NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2020年6月1日月曜日

ローマ人の物語2 ハンニバル戦記

ローマ人の物語」シリーズは一冊ごとに数十箇所付箋をつけてしまうくらいに学びのある作品です。当ブログでは、私が気に入った箇所を、経営や日常生活の視点から取り上げています。

ローマ人の物語2 ハンニバル戦記

  1. 敵方の捕虜になった者や事故の責任者に再び指揮をゆだねるのは、名誉挽回の機会を与えてやろうという温情ではない、失策を犯したのだから、学んだにちがいない、というのであった。
  2. 共和制ローマでは、軍の総司令官でもある執政官に対し、いったん任務を与えて送り出した後は、元老院でさえも何一つ指令を与えないし、作戦上の口出しもしないのが決まりだった。
  3. 戦争終了の後に何をどのように行ったかで、その国の将来は決まってくる。(中略)問題は、それで得た経験をどう生かすか、である。
  4. 責任の追及とは、客観的に誰をも納得させうる基準を、なかなかもてないものだ(中略)。それでローマ人は、敗北の責任は誰に対しても問わない、と決めたのだった。(中略)(責任は誰々にあるとか、どの身分階層にあるとかといったかたちで)国論が二分していては、国力の有効な発揮は実現できない。
  5. 天才とは、その人だけに見える新事実を、見ることができる人ではない。誰もが見えていながら重要性に気づかなかった旧事実を、気づく人のことである。
  6. 年齢が、頑固にするのではない。成功が、頑固にする。(中略)ゆえに抜本的な改革は、優れた才能をもちながらも、過去の成功には荷担しなかった者によってしか成されない。
  7. 敗北とは、敵に敗れるよりも自分自身に敗れるものなのである。
  8. 過酷に対処しなければならないとしたら、それは一時に集中して成されるべきである(マキアヴェッリ)。
引用元「ローマ人の物語2 ハンニバル戦記
(1)について、日本は失敗した人が再び挑戦できるような文化、仕組みに欠けていると言われています。もちろん、失敗をバネに成功に至った人もいることから、「再び挑戦しにくい」という表現がより正しいのかもしれません。一方、米国のVCは失敗経験のある起業家をより高く評価すると聞きます。

また、失敗から学ぶということに関しては、成功には法則性はなく失敗には法則性がある、という言い方をすることもあります。成功は、その当事者の個人的資質による部分や、運による部分が大きくその法則性を見出すことは容易ではない一方、失敗は「してはならないこと」をしてしまった結果失敗に至るという意味で法則性を見出しやすいという意味です。

失敗から学ぶことも、失敗経験を前向きに捉えることも苦手な日本人が学ぶべきはローマ人かもしれません。

(2)については、権限委譲を行った後は口を挟まないという意味にもとれますし、より現場に近い位置にいる者の意見を重視するという意味にもとれます。どちらにせよ、組織構造の設計原理に通ずるところがあります。

(3)については、(1)とも大いに関係しますが、何かを失敗した場合にはその原因をしっかり把握し、次に活かす必要があります。しかし、成功した場合にも検証フローが必要です。仮説どおりに成功したのか、想定以上の成功だった場合、それはどういった要因でもたらされたか、一回きりの成功だったのか、今後にも活かせる成功だったのか、等々。

なお、検証できるのはきちんとした仮説の下に実行された事項の経緯と結果だけであるということも忘れてはなりません。逆に思いつきでなされた事項についてはそうはいきません。

(5)について、「運が良い人」というのは周囲からは「運」のことだけで見られ勝ちですが、実際には誰よりも「ある事」について真剣に、四六時中考えているからこそ他の人が気づかないこと(たとえば、ちょっとした情報やきっかけ)に気づくことが出来、その結果運を掴んだが如く結果を残すことが出来る、と言えます。きっとここでの「天才」もそういう人達のことなのではないかなと思います。

また、物事がうまく行かないときに、新しい方法を試すということも大事ですが、もともとのやり方に拘ってみて、他人が気づかない解決策を見つけられるよう努力することも大事だなと思います。

(6)について、ある経営者がおっしゃっていた「成功体験は捨てられない。よって、成功体験が新たな場面で障害になるような事態になる前に経営者は引退すべきである」という話と、ある新規事業専門家がおっしゃっていた「人は必ず老害になる。老害になる前提で害を少なくする準備をしておく必要がある」という趣旨の話が思い出されます。何事も引き際が肝心といいますが、引き際を見極めるのは、当時者自身にはなかなか難しいですね。

(8)について、これは事業再生の場面などでもよく言われます。コスト削減や人員削減は、従業員のやる気を削ぐものであるため、それを実施する必要がある場合は小出しに実施するのではなく、一気呵成に行うべきであるというものです。これはまさにその通りだと思います。小出しにリストラ計画が実施されると、それを受ける方の立場である従業員から見ると、全体像が見えなかったり、いつまで耐え続ければいいのか分からなかったりするからです。再建までの道のりを示した上で、リストラは今回限りだから耐えて欲しい、というようなメッセージを発し、一気にリストラ策を実施すべきなのでしょう。