、M&Aに関わる専門家にもガイドラインに沿った一定水準以上の活動を求めてたりしていますし、日本M&Aアドバイザー協会のように専門性向上活動や職業人としての倫理の啓発活動を行っている例もあります。セカンドオピニオンもそういった問題を解消するためのひとつの方法といえます。

4.どういった場合にセカンドオピニオンがあると良いか?

では、M&Aにおけるセカンドオピニオンはどういった場合にどのようなことを確認するために活用すると良いのでしょうか?先述の中小M&Aガイドラインではいくつかの例が紹介されています。
  • M&A助言業務を行うFA事業者やM&A仲介事業者とFA契約や仲介契約を締結する際に、業務の具体的内容や報酬の妥当性について意見を求める
  • 最終契約(株式譲渡契約や事業譲渡契約など)を締結・調印する前に、その契約内容について意見を求める
同ガイドライン記載以外の事項でも
  • バリュエーション(企業価値算定)の結果や、その前提条件、算出過程の妥当性について意見を求める
  • デューデリジェンスの結果や、その調査過程・範囲について意見を求める
  • その他、専門的且つ中立的・第三者的立場からの各種意見を求める
といったことが考えられます。

FA事業者やM&A仲介事業者へ支払う報酬は高額になることが多いですし、そもそも会社や事業を譲り渡したり、譲り受けたりすることは多くの利害関係者の人生をも左右する大きな事柄です。事業を譲り渡す側、事業を譲り受ける側、どちらの場合でもセカンドオピニオンの活用が望まれます。

5.その他の重要な注意点 

FA事業者やM&A仲介事業者とのFA契約や仲介契約では専任条項と呼ばれる条項で、実質的にセカンドオピニオン取得が禁止されている場合があります。ほとんどの場合は、M&Aで極めて重要な秘密保持の観点から設けられている条項ですが、そういった場合を含め、まずはFA契約や仲介契約を締結する前に当該専門家に必ず相談しましょう。「中小M&Aガイドラインに記載されていたセカンドオピニオンを活用する可能性も残しておきたい」と伝えれば、ほとんどの専門家が対応してくれるはずです。対応してくれない場合は、他の専門家に切り替えるべきです。特に、M&A支援機関登録制度に登録しているM&A専門家は、「依頼者(売り手や買い手)がセカンドオピニオンを取得することを許容すべきである」としている中小M&Aガイドラインを遵守することを宣言しています。それにも関わらずセカンドオピニオンを取得することを忌避するようであれば中小企業庁の情報提供窓口への相談や、FA契約・仲介契約締結の取りやめなどを行うべきです。

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2021年12月13日月曜日

【再・追加開催】「事業承継などを理由とする会社や事業の譲り渡し」を検討中の長崎県所在企業の方々を対象とした無料相談会(オンライン)

内容を更新する場合がありますので、お申込みにあたっては必ずPeatixのページをご確認ください。


「事業承継などを理由とする会社や事業の譲り渡し」を検討中の方々を対象とした無料相談会の開催日時を再度追加することとなりましたのでお知らせします。以下、開催概要です。

-------

M&Aについてのお悩みについて無料相談を承ります(1日2社まで。1社当たり30~60分を想定)。
お申込みいただいた方の中から先着順で対応させていただきます。

双方のニーズが合致すれば、具体的なM&Aの相手方候補となりうる第三者とのお引き合わせも可能です。お引き合わせの日時は別途の調整とさせてください。また、お引き合わせを確約するものではありませんのでご了承ください。

■お申込みはこちらから

https://www.ngc-partners.biz/cmeeting

■開催日

2021年内開催分については申込受付を終了しております。

■当日のタイムスケジュール(予定)

13:00~ 1社目の企業様の相談時間
14:00~ 2社目の企業様の相談時間

■無料相談会の対象

以下の両方に該当する方を対象としています。
  1. 本社や本店が長崎県内の中小企業で、
  2. 上記企業のオーナー(株主等)、代表者(代表取締役等)もしくは後継者(候補含む)の方

■対応可能なご相談

(1)以下のようなM&Aに関することについて、「まずは何をすればよいか」、「本格的に検討・推進する場合にはどこに相談したら良いか」といった疑問・お悩みのご相談に乗ることができます。
後継者が親族・社内にいないため、現在の経営方針を尊重した上で会社を承継してくれる第三者を探したい。一部の事業について、自社で運営するのではなく、第三者に運営を受け渡したい。有力な他社のグループに入り営業力や企画開発力などの強化を行い、事業を拡大したい。同業他社と経営統合を行い、管理部門などの重複機能の効率化を行うなど企業体力を増強したい。事業承継ファンドに会社を承継することについて検討したい。

