NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2021年9月27日月曜日

M&Aバリュエーション基礎2 基本用語解説一回目 企業財務の基本バランスシート1

今回から数回の間、バリュエーションの基本用語についての解説を行います。実際の計算方法などの中で説明すると文字数が多くなりすぎ分かりにくくなるため、先に解説するものです。まずはザッと読んでいただき、実際の計算方法などの解説回を読む際に適宜用語解説に戻り読み返していただければと思います。

■基本用語解説:「貸借対照表」と「企業財務の基本バランスシート」

前回説明したとおり、バリュエーションとは一般的に「企業価値算定」のことを意味しており、さらに言うと多くの場合、「株主価値(株式価値や時価総額とも言います)を算出すること」を意味します。そして、株主価値はその企業の価値や資産額から負債を差し引いた概念で表すことができるため、一般的な「貸借対照表」と「企業財務の基本バランスシート」を図のかたちで理解しておくことが必要です。

(1)貸借対照表

一般的な貸借対照表は「簿価純資産法」や「時価純資産法」でのバリュエーションを行う際の前提となる図です。


簿価純資産法
は企業の貸借対照表の数値をそのまま使用するもの(つまりは純資産額を株主価値と捉えるもの)で、実際の中小M&Aではほぼ利用されることはありません。ほとんどの中小企業の貸借対照表上の資産の数値はその資産の現在における実際の価値(時価)を反映しておらず、それをそのまま採用して行われたバリュエーションの結果はM&Aなどの場面で利用するには不適切であるからです。

一方で、時価純資産法は中小M&Aでは最もよく利用されるバリュエーションの方法です。貸借対照表上の資産を個別に時価に置き換えことで時価の総資産額を把握し、そこから負債を差し引いて時価純資産を計算し、時価純資産を株主価値と考える方法です。直感的にも納得しやすい方法であると言えます。

(2)企業財務の基本バランスシート

企業財務の基本バランスシートは一般的な貸借対照表を、バリュエーションの考え方にもとづき組み替えたもので、下図のようなかたちをしています。中小M&Aでは簡略化されたものが利用されることが多いようです。バリュエーションの方法として有名な「ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)」や、EV/EBITDA倍率法などを考える前提として覚えておく必要があります。



今の段階では、上記内容をざっくりと理解しておいていただければと思います。詳細は個別の用語解説や計算方法解説で触れていきます。

次回は企業財務の基本バランスシートの図の中に登場する用語について解説します。


2021年9月24日金曜日

Webサイト開設のお知らせ

NGCパートナーズのWebサイトを開設しましたのでお知らせします。まだ必要最低限の内容で、これからコンテンツを充実させていきます。事業の最新情報などは引き続き当ブログに掲載しますが、Webサイトもよろしくお願い致します。

 NGCパートナーズ https://www.ngc-partners.biz/

なお、上記Webサイト開設のためのドメイン取得に合わせて事業用メールアドレスも変更しました(従来のものも当面の間は使用可能ですので、徐々に移行します)。

2021年9月14日火曜日

「M&A支援機関に係る登録制度」への登録見送りと今後の方針について


昨日2021年9月13日に中間結果が公表された「M&A支援機関に係る登録制度」ですが、検討の結果、NGCパートナーズとしては現時点では登録は行わないことと致しました。
NGCパートナーズは「経営・財務コンサルティング事業者」であり、M&Aに関するファイナンシャルアドバイザリー(以下、「FA業務」)専業ではないことが主な理由です。なお、仲介業務は従前から実施しておりません。

今後は以下の方針で取り組んで参ります。
  1. FA業務は現在受託しているものへの取り組みに集中し、今後の新規受注は原則として行いません。もしご相談を受けた場合は原則として信頼できる他のFA事業者をご紹介します。ご紹介するのは日本M&Aアドバイザー協会所属のFA事業者を主に想定しています。
  2. 経営・財務コンサルティングを行う中で、コンサルティング先事業者様の成長戦略や事業承継対策等としてのM&Aが検討されるなど、当該事業者様からの追加での依頼としてFA業務のご相談を受けた場合は受託する場合があります。
  3. 上記「2」のため、日本M&Aアドバイザー協会への所属は継続し、各種情報収集やネットワーク構築は行います。
  4. NGCパートナーズ事業概要に記載している「事業承継・プレM&A支援」は引き続き実施します。内容としては、経営の現状及び課題の可視化支援、課題解決策の実行支援、コーポレートガバナンス構築支援、内部統制・管理体制構築支援、事業用資産や株式の集約整理支援、セラーズDD、バリュエーション実施、その後の通常のM&Aアドバイザリー業務などです。
  5. M&Aのセカンドオピニオンサービスは引き続き実施します。
  6. FA業務を行う場合は、中小M&Aガイドラインを遵守します。
今後、方針を変更する場合は都度ご案内申し上げます。
以上、よろしくお願い致します。

