NGCパートナーズ 代表 石井優のブログ
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2022年2月26日土曜日

事業計画の作り方26 後継者の方向け(14) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析9 クロスSWOT分析のポイントや注意点

今回は「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」の解説の最後としてクロスSWOT分析について解説します。クロスSWOT分析自体は事業計画策定の段階のフレームワークであり、本来であれば現状分析の一環として解説するのではなく、次の計画検討の一環として解説するのが良いのかもしれませんが、SWOT分析と一体で活用する事例が多いことや、現状分析と計画策定とを有機的に接続するためのツールとも言えることなどから、ここで解説することにしました。


図をご覧いただけるとわかるとおり、SWOT分析の結果を活用して次の戦略を考えるのがクロスSWOT分析です。

(1)機会✕強み

 積極戦略と呼ばれ、事業機会に対し、自社の強みを最大限に生かすにはどうしたらいいか?を考えます
 中小企業の場合、真っ先に検討すべき象限であり且つ最も重要な象限です。最優先で取り組むべき戦略が挙げられるでしょうし、すぐに実行できる具体的な戦略を考える必要があります。また、投資を行ったり、費用をかけてでも取り組むべき戦略が求められます。

(2)脅威✕強み

 重要度としては積極戦略と撤退戦略の次に位置づけられます。教科書的には、脅威を強みで克服することを考える象限なのですが、大企業やベンチャー企業の場合は当てはまるかもしれませんが、中小企業の場合は本当にそれで良いか慎重な検討が必要です。「強み」と言えども中小企業の場合は限られた経営資源の上にあるものだからです(大企業は経営資源は比較的豊富ですし、ベンチャー企業は外部からの積極調達が前提です)。であれば、あえて脅威に挑まずに機会に強みを集中的に投入する、つまりはこの象限でも撤退戦略を考えた方が良い場面もあるはずです。

(3)機会✕弱み

 事業機会に対し、自社の弱みで取り逃がしてしまったことを改善・回復するにはどうしたらいいか?を考える、改善戦略や段階的施策と呼ばれる象限です。教科書的には中期的な時間軸で改善を目指したり、段階的施策を実施したりすることを考える象限なのですが、これも本当にそれで良いかは慎重な検討が必要です。時間をかけているうちに機会が機会でなくなってしまう可能性が高いからです。M&Aや提携などで弱みを克服する目途が立たない場合、撤退も選択肢となります。

(4)脅威✕弱み

 脅威と弱みが最悪の事態を招かないようにするにはどうするか?を考えます。専守防衛と呼ばれる象限ですが、おそらく専守防衛の本来の定義と異なる意味合いになっており分かりにくいですので撤退戦略と呼ぶべき象限です。経営資源が限られた中小企業の場合、撤退・縮小をいかに追加の損失なく迅速に行うか、を考えるべき象限です。

多くの解説などでは大企業やベンチャー企業を前提として各種フレームワークの解説がなされていることが多く、今回は「経営資源が限られており、且つ積極的な調達を必ずしも前提としていない中小企業」の視点でクロスSWOT分析を考えてみました。フレームワークとしてはとても有用ですので、柔軟に活用いただければと思います。

長らく続いた「現状分析」に関する解説は今回で終了です。
次回以降、いよいよ計画策定の段階の解説を開始する予定です。


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2022年2月19日土曜日

事業計画の作り方25 後継者の方向け(13) 現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析8 SWOT分析のポイントや注意点

「現状分析の総仕上げとしてのSWOT分析」として7回にわたって解説してきました。今回と次回でSWOT分析とクロスSWOT分析の解説を行い「現状分析」に関する解説は一旦終了予定です。

今回はSWOT分析についてですが、SWOT分析の概略はすでに解説済ですので、今回はSWOT分析を実際に行う際のポイントや注意点についてご紹介します。

まず、大前提ですが、記事のタイトルにもしているように「SWOT分析は様々な現状分析の総仕上げ」という位置づけで行うものです。前回までにご紹介してきたような他のフレームワークを活用するなどして各種現状分析をやっていないと、ただ思いついた事項を並べたり、抽象的な事項しか挙がらなかったりしてほとんど意味のない分析で終わってしまいます。またSWOT分析だけで終わってしまっても意味はありません。クロスSWOT分析まで実施するようにしましょう。現状分析はあくまでも将来の計画を考える際の準備のひとつにすぎません。SWOT分析までで終わってしまうと将来の計画を立てることにつながっていきません。

さて、SWOT分析の基本的な考えは「様々な機会に対し、自社の強みをぶつける」というものです。機会が先に来て、そこに投じることができる強みが次に来るということを忘れないでください。「自社の強み」が物事を考えるスタートになり勝ちですが、そもそも機会がないと強みを十分に活かすことはできないのです。

その「機会」ですが、「機会だという勘違い」に気を付けましょう。よくある例が「先行者がいない(ので自社にとって機会だ)」、「競合がいない(ので自社にとって機会だ)」というものです。こういった場合は「それは何故だろうか?」と考え直してみる必要があります。

先行者がいないと思う場合は焦って結論を出さずに以下の問いを考えてみましょう。
  • 先行者がいないのはなぜでしょう?
  • 自社以外の誰もそこに市場がある(であろう)ことに気が付かなかったから?
  • 気が付いていたが参入しなかった?
  • 参入したもののすでに撤退しているから?
  • 参入しなかったり撤退した理由は?

競合がいないと思う場合も同様に以下の問いを考えてみましょう。
  • 競合がいないのはなぜでしょう?
  • そもそも競合をちゃんと探した?
  • 競合か否かの判断は「顧客の視点」で行った?

こういったかたちで深掘りしておかないと、実際には市場がない、他社はそれを知っている、自社はそれを知らず先行者も競合もいない状態つまりは機会だと捉えてしまった、ということになりかねません。

また「強み」ですが社内メンバーだけで考えると考え付かないことも少なくありません。そういったときは「顧客が自社を選んでくれた理由」からスタートすると良いです。実際にヒアリングしてみましょう。

今回は短めですが、以上です。次回はクロスSWOT分析について解説予定です。


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