(2)すでにM&Aアドバイザーがいらっしゃる方でも、「M&Aのセカンドオピニオン」を得たいが、どう進めていいか分からないといった疑問・お悩みのご相談に乗ることができます。


■遵守事項

  • 無料相談会でお預かりした内容は、秘密情報として取り扱い、御相談者様の方の事前の承諾なく第三者に開示することは致しません。
  • 御相談対象の企業様の具体的な承継先・受け渡し先となりうる企業様とお引き合わせをさせていただくことも可能ですが、その際も相談者の方のご希望や事前の承諾なく当該企業様に情報を開示することは致しません。

■お断り事項

  • Web会議の録画・録音は固くお断り申し上げます。
  • 代理の方のご出席はご遠慮ください。
  • M&Aアドバイザー等の同席はご遠慮ください。
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2021年12月11日土曜日

事業計画の作り方20 後継者の方向け(8) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析3 内部環境分析(1)

前回の外部環境分析に引き続き、今回から内部環境分析について解説していきます。

内部環境もいろいろな切り口で分析できるのですが、当シリーズでは以下の3つの切り口について解説します。
  1. 経営面・業務面・人事面に分けた分析
  2. 代表的フレームワーク
  3. M&Aのデューデリジェンスの手法を活用した分析
技術や知的財産権の分析等が抜け落ちていますが、これについては恥ずかしながら私も勉強中のため、当シリーズでは割愛させていただきます。それらの分析については経済産業省の「知的資産経営ポータル」などが参考になります。知的資産というのは同Webサイトでは以下のように定義されており、いわゆる知的財産権によりも広い概念です。
「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。これは、特許やノウハウなどの「知的財産」だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であることに注意が必要です。さらに、このような企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。
(引用元:経済産業省「知的資産経営ポータル」)
また、今回以降の記事の内容は以前の記事「事業計画の作り方1 枠組み、全体像、基本的な考え方」などと重複する箇所もありますがご容赦ください。以前の説明よりも詳しい内容や、違った視点での説明を心がけます。

(1)経営面・業務面・人事面に分けた分析

 フレームワークとして確立されたものではなく、分析に「ダブり」が出てしまうのですが、比較的「漏れなく」分析できる方法としておススメしています。特に経営面については重要です。内部環境分析において経営者や経営チーム自身の分析や、体制についての分析が抜け落ちてしまうことが多々あるからです。次回(事業計画の作り方21)で解説予定です。

(2)代表的フレームワークを活用した分析

 経営資源の優位性を分析する「VRIO分析」、自社のどの活動で価値を生み出しているかを分析する「バリューチェーン分析」、複数の事業を行っている場合に知っておくべき「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」、「ビジネススクリーン」について事業計画の作り方22・23で解説予定です。

(3)M&Aのデューデリジェンスの手法を活用した分析

 M&Aのデューデリジェンスは「M&Aにおけるリスクを洗い出す」ためのものと勘違いされることが多いのですが、目的はそれだけではありません。「M&A後にどう経営していくか、どうシナジーなどM&Aの目的を実現していくか」ということの計画策定の基礎とすることも同じくらい重要な目的です。そのため、自社の現状分析に応用可能です。伝統的なデューデリジェンスである「事業(ビジネス)」、「財務」、「税務」、「法務」、「人事」、「労務」、「IT・システム」、「不動産」、「環境」に加え、近年重要度が高まっている事項について事業計画の作り方24で解説予定です。
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2021年12月10日金曜日

note転載:「推進力増か抵抗力減か」を考える例え話


既存の企業で何かを変革したり、新しいことを始めたりすると、必ずと言っていいほど、新しい方向に向かうことの妨げとなる事柄が生じます。そのことを前に進もうとする船で例えることがあります。

ある船(企業の例えです)の船長(変革や新規事業を推進したい経営者を例えたものです)は今までの進路での向かう先には明るい未来は待っていないと考え、舵を切り船の進路を変えようとします。しかし必ずと言っていいほど現れるのが、その抵抗となる事柄です。船が前に進むための妨げとなる、船体から飛び出た木の板に例えられます。そのとき、前向きで一生懸命な船長であるほど、スクリューをより勢いよく回して船を前進させようとします。しかし、船体から飛び出た木の板はスクリューの回転が増すほど、船が前に進むのを邪魔する働きを増してしまいます。より多くの水がその木の板にぶつかるからです。

