NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2020年9月23日水曜日

事業計画の作り方16 後継者の方向け(4) ローカルベンチマークの活用(現状分析の補足)

事業計画の作り方14」にて現状理解と現状分析について触れ、「事業計画の作り方15」にて補足として財務分析について触れました。今回はさらなる補足として経済産業省が作成したツールである「ローカルベンチマーク」の活用について解説します。

さて、ローカルベンチマークとは経済産業省によると以下のように説明されています。読んでいただくとお分かりのとおり、事業計画作成のための現状分析と位置づけがほぼ同じです。
ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)として、企業の経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用されることが期待されるものです。
具体的には、「参考ツール」を活用して、「財務情報」(6つの指標※1)と「非財務情報」(4つの視点※2)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで経営状態の変化に早めに気付き、早期の対話や支援につなげていくものです。

(※1)6つの指標;①売上高増加率(売上持続性)、②営業利益率(収益性)、③労働生産性(生産性)、④EBITDA有利子負債倍率(健全性)、⑤営業運転資本回転期間(効率性)、⑥自己資本比率(安全性)
(※2)4つの視点;①経営者への着目、②関係者への着目、③事業への着目、④内部管理体制への着目

今回の記事でローカルベンチマークを説明するのは、それが
  • 網羅性に優れている
  • 支援機関との対話の中で活用できるようになっている、もしくは支援機関との対話のきっかけとして活用できる
という特徴があるからです。

ローマルベンチマークは大項目として、
  1. 財務分析
  2. 商流・業務フロー
  3. 4つの視点
の3つの部分で構成されています。ひとつずつ内容について説明していきます。

1.財務分析

 予め用意されているExcelシートに数値を入力すると、
 (1)売上高増加率(売上持続性)
 (2)営業利益率(収益性)
 (3)労働生産性(生産性)
 (4)EBITDA有利子負債倍率(健全性)
 (5)営業運転資本回転期間(効率性)
 (6)自己資本比率(安全性)
について診断結果が表示され、業種の中での位置が指標化されます。同じ規模・業種の中で上位7%に入っていれば5点、その次の24%に入っていれば4点といった具合です。ぴったりと当てはまる業種分類がない可能性もありますが、参考になる情報が得られます。

ここでの財務分析では各指標は以下の計算式で算出されます。
売上高増加率(%)=(最新期売上高/前期売上高)-1
営業利益率(%)=最新期営業利益/最新期売上高
労働生産性(円)=営業利益/正社員数
EBITDA有利子負債倍率(倍)=(借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費)
営業運転資本回転期間(ヶ月)=(売上債権+棚卸資産-買入債務)/(売上高/12)
自己資本比率(%)=純資産/負債・純資産合計
比較対象は帝国データバンク社が保有する企業の内、約10万社の財務指標とのことです。

2.非財務「商流・業務フロー」

 まず「業務フローでは、業務プロセスを分解し、価値を生み出すために行っている工夫・他社との差別化ポイントを記載します。」(引用元:ローカルベンチマークマニュアル)
企画に始まり、製造や仕入れ、営業、納品・サービス提供までを5程度のステップに分けて、それぞれに差別化ポイントを記載していくシートです。

次に「商流は取引先と取引理由を整理し、どのような流れで顧客提供価値が生み出されているかを把握します。」(引用元:ローカルベンチマークマニュアル)
商流を仕入先、協力先、得意先、エンドユーザーの4つに分類し、それぞれに選定理由を記載していくシートです。

3.非財務「4つの視点」

 項目が充実しています。まず、以下の(1)~(4)について対話を通じて確認していきます。

(1)経営者

・経営理念・ビジョン、経営哲学・考え・方針等
・経営意欲 ※成長志向・現状維持など
・後継者の有無、後継者の育成状況、承継のタイミング・関係

(2)事業

・企業及び事業沿革 ※ターニングポイントの把握
・強み・弱み 技術力・販売力等
・ITに関する投資・活用の状況、1時間当たり付加価値(生産性)向上に向けた取り組み

(3)企業を取り巻く環境・関係者

・市場動向・規模・シェアの把握、競合他社との比較
・顧客リピート率・新規開拓率、主な取引先企業の推移、顧客からのフィードバックの有無
・従業員定着率、勤続年数・平均給与
・取引金融機関数・推移、メインバンクとの関係

(4)内部管理体制

・組織体制、品質管理・情報管理体制
・事業計画・経営計画の有無、従業員との共有状況、社内会議の実施状況
・研究開発・商品開発の体制、知的財産権の保有・活用状況
・人材育成の取り組み状況、人材育成の仕組み

次に対話内容の総括として、

(5)現状認識
(6)将来目標

をまとめ、現状と目標のギャップを明らかにして、

(7)課題
(8)対応策

までまとめる、という流れです。

詳しくは、Youtubeでの動画解説と、引用元でもあるローカルベンチマークマニュアルなどをご確認ください。

事業計画づくりの前提となる現状理解や現状分析は様々な方法があります。ローカルベンチマークのその中のひとつとしてご活用ください。

NGCパートナーズではローカルベンチマーク活用の際の対話相手として協力させていただくことができます。ご関心がある方は当ブログ上部の「Contact」からお問い合わせください。

以下、Youtubeでの解説動画です(音が出ますのでご注意ください)。1本当たり2~5分程度の短い動画です。