NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2020年5月31日日曜日

ローマ人の物語1 ローマは一日にして成らず

前回の記事投稿から時間が空いてしまいましたが「ローマ人の物語」についてです。前提知識について前回の記事に簡単にまとめていますので、そちらも合わせてご覧ください。

ローマの為政者や軍事指導者達の言動も現在の会社経営に活かせるものが多いのですが、塩野七生さんのコメントも大変勉強になります。特に気になった箇所についてご紹介していきます。

ローマ人の物語1ローマは一日にして成らず

  1. ゆっくりと一歩一歩地歩を固めていくやり方はそれはそれ賞められてよい生き方だが、組織にはときおり、異分子の混入が飛躍につながるという現象が起こる。
  2. 共同体も初期のうちは、中央集権的であるほうが効率が良い。
  3. 改革の主導者とはしばしば、新興の勢力よりも旧勢力の中から生まれるものである。
  4. 偉大な人物を慕ってくる者には、なぜか、師の教えの一面のみを強く感じとり、それを強調する生き方に走ってしまう者が少なくない。
  5. 抜本的な改革とは、それを担当する人間を入れ替えることによって、はじめて十全になされるものである。
  6. 武器を持たない予言者は自滅する。(マキアヴェッリ)
  7. 重要なのは、その敗北からどのようにして立ち上がったか、である。
引用元「ローマ人の物語1 ローマは一日にして成らず
(1)については、スタートアップが成長するときには、創業メンバーだけではなく、違う能力を持った中途採用者の存在が必要な場合があることに通じます。特に、創業者が経営者としての能力も兼ね備えている場合は問題ないですが、そうでない場合は「経営者」を招聘する必要がありますし、そうしないと企業成長が達成できないことが多いと考えられます。よく言われるように、米国のスタートアップはある段階でプロの経営者を雇いますが、日本では創業者が経営者として残り続けることが多いようです。創業者が外部からプロの経営者を招聘した例としてはGoogleが有名です。

(2)については、シードステージ・アーリーステージの企業は創業者などの求心力がある人物が「ワンマン経営」を行う方がスムースに行くことが多いことに通じます。それらのステージでは企業体力がない中、特に素早い意思決定が必要です。毎回みんなの意見を求めていたりしたら、その間にも市場は競業企業にとられてしまいますし、資金も流出を続けてしまいます。ワンマン経営は概ねスピードはあります。

(5)について、企業が株式上場を目指すと決めたとき、今までとは経営、営業、管理、多くのことを変えていくことになります。上場することが出来る企業の条件の中のひとつ(しかも大きなひとつ)として、管理体制が整っていることが挙げられます。ある時点までは創業メンバーなど気心知れた者同士である程度自由に事業を行っていたかもしれません。しかし、上場を目指す段階になるとそうではすまされません。創業時には重要な役割を担っていたメンバーが、上場を目指す時期にその変化についてこれず(もしくは、ついてこようとせず)、期待される役割を果たせないということも出てきます。そういったときには経営者は、そのメンバーを説得・教育するだけではなく、最終的には辞めてもらうという判断も求められることもあります。大きな変化の中では、人が入れ替わることも必要だということです。

(7)について、私は企業経営とは「試行錯誤」だと考えています。特に世の中にない新しい事業を行うスタートアップには、学ぶことができる先例がいつもあるとは限りません。リスクをとって、誰もやったことがないことにも挑戦しなければなりません。そして、きっと失敗することの方が多いでしょう。しかし、そのときにスタートアップに求められるのは、意気消沈することではなく、失敗から学び次への教訓とすることではないでしょうか。

「ローマ人の物語」は、読む側の状況や経験などによって様々な教訓を引き出すことが出来る良書だと思います。オススメです。