その時、船長か、船長を補佐する副船長が行うべきは、木の板を取り除くことです。木の板を取り除く作業をしている間はスクリューを回すわけにはいきませんので、無駄に時間が過ぎてしまうように感じるかもしれません。しかし、木の板がある限りはどんなにスクリューを回しても前にはなかなか進みません。急がば回れで、木の板を取り除くことを先に行うべきです。

木の板を取り除く、というのは抵抗力になってしまっている既存の仕組みを改めたり、本人が意図しているか意図していないかに関わらず抵抗勢力になってしまっているメンバーに行動変容をしてもらうか、といったことを意味します。言うことを聞かないメンバーを辞めさせることとはイコールではありません。それは最後の手段、伝家の宝刀であり、伝家の宝刀は軽々しく抜いてはいけません。でも、伝家の宝刀を持っていることを忘れてもいけません。

ところで、船長は意外と飛び出た木の板の存在には気が付かないか、気が付いていたとしてもそれを軽視してしまう傾向があることが少なくありません。VCや経営コンサルタントは、飛び出た木の板が船の進行を妨げることがある、ということは知っていますが、具体的なその船でどれが飛び出た板なのか、が分からないことがあります。そういうときには上記の例のような副船長、つまりはナンバー2がいると良いのかもしれません。
石井優 / NGCパートナーズ|note
私見やプライベート寄りの投稿中心です。
https://note.com/ngcpartners

2021年12月9日木曜日

プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

2019年8月にNGCパートナーズの活動を再開する少し前から、「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」という団体に加入しています(会員番号000178)。個人事業主として活動する方にはとてもお勧めできるサービスが揃っていますので紹介させていただきます。

同協会のWebページには事業概要として、以下のように記載されています。
フリーランス向けベネフィットプランの提供
フリーランス支援・啓発イベントの企画運営
フリーランスに関する各種調査の実施・政策提言
企業に対するフリーランス活用アドバイス・コーディネート
日本でも働き方が多様化してきている一方、法制度、社会制度や民間サービスなどはまだまだその対象を「会社勤めしている人」をベースにしたものとなっています。つまりは、個人事業主などとして独立した場合、様々な面で不利な立場におかれてしまいます。そういった不利な面をサポートするサービスなど、「独立して個人で活動している方」にとってはとても助かる存在ですので、一度Webサイトをご覧になることをおすすめします。

また、政策提言なども積極的に行っており、個人事業主などの働き方の実際に関する調査事業なども実施しています。アンケートへの回答等を通じて協力できますので、そういったことに関心がある方もぜひご覧ください。
フリーランス協会

2021年12月8日水曜日

note転載:「問題の深堀」に関する例え話

石井優/NGCパートナーズのnote」からの転載。

若手研修や、新任管理職研修などで、「問題の深堀」の重要性について私がよく例に挙げるのが「腹痛」です。トヨタの「なぜを5回繰り返す(なぜなぜ分析)」はあらゆる階層の問題解決の代表的手段ですが、それを分かりやすく説明したいと考え、例として挙げています。

ちなみに、本当のなぜなぜ分析を使いこなそうと思うと、量稽古も必要ですし、要因がどんどん枝分かれしていくことがあるため結構大変です。研修の段階では、表層的な解決策に飛びつかないことが重要、という趣旨で話をしていますので、かなり単純化しています。

よく話をする例は以下のようなものです。

お腹が痛いときに、お腹が痛い理由を考えずにすぐに胃腸薬を飲んでも、そのときは痛みが治まるかもしれませんがまた繰り返してしまう可能性もあります。典型的な対症療法です。ひとまず胃腸薬を飲んで腹痛を抑えつつ、もう少し深堀りして腹痛の原因を探ってみたらどうでしょう?お腹が冷えているのでしょうか?古くなったものを食べてしまったのでしょうか?それが分かるとお腹が冷えない服を着る、食べ物の賞味期限などを確認するといった、薬を飲むだけよりは効果的な対策を考えることができます。しかし、まだまだ対症療法の範囲内です。古くなったものを食べてしまった、という点についてさらに深堀りしてみると、冷蔵庫が故障して充分に冷えなくなってしまっているのかもしれません。そうではなく、いつも買い物をするお店に陳列されている商品は賞味期限間近のものが多いといったことが分かるかもしれません。そうしたら冷蔵庫を買いなおす、他のお店で購入するという手を打つことができます。

