いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)では早速内容に入りましょう。
1.ビジネスプラン
(1)エグゼクティブ・サマリー
(2)起業のきっかけや想い
(3)営業循環図
(4)顧客
(5)営業
(6)競合・代替品
(7)組織・チーム、社外パートナー
(8)事業の重要指数
2.数値計画
(1)売上高・原価
(2)経費
(3)運転資金
(4)設備資金
(5)資金調達
(8)事業の重要指数
このブログでは重要指数は一般的に「KPI」と呼ばれるものとかなり近い意味で使用しています。一般にKPIは「企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標」と定義されますが、日本語化した「重要指数」はより分かりやすく単純に「売上利益の先行指数」とお考えください。このシリーズが想定しているスモールビジネスの場面では、経営=営業と言っていいほど、日々の営業現場で何を行うかが大切です(急成長を目指す企業や大企業でも当然大切ですが、経営に占める営業の重要性はスモールビジネスの方が高いことが多いです)。そして売上利益は何もせずにあがるものではなく、何かしらの事前の行動が必要です。その事前の行動の中で日々追いかける数字として設定するのが重要指数です。そのため「売上利益の先行指数」という表現をしています。定義の議論だけではイメージが湧きにくいので重要指数の例を見ていきましょう。
(A)売上を分解した数字
最も基本となるものです。以前の記事「事業計画の作り方1 枠組み、全体像、基本的な考え方」のギャップ分析の説明の中で、分析には数字の分解が重要である旨の説明をしました。重要指数でも同様で、売上は「個数×単価」のように掛け算で計算されるものであり、その裏を返せば売上を分解した数字こそが売上をつくるための重要な数字、つまりは重要指数ということになります。
典型的なものとしては「販売個数、サービス提供回数、会員数、単価」などが挙げられます。
(B)売上を作り出す前提となる数字
営業活動は当然ながら、toCであろうとtoBであろうと、直販であろうと代理店販売であろうとWeb販売であろうと、いきなりお客さんに買ってくださいというのではなく、いくつかの営業のステップを踏んでいきます。toCであれば、消費者に気づいてもらい、覚えてもらって、好きになってもらい、より深く知ってもらって、そして選んでもらう=買ってもらうといったステップを踏みます。toBであれば先方担当者に説明し、上席にプレゼンする機会をもらったり、稟議を社内であげてもらったり、決済者に最終プレゼンをしたりするステップを踏んで、購買の意思決定をしてもらうというステップを踏みます。Webでの販売であれば、広告を目にしてもらったり、自社サイトにアクセスしてもらったり、自社サイトのコンテンツを見て購買意欲を高めてもらったりするステップを踏むことになります。営業活動がそういったステップに分解できるということは、それぞれの回数などを目標値にしたり測定したりすることで、売上利益につながる活動を行っているかを知ることができるため、そういった数字も重要指数と言えます。お客様に最初に接するところから、購買・入金に至るまでの流れをステップとして可視化して、どのステップが重要かを考え、重要指数として設定しましょう。
(C)確率を示す数字
上記(B)とも密接に関係するのですが、営業ステップごとの回数だけでなく、ある営業ステップから次の営業ステップに進む確率を重要指数として捉えることも大切です。たとえば、「接点を持った顧客の内、次回訪問や販売につながる率」が挙げられます。ある営業担当者はその率が高く、他の営業担当者はその率が低いということが生じている場合、そこには改善の余地があるかもしれませんし、そもそもリソースが限られているスモールビジネスの場合、ただ闇雲なだけの営業活動は実態にそぐいません。他には「上席プレゼンへ至る率」といったことも挙げられます。ただ先方の窓口担当者に頼るだけの場合と、先方担当者がその上席を説得する材料をこちら側で用意する場合とではその率も変わってくるでしょう。Web販売であれば「Webサイトへのアクセス数の内、購入につながる率」といったかたちで率を見ていくことが可能です。アクセス数が多いのに購入に至らないというのであれば、Webサイトの内容に何か要改善点があるのかもしれません。
また、営業ステップとは別の観点でも確率が重要となることがあります。分かりやすい例では会員ビジネスの場合の「会員の内、稼働している会員の率」が挙げられます。会員となってもらってもさらにそこから購入してもらわないことには売上があがらないモデルの場合は、如何に購入してもらう率=稼働率を高めるかが重要です。サブスクリプションモデルのように毎月一定の会費などが発生する場合でも、休会=会費が発生しない会員が増えてしまうといったことが生じるかもしれません。そこでも如何に休会から復帰してもらい休会率(稼働率の裏返し)を下げるかが重要となります。他には継続率や退会率なども重要指数と考えることができますね。
これらの重要指数は先行する同業他社が公開している場合などを除き、自分で事業をやりながら測定していくことが先に必要となることも多いですが、どういった指数を測定しておき、次年度から目標値として設定するかなどを予め考えておかないと長い時間を無駄にしてしまうこととなります。事業計画を策定する際に、大切な項目のひとつとしてぜひ重要指数も考えてみてください。
次回からは数値計画策定の方法に入っていきます。