今回は設備資金についての説明です。そもそも事業に必要な設備とは何か、そこで必要となる資金についてどう考えておく必要があるかをみていきます。
いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
いつもどおり最初に事業計画の全体像と今回の内容の位置付けを確認しましょう。
起業時事業計画の項目(下線部分が今回の記事で説明する箇所です)では早速内容に入りましょう。
1.ビジネスプラン
(1)エグゼクティブ・サマリー
(2)起業のきっかけや想い
(3)営業循環図
(4)顧客
(5)営業
(6)競合・代替品
(7)組織・チーム、社外パートナー
(8)事業の重要指数
2.数値計画
(1)売上高・原価
(2)経費
(3)運転資金
(4)設備資金
(5)資金調達
(4)設備資金
(A)設備
ソフトウェア・Web系の事業やコンサルティング事業であれば、パソコンとスマートフォンがあればひとまずは事業を行うことが可能ですが、多くの事業では「設備」が欠かせません。みなさんの事業にはどういった設備が必要になるでしょうか?以下、代表的な設備と、資金面での手当について列挙します。
・店舗
モノを販売したり、サービスを提供したりする場所として必要です。いわゆる居抜き物件(同業他社が撤退した後の店舗をそのままに近い状態で賃借できる物件)であれば初期投資は抑えることができますが、反対にスケルトン物件に一から内装外装を行うのであれば大きな額の資金が必要です。
・備品
業務を行う際の道具などとして使用するもの全般です。飲食店であれば厨房機器、調理道具やホール備品などが考えられます。サービス業でもお客様を迎えるためのスペースに置く必要がある椅子やデスクなどが考えられます。備品も居抜き物件であれば安価に入手できるかもしれませんが、一から購入となると大きな額の資金が必要なこともあります。中古品の活用も検討しましょう。
・事務所
役職員(特に内勤者)が働く場所です。物件を賃借すると毎月固定費としての地代家賃が発生します。入居前にはまとまった額の敷金も必要でしょう。コロナ禍の前ですとコワーキングスペースやシェアオフィスを借りるという手段をとる企業も増えていました。初期費用も毎月の家賃(会費という名目の場合もあります)も通常の物件を賃借するよりも低額ですませることができます。今後、在宅勤務が根付いていくのであればそもそも事務所は必要かということも考えておくべきです。
・工場
モノを製造する場所です。当シリーズで想定しているスモールビジネスでは製造業は極めて少ないと考えられますが、もしモノの製造販売をお考えの場合、製造を外注する方法も検討しましょう。
・車両
製品を運んだり、顧客を訪問したりする際に使用します。事業を推進する場面を想像して、車両の稼働率がどのくらいになるかは事前に計算しておきましょう。また、たとえば営業活動に使用する場合でも、本当に訪問営業が必要か、インサイドセールスの活用が可能ではないかといったことを考えるなど、車両の必要性はしっかりと考えておいた方が良いです。営業活動中の交通事故というリスクも無視はできません。
どの設備であれ、イニシャルコスト(導入時に発生する費用)だけでなく、ランニングコスト(定期・不定期に発生する費用)が必要となります。一部の設備ではランニングコストの考慮をを忘れてしまうことも少なくはありません。見落としがないようにしましょう。
近年は、「持たざる経営」というキーワードで、「設備を持たない」選択肢も増えています。上記のいずれの設備も購入する場合は高額となりますので、レンタル・リースやシェアリングサービスを利用することも合わせて検討しましょう。
(B)固定費と変動費
設備資金の解説の中で、レンタル、リースやシェアリングサービスについて触れましたが、レンタルやリースを活用すると、イニシャルコストが必要がなくなるというメリットがある一方、ランニングコストであるレンタル料やリース代を支払う必要がでます。こういった料金は、売上や利益の金額に関係なく支払う必要があるため「固定費」と呼ばれます。地代家賃を考えると分かりやすいですが、店舗を借りて家賃を支払う約束をしている場合、一般的には売上がなくても家賃は支払わなければいけません。
反対に、営業活動や売上に比例する費用を「変動費」と呼びます。店舗売上に対する比率として家賃を支払う場合、必要なときだけ自動車を借りるカー・シェアリングなどが典型例です。
会社の経営にとって、固定費と変動費、どちらの費用がいいかというのはシチュエーションによって異なるため正解はありません。しかしスモールビジネスの場合はできるだけ固定費を抑えることが大切です。スモールビジネスは外部環境・内部環境の影響を受けやすく、何かの拍子に売上が大きく減少することを覚悟しておく必要があります。そのときに、売上に関係なく発生する固定費が多いと途端に資金不足に陥ってしまう可能性があります。
設備が必要となった際には、
- 購入する方がいいか、借りる方がいいか。
- 固定費を抑えたり、変動費化したりする方法はないか。
を必ず検討しましょう。
次回は「資金調達」について説明を行います。