このように少し深堀りするだけでもより良い対策を考えることができることが分かります。例がとても単純なので簡単に見えてしまうかもしれませんが、ビジネスの現場で実践するためには訓練が必要ですし、多少の深堀はしていても、自分が見たくない現実を避けたりしているかもしれません。それ以前に、腹痛のときに胃腸薬を飲むだけの方も意外と多いのではないでしょうか。
石井優 / NGCパートナーズ|note
私見やプライベート寄りの投稿中心です。
https://note.com/ngcpartners

2021年12月7日火曜日

事業計画の作り方19 後継者の方向け(7) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析2 外部環境分析

前回は「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」の全体像について解説しました。今回は、その内、外部環境分析について解説します。

1.外部環境とは?

まずは外部環境とはどういった意味で、具体的にはどのような事項を意味するのでしょうか?前回の記事では単に、「自社の環境のうち、自社でコントロールするのが難しい事項」といった意味合いでご紹介しました。言葉の定義自体としては実務上はこの理解で問題ありません。一方で、具体的に何を指すのか、については基本を正確に理解しておき、且つ自社の場合はそこに過不足がないか、を考えることが重要です。伝統的には以下の事項が外部環境の基本的要素と言われています。
  1. 顧客
  2. 顕在的競合事業者
  3. 潜在的競合事業者
  4. 仕入先事業者
  5. 販売先事業者
  6. 流通事業者
  7. 経済的環境
  8. 政治的・法律的環境
  9. 人口動態的環境
  10. 社会的・文化的環境
  11. 技術的環境
  12. 自然環境
ここに、近年重要性が高まっている「13.経済安全保障」や「14.SDGs」などの横串を通す視点も忘れてはなりません。横串を通すとMECEではなくなってしまいますが、経済安保やSDGsについては上記伝統的要素での分類はうまく対応できませんし、「漏れ」を回避する方が「ダブり」を気にするよりも遥かに重要です。

さて、上記伝統的要素の内、1~6をミクロ的外部環境、7~12をマクロ的外部環境といったようにグルーピングできます。自社でコントロールするのが難しいのが外部環境、と説明しましたが、マクロ的外部環境とミロク的外部環境の間にはコントロール可否の度合いに違いがあります。マクロ的外部環境に自社から働きかける方法は限定されていますが、ミクロ的外部環境についてはコントロールが難しいとは言え、積極的な働きかけが必要です。

(1)顧客

顧客については、起業前の方向けの回でも解説していますので、そちらもご確認ください。
まずは「顧客は誰か」ですが、後継者の方がいらっしゃる企業の場合、すでに顧客が存在しますので、ポジショニングマップをいろいろな切り口で考えることができるはずです。ビジネスモデルによっては「顧客(実際に費用を負担する)」と「ユーザー(利用はするが費用は負担しない)」が異なる場合もありますので、定義をあいまいにしておかないことも大切です。「顧客のニーズ」や「価値提案」についても、知っているつもりにならずに一から分析しなおす、くらい行っても良いと思います。ここがしっかり理解できていないと後々、「自社の強み」を正しく把握できなくなってしまいます。

(2)(3)競合事業者

競合事業者については、「顕在化している競合」と「潜在的競合」を分けて分析することをおすすめします。「潜在的競合」とはファイブフォース分析に出てくる「新規参入者」と「代替品」を合わせたものに近い意味合いです。「自社の製品やサービス」を起点に考えると顕在的競合にしか考えが及びません。ですので競合について考える際には「顧客のニーズ」を起点に考える必要があります。こちらの記事もご確認ください。

(7)経済的環境

マクロ経済学の教科書に出てくるような事項、日本経済新聞で頻繁に取り扱われるような事項と理解しておけば良いでしょう。主なものはGDP、経済成長率、景気動向、消費、設備投資、政府支出、輸出入、税制、物価、為替、株価、金利、日銀短観、失業率、鉱工業指数などです。現在の水準がどうか、だけではなく、今後の推移はどのように予測され、その理由は何か、まで分析しましょう。もちろん、専門家でない限り実際の分析は難しいので、特定のエコノミストなどの発言や見解を追う、といった方法をとることもあります。

GDPや経済成長率といった話は規模が多すぎて自社には関係ないと思われがちですが、それらはたとえば、消費、設備投資、政府支出、輸出入などで構成される総合的な指標ですので、仕組みは理解しておくべきです。大学一年生が読む程度の経済学の基本テキストは理解しておいた方が良いですし、自社の事業にどう影響してくるかの仕組みについても学んでおきましょう。

