「勢とは利に因りて権を制するなり。」(「孫子」計篇)意訳すると、
勢いとは合理的な決断のもと、機会を活かすことによって得られる。意味としては、臨機応変に近いと考えられます。
今回の孫子の箇所は、意味自体の理解はできてもその実践はかなり難しい部類に入るかと考えられます。
今回は前半部分の「合理的な判断」について考えてみたいと思います。
ほとんどの経営者は自分自身では合理的な判断を積み上げているつもりです。コンサルや専門家の中には論理的思考をすれば正しい結論を導き出すことができると考えている方もいます。しかし、実際の経営の中では論理的思考や合理的判断だけでは適切な結論を導き出すことができない場面も多くあります。確率論的な考え方を導入すれば、一応は各選択肢の期待値を計算できるかもしれませんが、それ自体の正しさを証明することは簡単ではありませんし、そもそも日々忙しい経営者が選択に迫られる度に確率論的な考え方をすることは現実的ではありません。
論理的思考だけに頼るわけにはいかない判断に迫られた場合、経営者は直感、いわゆるアニマルスピリットも大切にして欲しいと思います。理屈を積み上げていって結論を出す作業はコンサルや専門家に任せることもできるかもしれませんが、先に結論を出して、それが論理的に他人を説得することができるものかどうか、という流れで決断をすることは経営者にしかできません。
論理的思考を否定するかのような内容になってしまいましたが、決してそうではありません。論理的思考はビジネスパーソンの代表的な基礎力のひとつと言えることは間違いありません。考え方の枠組みを自分の中に複数持っていると、とっさの判断ができますし、場面によって判断がブレにくいといった、大きな強みとなります。論理的思考を無視するのではなく、それを身に付けた上で、でも論理的思考では解決できない場面に遭遇したら?というのが今回の文章の趣旨ですので誤解なきようお願いします。
なお、私は論理的思考を身につけるための方法として現代文と法律の勉強をすることをオススメします。法律は暗記科目と誤解されることも多いのですが、それだけではなく法的思考を身につけるものでもあります。ぜひ一度お試しください。
参照書籍: