NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2020年7月12日日曜日

事業計画の作り方6 起業前の方向け(5) 組織・チーム、社外パートナー

今回は「組織・チーム、社外パートナー」について説明します。組織・チームは主に社内の仲間の話、社外パートナーは文字どおり社外の仲間の話です。

事業は、様々な機能が一体となって運営されています。どんなに優秀な起業家でも、その全てを自分だけで行うことはできません。また、もしできたとしても、時間の制約がある以上、どれもいまいちな結果となってしまいます。起業家は優秀であっても万能ではありません。ぜひチームとしてみんなの力を結集できるようになりましょう。

いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)
 1.ビジネスプラン
  (1)エグゼクティブ・サマリー
  (2)起業のきっかけや想い
  (3)営業循環図
  (4)顧客
  (5)営業
  (6)競合・代替品
  (7)組織・チーム、社外パートナー
  (8)事業の重要指数
 2.数値計画
  (1)売上高・原価
  (2)経費
  (3)運転資金
  (4)設備資金
  (5)資金調達
では早速内容に入りましょう。


(7)組織・チーム、パートナー



(A)事業に必要な機能

最初に、事業を運営するために必要な様々な機能とは何かを知っておきましょう。一般的には以下のような機能が必要と考えられます。簡単ではありますが、それぞれの言葉が何を意味するかも合わせて記載します。

・マネジメント
 直訳すると「管理」ですが、ここでは「経営そのもの」とお考えください。会社の目標などを設定し、目標達成に向けた仕組みを作り運営していくこと全体を意味します。

・経営企画
 企業によって経営者の参謀的位置付けであったり、秘書的な位置付けであったり、部門調整機関であったり、特定プロジェクト対応組織であったりと様々ですが、いずれにせよ経営者や経営陣を直接サポートする位置付けの機能です。スモールビジネスでは設けられないことも多いです。

・経理財務
 経理は財務会計資料や管理会計資料を適切に作成し、会社の状況を数字で明らかにする役割を担っています。財務は資金の調達・運用などを行う機能です。スモールビジネスの場合ですと資金繰り、入出金、金融機関対応などが実際の主な活動です。

・総務(庶務、法務、広報)
 総務という機能の範囲はとても広く、他の機能に含まれないものは全て総務が担当する、という企業も多くあります。ここでは法務と広報も含めていますが、これらも本来は専門性が高く重要であるため、企業規模が大きくなると総務とは別の独立した機能と考える必要が出てきます。

・人事労務(採用、給与計算、人事評価)
 企業は人なり、というように事業運営にあたって人に関することはとても重要です。「人事」は人の採用、教育、評価などが主な役割です。「労務」は勤怠管理や給与計算などが主な役割です。スモールビジネスですと「人事」は経営者自身の仕事であることも少なくありません。

・企画、マーケティング、営業、顧客管理、店舗運営
 企画は製品やサービスの企画などを意味します。マーケティングは本来は 「顧客やクライアント、パートナー、さらには広く社会一般にとって価値のあるオファリングスを創造・伝達・提供・交換するための活動とそれに関わる組織・機関、および一連のプロセスのことを指す」(アメリカマーケティング協会)といったようにかなり幅広い意味合いなのですが、実際には営業企画や市場調査、販売方法の検討などかなり狭い意味合いで使われています。

ここまでに挙げた機能はどの業種でも必要となります。

他には例えば製造業であれば「製造、購買・仕入、品質管理、研究開発」なども必要と考えられますが、本シリーズで想定している読者の方々の中に今から製造業を立ち上げようと考えていらっしゃる方は少ないと考えられますのでここでは割愛します。


(B)事業に必要なプレイヤー

次に、事業を運営するために必要なプレイヤー=登場人物を考えてみましょう。

・経営者、経営陣
・自社雇用の従業員(フルタイム、パートタイムいずれも含む)
・外部人財(専門家、顧問、フリーランスなど)
・デジタルツール

ここでは外部人財やデジタルツールの活用がここ数年で大きく注目されているテーマです。

外部人財の活用では、従来の専門家(たとえば士業専門家)だけではなく、大手企業での経験豊富な人財を顧問として招聘したり、専門的スキルを保有しているフリーランスの方を一時的にチームに迎えたりとしたりすることが注目されています。「人財=自社雇用」が当たり前ではなくなったということですね。顧問活用についてはパーソルキャリア社のWebサイトが分かりやすいのでご参照ください。また、フリーランスの活用については経済産業省がレポートを出していますので、そちらもご参照ください。

デジタルツールでは例えば、RPA、MA、SFA、CRM、グループウェアといった言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。それらを活用すると、従来は手作業で行っていた作業がかなりの程度自動化できるようになっていたり、あたかも書くことが目的化していた営業日報がデジタル化や可視化することで営業力強化の貴重なツールになったり、従来は紙と口頭で行っていた情報共有がWebで完結したりします。費用面においてもSaaSモデルのものですと、専任の人財を雇用するよりも安く利用できることが多いようです。


(C)どの機能を誰が担うのが望ましいか

 そして、以下のことも整理します。
・経営者・起業家自身ができること、できないこと
・経営者・起業家自身がやるべきこと、人に任せるべき
・直接雇用している人財に任せるべきか、一時的に仲間を募って任せるべきか

 自社、自分の事業の強みに直結する業務は経営者自身か直接雇用している人財に任せるべきでしょう。そうではない業務はそこを内製化しても自社の強みにはつながらない可能性が高いので、専門家やフリーランスの方などに任せてしまった方がお互いの強みに集中できて効率的だと考えられます。


(D)どのようか価値観を持った仲間を、どのように募るか

 説明の順番としては最後になりましたが、これが一番重要です。ほとんどの場合、事業立ち上げ直後は少数精鋭で事業を運営する必要があります。スモールビジネスであれば、その後の事業運営も少数の仲間と行っていくことになるでしょう。そういった際に、どのような価値観を持った仲間を募るかはとても重要です。たとえば社会貢献重視の事業運営をしたいと経営者が考えていても、儲けしか考えないメンバーがいた場合は経営者が望みとは異なる言動をとるかもしれません。仮説検証・試行錯誤型で事業の可能性を開こうと考えている従業員がいても、失敗を過度に恐れる経営者であれば、その従業員のことを適切に評価できないかもしれません。そうならないよう、自社でこの事業に関わる仲間は経営者も含め、何々の価値観を共有できる人物であること、といったこと考えておく必要があります。

また、そういった仲間をどうやって募るかも考えておきましょう。待ちの姿勢ではほぼ間違いなく良い出会いはありません。

次回は「事業の重要指数」について説明します。