(8)政治的・法律的環境

政策、規制、法律改正、政権交代、外交などがキーワードとして挙げられます。よほど新しい業界でもない限り、「現在の政策や規制」について知らない、ということはあまり多くはありませんが、内容のアップデートや、改革・改正の方向性などについてはカバーできていないことが多いようです。新聞に目を通すだけではなく、業界団体の勉強会に出席したり、業界紙で情報収集したりする必要があります。また、各省庁の各種研究会の議事録やパブリックコメントなどをウォッチしておくのも良い手段です。

(10)社会的・文化的環境

文化の変遷、教育、犯罪、世間の関心などがキーワードとして挙げられます。

(11)技術的環境

ものづくりの技術などももちろん大切ですが、忘れてはならないのが、IT化、DX化、AIやバーチャル技術、量子関連技術など現在進行形の技術や、その次に高い可能性で訪れるであろう技術についての環境分析です。

(13)(14)経済安全保障やSDGsなどの新しい流れ

複数の上記伝統的要素に関係していますので、「ダブり」を気にすることなく独立した項目として分析を行うべきです。特に脱炭素と人権については急速に環境が変化していますし、個々の事業への影響も大きいので要注目です。新しい流れについては日本国内の論調だけを見ていると、重要性、方向性やスピード感を見誤ってしまう可能性があるので、海外の記事や、国内でも先進的と言われる企業や専門家の動向をチェックしておくことをおすすめします。


2.代表的フレームワーク

外部環境分析のフレームワークとして知っておくべきなのは、マクロ外部環境分析の「PEST分析」とミクロ外部環境分析の「ファイブフォース分析」です。経営に関する書籍などでは必ず触れられているフレームワークなのでご存知の方も多いと思います。

(1)PEST分析

PEST分析は、政治的要因(Politics)、経済的要因(Economics)、社会的要因(Society)、技術的要因(Technology)という4つの要素でマクロ外部環境分析を行うフレームワークです。一般的には「ペスト」と読みます。

各要素については、分類に違いがありますが、上記「7.経済的環境」以降の要素についての説明を参照してください。なお、PEST分析を行う際には、各要素ごとに「自社にとって追い風となる事項」、「自社にとって向かい風となる事項」に分けて整理しておくと後で活用がしやすくなります。

(2)ファイブフォース分析

自社の所属する業界の収益性を決定する要因を分析するフレームワークで、ミクロ的外部環境分析を行うツールとして活用されます。

ファイブフォース分析は「外部環境の中では比較的働きかけがしやすく、働きかけをすべきミクロ的外部環境分析」に関するものですので、単に分析を行うだけでなく、それぞれの要素に適切な働きかけを行うことで、収益性を維持・向上させていくための行動計画立案のツールともなります。

競合企業」とは、すでに競争が顕在化している「業界内の競争環境」を意味します。業界内の社数が多い、会社規模が似通っている、差別化できる要素が少ない、市場規模が拡大しにくい、撤退障壁がある、などの状態だと業界内の競争が激しいことが多いです。

サプライヤー」とは供給業者や仕入れ先のことを意味しており、サプライヤーの社数が少ない、サプライヤーの技術や材料が他に替え難い、などの状態だとサプライヤーの交渉力が相対的に自社より強く、高い価格での仕入れとならざるを得ないなどの可能性があります。販売先を意味する「バイヤー」についても同様です。

新規参入事業者」について考える際には、参入障壁の高さについての視点を持っておくことが重要ですし、「代替品」については、それが存在しないと短絡的に考えずに「顧客のニーズを満たすことができる、他の製品やサービスはないか」を常日頃ウォッチしておくことが重要です。

ファイブフォース分析もPEST分析と同様に各要素ごとに「自社にとって追い風となる事項」、「自社にとって向かい風となる事項」に分けて整理しておくと後で活用がしやすくなります。

次回からは内部環境分析についての解説を予定しています。
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2021年12月6日月曜日

note転載:反省と後悔

石井優/NGCパートナーズのnote」からの転載。

過去の失敗経験に対するスタンスとして、大半の方は「反省」がベースになっているか、「後悔」がベースになっているか、のどちらかではないでしょうか。「忘却」や「失敗したことはない」というのもあるかとは思いますが、今回は「反省と後悔」について思うことを書きます。

ところで、「忘却」は自分自身が潰れないようにするためなどに活用すべき場面はあろうかと思いますが、「失敗したことはない」というのは完全なる勘違いか、何にも挑戦してこなかったかのいずれかにすぎないのではないでしょうか。同様に失敗を想定していない人というのは、自分の能力を過信している傲慢な人であると感じます。

