内容に入る前に、今回はこの本の舞台である「ローマ」という国家について触れておきたいと思います。
ローマという国家は、建国当初は王政、その後共和政を経て帝政となった後、東西に分裂し、東の帝国は途中からは一般にビザンツ帝国と呼ばれるようになったりと、国家の名称や通称がひとつではないのですが、それでは不便ですの当ブログ内ではカッコつきのローマ(「ローマ」)と記載し、特に必要があるときには共和政ローマなどと記載するようにします。
「ローマ」の魅力は次の一言で言い表されています。
「ローマ史には歴史(もしくは、人類の経験)の全てが詰まっている」伝承の期間も含めると紀元前753年から1453年まで2000年続いた国家です。その歴史を見てもわかるとおり、国家成立期、直後の混乱期、成長期、停滞期、改革期、衰退期などがあわただしく、何度も繰り返し現れます。衰退期も迎えた後、再度持ち直した国家というのは歴史上、多くはありません。そのような場面で指導者がどう考え、行動したか、これほど企業経営に参考となるものはないと考えます。
「ローマ」はしかも多くの民族を包含する世界帝国であり、先に述べたようにさまざまな政治体制も経験しています。
宗教的にも建国当初は多神教であったものが途中から一神教となったりしています。
地理的にもアジアとヨーロッパをつなぐ位置、キリスト教世界とイスラム教世界をつなぐ位置にあり、それぞれの価値観の影響を受けたりしています。
法律の世界でも「ローマ」は重要な存在で、そのローマ法は現在の大陸法に大きな影響を与えていますし、英米法にも少なからず影響を与えています。
「ローマ」の魅力はまだまだありますが、歴史の授業で学んだ以上のような事柄だけ見てもその魅力の一端が分かるかと思います。
そしてこの本「ローマ人の物語」はタイトルどおり、国家そのものではなく「人」に焦点を当てた内容となっています。そして著者である塩野七生さんは小説家であり、決して組織のリーダーでも企業経営者でもありません。しかしながら小説家としての一流のセンスからか、その指導者論には唸らせられることが多いです。
この本の分類は歴史書ではなく小説です。読み進めるうちに、登場人物の表情までが目の前に浮かんでくるような瑞々しい文章で、娯楽としても十分楽しめます。歴史=暗記というイメージや、歴史書の堅いイメージで敬遠してしまう人ほど、このような小説をきっかけに「歴史に学ぶ」体験をしてほしいと思います。
次回から少しずつ内容に触れていきたいと思います。
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