ローマ人の物語3 勝者の混迷
引用元「ローマ人の物語3 勝者の混迷」
- 多くの普通人は、自らの尊厳を、仕事をすることで維持していく。ゆえに(中略)誇りは、福祉では絶対に回復できない。職を取り戻してやることでしか回復できないのである。
- 人は、必要に迫られなければ、本質的な問題も忘れがちなものである。
- 「混迷」とは、敵は外になく、自らの内にあることなのであった。
- すべての物事は、プラスとマイナスの両面を持つ。(中略)改革とは、もともとマイナスであったから改革するのではなく、当初はプラスであっても時が経つにつれてマイナス面が目立ってきたことを改める行為なのだ。
- 過度な劣等感くらい、状況判断を狂わせるものもないのである。
- 優秀なルクルス(ローマの将軍)には、自分にまかせておけば良い結果につながるとの自信が強すぎたために、兵士たちを積極的な参加者に変えるに必要な、心の通い合いの大切さに気づかなかったのであった。
(1)は自分が過去に希望退職に応募して際に実感しました。別に生活費には困っていないから働かなくていい、というものではありません。人はいろいろなことを経験して成長していきますが、その中で仕事の占める割合というのはとても大きいと思います。仕事をしていないということは、人として成長する機会が大幅に減る、ということです。そう考えると、政策もセーフティーネットの充実ではなく、そもそもの雇用創出に力を入れるべきです。
(2)は、逆説的に改革をすることの難しさを感じさせてくれます。「そもそもうまくいっていないこと」を変えることに反対する人は多くはありません。しかし、「過去にうまくいってきた」、「今までこれでよかった」という状態だと、これを変えることに反対する人が多くなります。だからこそ改革を成し遂げた指導者というのは偉大なのだと思います。
(4)については、何かの改革を行うときに前提として理解しておくと良いと思います。改革する側が過去の経緯を知らないと、ついつい旧制度などを全否定してしまいがちですが、旧制度などもそれが作られたとき導入されたときはメリットがデメリットを上回っていたはずです。それが外部環境や内部環境の変化に伴い、デメリットが上回るようになってきただけのこと。このことを理解して改革に取り組まないと不必要に抵抗勢力を増やしてしまい、結果として改革も成し遂げられないことになりかねません。
(5)については、自分に当てはめてみると痛いほど心に響きます。劣等感のせいでどれだけチャンスを失ったか、そういったことを考えるとキリがありません。
(6)ルクルスは知名度は低いですが、かなり優秀な軍事的指導者であったようです。自軍の10倍以上の敵軍を打ち破ることが一度や二度ではなかったとのことです。また、戦闘の際には自身も最前線に立ったり、食事や寝床は兵卒と共にするなど、兵士の心を掴もうとする努力も行っていたようです。しかし、上記引用のような考えであったことから、兵士たちの心は離れていきました。ルクルスのような優秀な人間でも、その姿勢が間違っていれば人は付いてきません。実際の現代社会を振り返ってみると、ルクルスと同じような考えのマネージャーがいかに多いことか。しかもそのほとんどはルクルスほどの優秀さを微塵も持っていないように見えます。自分自身がルクルス的マネージャーになっていないか見直してみるのも良いと思います。