話を戻すと、私は自分自身を、「反省して成長するタイプ」であると考えており、自身の強みを「同じ失敗を繰り返しにくいこと」と言ったりしています(以前は「同じ失敗を二度としない」と言っていたのですが、言い過ぎでしたので改めました)。ですので、過去の失敗を思い出すのは、目の前の新しい取り組みに活かせる教訓はないか、を思い出すことが目的です。もちろん私も人間ですので、後悔の念に囚われることも少なくありませんが、意識して考えないようにします。

一方で、「後悔」がベースになっている方にお会いすることも少なくありません。何かにつけて「あのとき、ああするんじゃなかった。」とか「こうすれば良かった。」とかおっしゃっています。そこから少し考えを深めれば教訓を得て反省とすることもできそうなものですが、なかなかそこに至りません。

そういう方との仕事の中で、そういう場面に出くわすと「反省は大切ですが、単なる後悔はやめましょう。」と声掛けするようにしていますが、習慣づいた思考を改めるのは、誰にとってもなかなか難しいことですね。

様々な場面で新しいことへの取り組みが求められる現代、「仮説検証」や、「試行錯誤」ができるかできないかは大きな差につながってきます。第一歩として「後悔ではなく反省」というスタンスで物事に取り組みたいものです。
石井優 / NGCパートナーズ|note
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2021年12月5日日曜日

note転載:「最初に仕事の全体像を確認することの大切さ」の例え話


物事の視点として「鳥の目・虫の目・魚の目」という話がありますが、「鳥の目」の意味する「物事を俯瞰的に見る」ということを正確に理解したり実践したりことはなかなか難しいと感じます。

そこで、企業の社内研修(若手研修や新任管理職研修)などで、「仕事の仕方」においての俯瞰的な見方の例として、以下のような話をすることがあります。本来、「俯瞰」とは高いところから見ろして全体像を見ること、といった意味合いですが、ここでは単に「仕事の全体像を最初に確認することの大切さ」の例として話をしています。

さて、あなたの目の前には小高い山があります。その麓には登山道の入り口が見えます。「あの山の頂上まで行ってください。頂上に到着することのみが目的です。」と指示された際、あなたはどうしますか?

Aさんは早速、見えている登山道から登り始め、山頂を目指しました。

Bさんは、山の周りをぐるっと一周するところから始めました。山頂までの交通手段がないかを探すためです。そして、ロープウェイを見つけ、それで山頂を目指しました。

仕事を俯瞰的に見ることの第一歩は、このBさんの行動が参考になります。山の周りをぐるっと一周することにより、仕事の全体像を把握し、目的達成のために効率的な方法を見出して実践する、ということができているからです。もちろん、登山の過程を経験することが目的であったりする場合は、Bさんの行動は仕事の趣旨を理解していないという意味で望ましいとは言えませんが、今回の例はあくまでも頂上に至ることだけが目的です。

仕事をする際に、事前に確認すべきことを何も確認することなく取り掛かってしまうAさんのような方は決して少なくありません。真面目で一生懸命な方なのでしょう。真面目であることは得難い資質であり、決して悪いことではありません。しかし、「仕事の仕方」という意味では、もう一歩成長があるとより素晴らしいと思います。「俯瞰的に物事を見る」は少しハードルが高いかもしれませんが、「事前に山の周囲をぐるっと一周する」ことからは開始できそうです。

ところで、この例を使うと、「目の前に山に登ることが、そのずっと先にある大目標に至るために必要な行動か、と考えるCさん」や「そもそも目の前にあるのは山なのか」と考えるDさんもいるようですが、Cさんは経営者、Dさんは哲学者(?)などにむいているのかもしれませんね。
石井優 / NGCパートナーズ|note
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2021年12月4日土曜日

事業計画の作り方・番外編 起業前の方向け 個人事業主の屋号と独自ドメインはどうすべきか

久しぶりに起業前の方向けの記事です。

今回は「事業計画の作り方」とは少しズレるのですが、起業前の準備として重要且つ少し悩むテーマとして「屋号と独自ドメインはどうすべきか」について解説します。本記事自体は個人事業主として起業する予定の方向けの書き方にしています。なお、屋号とは「ビジネス上の名称」くらいの意味でお考えください。