2021年9月8日水曜日

M&Aバリュエーション基礎1 売り手自身によるバリュエーション実施の必要性

バリュエーションとは一般的に「企業価値算定」のことを意味しており、さらに言うと多くの場合、「株主価値(株式価値や時価総額とも言います)を算出すること」を意味します。

このシリーズでは、中小M&A(未上場株式である前提です)でのバリュエーションを「売り手自身」で(ある程度まで)行えるようになることを目指します。第一回の今回は「売り手自身によるバリュエーション実施の必要性」をご紹介します。ここでの売り手とは、M&Aの対象となる会社の株主等のオーナー(場合によっては経営者も含みます)を意味します。なお、新規上場や、ベンチャーキャピタル(VC)等からの資金調達の際のバリュエーションはこのシリーズでは範囲外としていますのでご注意ください。

多くのM&Aの実務では公認会計士、監査法人やバリュエーションの専門会社が行いますし、中小M&Aの場合ですとファイナンシャルアドバイザー(FA)、仲介会社が行うことも少なくありません。ですので、売り手自身が行う必要性はないのでは?とお考えの方もいらっしゃると思います。確かに精緻なバリュエーションはそれらの専門家に任せた方が良いですが、それでも以下のとおり売り手自身がバリュエーションを実施する必要性や、実施した方が良い理由があります。

1.「自社(対象会社)の実態」を知ることができる

バリュエーションの過程では、
  • 自社(対象会社)の資産や負債を精査してその実態を数値化する
  • 売上や原価・費用を修正してその実態を数値化する
といったことを行います(理由は別記事で解説予定です)。
そして、実態値や修正後の値は売り手が把握・想定していた数値と乖離があることが普通です。売り手はその乖離の理由や金額が見えるようになることを通じて自社(対象会社)の実態を知ることができるのです。
実態を知ることができれば、自社の企業価値を向上させる方法を検討したり、急に経営判断を求められた際により適切に判断ができたりする可能性が高まります。

2.M&Aのプロセスにおいて早い段階から、根拠がある「自社(対象会社)の価額」の目線を持つことができる

多くの中小M&Aの場合、売り手側は、
  1. 自分たちの手元に必要な金額をそのまま売却希望額の根拠にしてしまう
  2. 「できるだけ高く売りたい」といったような曖昧な目線のまま話を進めてしまう
  3. 自社(対象会社)の価値を過大に評価してしまう(そのことによってM&Aプロセスがとん挫してしまう)
  4. 自社(対象会社)の価値を過少に評価してしまう(そのことによってM&Aが成約した場合でも、後日後悔をしてしまう)
といったトラブルや失敗をしてしまうことがあります。しかし、売り手が自分自身でバリュエーションを実施していると、(一定の)根拠がある「自社(対象会社)の価値」の目線を持つことができるため、それらのトラブルや失敗を回避できる可能性が高まります。

3.専門家とバリュエーションのプロセスや結果について議論できるようになる

今後、「M&Aバリュエーション基礎」シリーズで詳細を解説していきますが、未上場株式のバリュエーションの具体的計算方法にはいろいろな方法があり、かつ同じ方法でも計算の前提をどう考えるかによって計算結果が大きく変わってくることがあります。もちろん、信頼できる専門家は詳細を説明してくれたり、分かりやすい報告書を用意してくれたりするでしょう。しかし、当事者自身がバリュエーションを行っていないと、専門家の実施したバリュエーションのプロセスや結果について適切な質問を投げかけたり議論したりすることは難しいと考えられます。売り手自身がバリュエーションを実施していると、そういった議論等の過程を踏むことができ、理解が深まったり、場合によっては専門家がバリュエーションの修正を行ったりすることで、売り手の納得感も高まります。

上記の「1~3」を通じて、より良いM&Aの実現可能性が高まるのです。

次回は、M&Aのバリュエーションを学ぶ前提となる用語の解説を行います。