さて、Web上で検索すると屋号や独自ドメインの問題について解説している記事が多く見つかります。屋号をどうするかという点については、ご自身が屋号にどういう意味を見出すか次第ですのでそれについて解説してくれている記事を見つけ参考にするのが一番です。ここでは「起業後のビジネスのやりやすさ」に絞って解説します。

個人事業主として開業する際に税務署に届け出る開業届に屋号を記入する欄があるのですが、屋号を設けることは必須事項ではありません。ですので必要に応じて屋号を決めるということで問題ない、というのが結論ですが、それだと何の参考にもなりませんので、屋号を設けるか否か、は以下の基準で決めるかたちをおすすめしています。あくまでも屋号に特に思い入れがない場合の話です。私の場合は、屋号に自分なりの想いを込めましたので、最初から屋号を設けていました。
  1. 当面の間、業務を受注する先がすでに既知の事業者のみの場合、屋号は必ずしも必要はない
  2. 新規開拓営業を行う、新規先からの受注を目指すなどする場合は屋号がある方が良い
分かりやすい基準かと思いますが、特に「2」について日々の業務に地味に響いてきます。日本の場合は組織に属して働いている方の割合のが多いため、ビジネス上では「〇〇社の〇〇です。」というかたちで、所属組織名→氏名、という順番で名乗ることが一般的です。屋号があると「〇〇(屋号)の〇〇です。」と名乗ることができ、たとえば営業先に電話するときの名乗りとして活用できます。屋号がないとただ自分の氏名を名乗るだけとなってしまい、必要な方に取り次いでもらえなかったり、「どちらの〇〇様ですか?」などと聞き返されてしまい、説明の手間を要することになったりします。同様の理由で、屋号は名乗りやすく聞き取り安いものがbetterかと思います。

独自ドメインや事業用のWebサイトを設けるか、についても同様です。
知り合いのみから仕事を受けるのであればいずれも必要はないと思います。ビジネス上はGmailなどは好ましくない、といった解説記事をよく見かけますが、情報の取り扱いに慎重さを要する場合を除き、知り合いとのやりとりであれば大きな支障はそれほどないでしょう。

しかし、新規開拓を考えている場合はいずれもあった方が良いです。独自ドメインのメールアドレスがないと、ビジネスを行う事業体としての体制などを疑われてしまいますし、Webサイトがない場合でも同様です。ですので、新規開拓を考えている場合は、コストも安いですので独自ドメインとWebサイトは用意した方が良いです。
なお、それらはWeb上での受注を目指す、という位置づけより、「自分が営業した先の事業者がWeb上で自分のことを調べた際に、必要な情報を参照できる。」くらいの位置づけで十分です。Web上で新規受注をしたいのであればプラットフォームなどを利用しましょう。独自ドメインやWebサイトを設けるか否かについて悩む方の場合は、そもそも事業上の必要性が高くない方と考えられますので、自分のWebサイトのコンテンツを必要以上に充実させたり、SEO対策に労力や資金を投入するよりも、プラットフォームを活用する方が効果的です。ただし、事業の拡大などを目指し始める場合は別です。
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2021年12月1日水曜日

事業計画の作り方18 後継者の方向け(6) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析1

前回の記事から1年以上空いてしまい申し訳ありません。「後継者向けの事業計画の作り方」について解説を再開します。

さて、前回まで番外編を除く4回にわたって「現状分析」について解説してきましたが、説明が財務分野に偏ってしまっていましたし、時間も空いたこともありますので、これから数回は視点を変えて、「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」について解説します。

なお、繰り返しになりますが、後継者にとって「現状分析」はとても重要です。本記事を読み進める前にぜひ「事業計画の作り方1」と「事業計画の作り方14」をご覧くと同時に、以下の図を思い出していただければと思います。

1.現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析とは?

さて、SWOT分析は最もよく使われるフレームワークのひとつと言えますが、多くの場合、「現状分析で真っ先に使うフレームワーク」との位置づけとなっているようです。その場合、研修の中でグループディスカッションの題材として利用した際などに「思い付きしか書けない」、「弱みや脅威は思いつくが、強みや機会が思いつかない」といった事態となり勝ちです。SWOT分析は理解しやすい構造ですが、その活用の仕方には注意が必要です。特に、以下の2点について知っていただきたいと思います。
  1. SWOT分析は、他の現状分析で得られた情報や認識を整理するという「現状分析の総仕上げ」として活用すべきフレームワークである。
  2. SWOT分析は、その応用であるクロスSWOT分析まで行うことで、現状分析を超えた、今後の方針や打ち手を考えるフレームワークとなる。
では、「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」とは、どういった意味なのでしょうか。

事業計画の作り方1」や過去数回の現状分析に関する記事で、代表的な現状分析のフレームワークをいくつかご紹介しました。それぞれのフレームワームは極めて有用なものなのですが、これから会社を経営していく、そのための事業計画を作る、という立ち位置にある後継者にとっては当然ながら「分析」だけでは不十分で、分析結果を今後の計画や行動に反映させていかなければなりません。そういった「現状分析の段階」から、「事業計画策定の段階」に進むために最も活用しやすいのがSWOT分析とその発展形であるクロスSWOT分析なのです。ですので私は、各種フレームワーク等による現状分析をSWOT分析で総仕上げし、それをクロスSWOTに発展させ、事業計画策定の第一歩とする、という流れをおすすめしています。「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」についても次回以降、その流れに沿って解説していきます。

ところで、念のためSWOT分析とクロスSWOT分析について、基本的事項をまとめておきますので、あまり馴染みがない方は以下の内容にもお目通しいただければと思います。

2.SWOT分析

SWOT分析は上記の表から分かるとおり、「機会、脅威、強み、弱み」の英語の頭文字をとったものです。自社の環境を外部環境と内部環境に分け、それをさらにプラス要因とマイナス要因に分けます。


(1)外部環境(機会・脅威)
 外部環境、つまりは自社でコントロールするのが難しい事項の内、自社の事業にとって追い風となる事項、チャンスとなる事項をSWOT分析では「機会」と呼びます。逆に自社の事業にとって向かい風となる事項、ピンチとなる事項を「脅威」と呼びます。

さらにはマクロ的視点の事項と、ミクロ的視点の事項に分類が可能です。

マクロ的視点の事項は、代表的フレームワークであるPEST分析の分析結果を活用することで洗い出すことが可能です。PEST分析とは、「事業計画の作り方1」でもご紹介したのですが、マクロ環境をPolitics(政治的要因)、Economics(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)という切り口で分析するフレームワークです。

ミクロ的視点の事項は、ファイブフォース分析や3C分析などの分析結果の一部を活用して洗い出すことが可能です。
ファイブフォース分析は、業界の収益性を決める以下の5つの競争要因を分析するフレームワークです。
 ・競合(業者間の競争関係)
 ・サプライヤー(供給業者)の交渉力
 ・バイヤー(直接顧客または最終顧客)の交渉力
 ・新規参入業者の驚異
 ・代替製品またはサービスの驚異
3C分析は、自社環境を3つの「C」、つまりはCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)に分けて分析するツールです。この内、Customer(市場・顧客)とCompetitor(競合)に関する分析結果は外部環境分析に活用可能です。


(2)内部環境(強み、弱み)
 内部環境、つまりは自社である程度コントロール可能な事項の内、「自社が他社よりも優れた・勝てる・得意なところはなにか?」を明確にしたものを「強み」と呼びます。逆に「自社が、他社よりも劣った・負ける・苦手なところはなにか?」を明確にしたものを「弱み」と呼びます。「ヒト、モノ、カネ、情報・ノウハウ」といった切り口で分析することが一般的ですが、このシリーズでは、内部環境を以下のようないくつかの切り口に分けて解説します。
・切り口1:経営面、業務面、人事面
・切り口2:事業、財務、税務、法務、人事、労務、システム、不動産、環境


(3)外部+内部環境
 外部環境と内部環境を総合的に分析できるフレームワークとして「5C分析」というものもあります。「顧客/市場のニーズ、自社のスキル、競争度合い、協力者、背景」を分析するものです。そのうち、「競争度合い」はファイブフォース分析で、「背景」はPEST分析で代用します。

3.クロスSWOT分析


図をご覧いただけるとわかるとおり、SWOT分析の結果を活用して次の戦略を考えるのがクロスSWOT分析です。

(1)機会✕強み
 積極化戦略と呼ばれ、事業機会に対し、自社の強みを最大限に生かすにはどうしたらいいか?を考えます。

(2)脅威✕強み
 差別化戦略と呼ばれ、脅威に対しても、自社の強みでチャンスに出来ないか?を考えます。

(3)機会✕弱み
 改善戦略段階的施策と呼ばれ、事業機会に対し、自社の弱みで取り逃がしてしまったことを改善・回復するにはどうしたらいいか?を考えます。

(4)脅威✕弱み
 防衛・撤退と呼ばれ、脅威と弱みが最悪の事態を招かないようにするにはどうするか?を考えます。

次回は、外部環境分析について詳しく見ていきたいと思います。
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